スーパースター、キリアン・エムバペの調子がなかなか上がらない。ラ・リーガでは第14節現在で7得点。波の選手だったら決して悪い数字ではないが、期待された数字とは程遠い。9月は4試合で5得点と波に乗りかけたが…。
「エムバペの変」
現地メディアは、こぞって変調の理由を解き明かそうとしている。
もっとも、レアル・マドリーの1年目で開幕から全開で活躍した選手の方が珍しい。ジネディーヌ・ジダンでさえ、入団後数か月はもたついていた。メンタル的にも、フィジカル的にも、適応するには時間がかかる。
「パリ・サンジェルマンのようにビッグクラブで、国内の絶対王者、チャンピオンズリーグで常に上位だったのに」
そんな声もあるが、パリSGとマドリーでは、クラブの歴史、規模、実力は比較にならない。マドリーは欧州では他と一線を画す。例えば、CL優勝回数は15回と圧倒的で、2位のACミランでも7回。パリSGなど一回もない。
当然、マドリーでは凄まじい重圧がかかる。今までのように自由にはならない。選ばれた選手のみがいる環境で、力を発揮する必要がある。自分をアジャストさせるのは簡単ではない。
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単純に本来ストライカーではないエムバペが、その仕事を求められていることが不調の要因だろう。彼自身、一番得意とする左サイドのゾーンには、ヴィニシウス・ジュニオールがいる。そのスペースを使うことを制限された状況で、ストライカーとしてパスを待っているわけで、FCバルセロナ戦のように相手のオフサイドトラップの餌食になってしまうのだ。
こうした移籍に関する不具合は、どんなリーグでも、どんな選手でも起こり得る。
「自分がどういう選手か、まずは知ってもらう必要があるし、どういう選手か、知る必要がある」
それはサッカー選手が活躍するための一つの条件と言える。集団スポーツが原則だけに、コミュニケーションの摩擦やかみ合わせが不可欠。そこがノッキングしたままだとうまくいかない。
メンタルとコミュニケーション。
それはフットボールの根幹を成している。
エムバペに関しては、ストライカーをパートナーとすることで解決することは多いかもしれない。そして得意とする左サイドのゾーンを奪い取れたら、自然とゴールも増えるだろう。ただ、現状ではかつてのカリム・ベンゼマのようなストライカーは見当たらないし、左にはヴィニシウスが君臨しているだけに…。
エムバペは難渋する中で、行くべき道を見つけるしかない。
文●小宮良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
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