マンガ原作の実写化映画は、たびたびストーリー改変や、キャストの拭えないコスプレ感などが指摘されます。酷評される作品もあるなか、原作者はどういった感想を抱いていたのでしょうか。決して悪い反応だけではないようです。
『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』第1弾ポスタービジュアル (C)2015 映画「進撃の巨人」製作委員会(C)諫山創/講談社
【画像】え…っ?「お前かーい!」「原作にいたっけ?」 こちらが実写『進撃』オリジナルの「超大型巨人の正体」です
原作者から「主人公変更」提案も
マンガを原作にした実写化映画は、イメージと合わないキャストや、映画の上映時間にまとめるためのストーリーの改変などが原因で物議をかもすことがよくあります。酷評が目立つ作品もあるなか、そういった実写化映画の原作者はどういった意見を出し、どんな感想を抱いていたのでしょうか。なかには、積極的に「原作から変えてほしい」という作者もいたようです。
2015年に公開された2部作の実写映画『進撃の巨人』は、まず原作の人気キャラ「リヴァイ・アッカーマン」の存在がないものとして描かれて話題になりました。その代わりに、「人類最強」の称号を持つ新キャラ「シキシマ(演:長谷川博己)」が登場し、主人公「エレン・イェーガー(演:三浦春馬)」と「ミカサ・アッカーマン(演:水原希子)」の三角関係が描かれます。
原作の大きな謎が明かされる前の実写版ということもあり、今観るとさらにいろいろと違う改変があったのですが、それは作者の諌山創さんから「原作通りにしなくていい」という依頼あったのも理由のようです。脚本を担当した映画評論家の町山智浩さんは、2015年9月号の雑誌「映画秘宝」で、諌山さんからエレンに関して「巨人を恐れる普通の恐怖心を持っている人として登場させてほしい」との条件が出されたと語っています。
また、完成報告会に寄せられた諌山さんのコメントでは、採用はされなかったものの、「人類がビルの上で生活」「主人公はエレンではなくジャン」など、さらなる改変案を出していたことも明かされました。
そのほかコメントで「人食い巨人の話を19才で考えついた時『物作りのプロの方たちに、この物語を作ってほしい』と思っていました」「映画化は、原作を再現することではなく、面白い作品を作ることが目的」と語っていたように、諌山さんは「原作と別の作品が観たい」という気持ちが強かったようです。
物議をかもした実写化映画でいえば、2018年に公開された『BLEACH』も外せないでしょう。同作は、原作8巻あたりまでの内容を駆け足でまとめた脚本や、拭えないコスプレ感が批判の的になったものの、『アイアムアヒーロー』や、後には『キングダム』の実写化を成功させた佐藤信介監督の迫力あるアクションが高く評価されています。
原作者の久保帯人さんは、コメントで映画化の企画の話がきたときが原作連載のクライマックスの時期だったため、実写版には大きく関わっていないことを明かしていました。また、「佐藤(信介)監督が実写として原作のどこを使ってどこを削るのか見てみたい」という気持ちもあったそうです。
結果として出来上がった映画に関して、久保先生は「原作と違う点はもちろんありますが、たくさんのバトルを上手くつなげてストーリーと絡めてあります」「スピードとスケール感のあるアクションは、日本映画として新しいレベルに到達しています」と、アクションを中心に本作を認めているようでした。
コスプレ感を指摘されたほかの作品といえば、2017年公開の『鋼の錬金術師』(以下、ハガレン)も挙げられます。主人公「エドワード・エルリック」に山田涼介さん、ヒロイン「ウィンリィ・ロックベル」に本田翼さんといった豪華キャストの熱演や、CGのクオリティーは評価されていますが、「やはりコスプレ感が拭えない」「そもそも日本人でやるのがおかしい」「物語が駆け足」といった批判的な声も少なくありません。
一方、原作者の荒川弘さんは各インタビューで、特に再現度の高い「ラスト(演:松雪泰子)」や「エンヴィー(演:本郷奏多)」をはじめキャスト陣の演技や内容を評価しているコメントを残しており、「面白かった」とも述べています。荒川さんは、キャラクターの髪形は茶髪でもいいと話したことや、エッセンスは残しつつの改変を楽しんだことも語っていました。
もともと荒川先生は、単行本のコメントで「B級映画が好き」と書いたり、おまけマンガで楽しそうに「実写キャストの予想」をしていたりしていたため、前述のような実写映画への好意的な評価には納得するファンも多かったようです。