アメリカの自動車大手ゼネラルモーターズ(GM)が、2026年よりF1に参戦することで基本合意に達したことが、11月25日に発表されている。同社の高級ブランド名を冠した「キャデラックF1チーム」は11番目のチームとして、向こう10年以内にパワーユニット(PU)も自社で製造するフルワークスチームを目指すという。
昨年、インディカーのレジェンドで、1993年にアイルトン・セナのチームメイトとしてマクラーレン・フォードでF1に参戦したこともあるマイケル・アンドレッティがキャデラックと提携してF1参戦を申請するも却下されたが、米国司法省が独占禁止法違反の可能性があるとして調査に乗り出した他、F1側との関係が悪化していたマイケルがプロジェクトから外れたことで状況が変わり、今回晴れて承認されることになった。
チームの取締役には、マイケルの父親であるマリオが就任。1978年のF1ワールドチャンピオンでもあるイタリア出身の84歳は、「私の初恋はF1だった。そして70年後の今も、F1のパドックは私にとって幸せな場所であり続けている。キャデラック、F1、マーク・ウォルター、ダン・トウリスととともにいられることに本当に感激している。この年齢になってまたF1関わることができるとは、夢を見ているのではないかと自分をつねって確認しなければいけないほどだ」と喜びを表わしている。
当面はおそらくフェラーリのPUを使用することになると言われているキャデラックF1。2026年の参戦までに多くのことを準備しなければならないわけだが、ドライバーの選定はそのなかでも大きな興味のひとつである。米国籍のチームということで、「オールアメリカン」を目指す可能性もあるが、少なくともシートのひとつは米国人ドライバーに割り当てられると見られ、昨年の申請の際にも名前が挙がったコルトン・ハータは有力候補のひとりであるようだ。
しかし英国のモータースポーツ専門サイト『THE RACE』は、この24歳のインディカードライバーに限定せず、彼と同じくアンドレッティ・オートスポーツでインディカー参戦中のカイル・カークウッド、今季途中までウィリアムズでF1マシンを駆ったローガン・サージェント、アストンマーティンの育成プログラムの一員であるジャック・クロフォード、NASCARレースで活躍中のカイル・ラーソンといった米国人ドライバーの名も挙げている。
そしてもう1枠については、F1での経験と実績を有するドライバーが有力だとして、今季限りでザウバーを離れるヴァルテリ・ボッタス、ハースのケビン・マグヌッセン、F1で181レースに出走して現在はインディカーレースに参戦中のロマン・グロージャンらをリストアップしているが、さらにその中にはビザ・キャッシュアップ・RBの角田裕毅も含まれている。 同メディアは、「経験豊富で、なおかつまだ十分にキャリアが残っているドライバーが相応しい」として、この日本人ドライバーは「(キャデラックF1にとっての)素晴らしいターゲットになるだろう」「新興チームにとっては、彼は優れたリーダーとなり、パフォーマンスの基準として信頼できる存在となる可能性がある」と太鼓判を押す。
また、「角田がこのままレッドブルに昇格できないとすれば、今後このエナジードリンク会社のF1チームの中で長期的な将来を見据えた、明確なビジョンを描くことは難しいだろう。また、2026年にホンダと提携するアストンマーティンも移籍先として可能性が示唆されているものの、これもあまり期待できないように思われる」という彼の去就に関する事情も考慮して、同メディアは新興チーム入りを推している。
同じく英国のモータースポーツ専門サイトである『CRASH』も、「GMにとって興味深く、エキサイティングな選択肢となるのが角田だ」と主張。こちらも、「彼はレッドブルから軽視されており、チームメイトを上回るパフォーマンスを見せているにもかかわらず、トップチームでのチャンスを得ることができない運命にあるようだ」と現状を紹介した上で、以下のように続けた。
「24歳の日本人ドライバーは、2025年末までRBと契約を結んでいるが、その後に彼は大きな決断を迫られるだろう。もしレッドブルから引き続き真剣に評価されない場合、角田はこのファミリーから離れることを選ぶかもしれない。その場合、GMが彼に新たな拠点を提供する可能性がある。特に今後、彼らがホンダを一時的なPU供給元として選ぶ場合には、その可能性は高まるでしょう。もっとも、ホンダはアストンマーティンにもPUを供給するため、GMは角田の獲得を巡って複数の勢力と争うことになるかもしれない」
チームの増加は、F1を目指すドライバーたちの「シート不足」をわずかながらでも解消すると思われるが、これによってドライバー人事をこれまで以上に活性化させることになるだろう。その中で、今季安定したパフォーマンスを持続して評価を上げている角田に、どれだけの選択肢が与えられることになるのか非常に興味深いところである。
構成●THE DIGEST編集部
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