日本美のミュージアムホテル、ホテル雅叙園東京(東京都目黒区)では、館内に有する東京都指定有形文化財「百段階段」にて「月百姿×百段階段~五感で愉しむ月めぐり~」を開催中です。
この「月百姿(つきのひゃくし)」とは、幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師・月岡 芳年が、月にちなんださまざまな物語を描いたシリーズのこと。本展では「月百姿」より、前後期に10点ずつの浮世絵を展示をするとともに、現代のアーティストによる月をモチーフにした作品も展示。文化財建築を幻想的に彩ります。浮世絵に描かれた景色が飛び出したような空間展示や、幽玄な月アートと建築とのコラボレーションなど、今昔の月が照らし出す月景色が、深い没入感をもたらします。(本記事では前期の写真を使用しています)
■月岡 芳年が紡ぎ出した月の世界を堪能しよう
浮世絵に使われている紙や絵具は繊細で強い光が当たると色が褪せてしまうため、展示室では暗さが必要に。つまりその本来の正統的な展示で、浮世絵師・月岡 芳年の晩年の連作「月百姿」より20点を前後期に分けて展示しています。彫りや刷りの美しさや、大胆で迫力のある構図、しみわたる月の静けさを感じることが出来て、作品を和紙に転写して下から明かりを照らす展示もあります。日頃、美術館などで目にする浮世絵とは違った視点で愉しむ「月百姿」は、本展ならではの演出となります。
竹取物語のラストシーンを表した『月宮迎 竹とり』
約130年前の作品を堪能
演出効果により鮮やかに浮かび上がる作品
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■「月百姿」のシーンをイメージしたインスタレーション!
<草丘の間>
「月百姿」には、ススキが描かれた作品も多く残されており、浮世絵に描かれた風景がそのまま飛び出してきたような空間展示が「草丘の間」に出現しています。展示会場を埋め尽くす2,000本以上のススキの中に、直径2mの満月が浮かび上がる仕掛け。ススキたなびく草原で、浮世絵のワンシーンのような写真撮影が叶います。
「月百姿」のシーンをイメージしたインスタレーション
浮世絵のワンシーンのような一枚を
<漁樵の間>
琵琶湖のほとりにある石山寺にこもり、湖に映る満月を眺めていた時に構想がひらめいたと伝えられている「源氏物語」。文机でぼんやりと頬杖をつく紫式部が描かれた作品「石山月」から着想を得た空間展示は、水と月がテーマとなっています。素材と色彩にこだわったダイナミックな展示が絢爛豪華な漁樵の間に溶け込みます。
浮世絵に描かれた満月が会場に出現
水をテーマにした繊細なガラス作品も(ゆきあかり 作)
ガラスの中に綴られた源氏物語(玉田 恭子 作)