Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI

この画像は、「ソンブレロ銀河」と呼ばれるM104をジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がとらえたものです。可視光で見ると、その形がつばの広いメキシコの帽子に似ていることからソンブレロ銀河と呼ばれますが、この画像では帽子のようには見えません。ソンブレロ銀河は、おとめ座の方向、約3000万光年の距離にあります。

画像はウェッブ望遠鏡がMIRI(中間赤外線装置)で撮影したもので、銀河の中の塵の分布が主に映し出されています。中央に円盤があり、その外側に塵のリングが存在しているのがわかります。退役したスピッツァー宇宙望遠鏡がかつて撮影した画像では、ソンブレロ銀河の外側のリングは滑らかに見えていましたが、解像度の高いウェッブ望遠鏡の画像では、空の雲のようなもくもくとした塊状の構造が見られます。

星形成は活発でなく、超巨大ブラックホールもおとなしい

ソンブレロ銀河はあまり星形成が活発ではありません。私たちが住む天の川銀河では1年間に太陽質量2個分程度の星が形成されていますが、ソンブレロ銀河の外側のリングで形成されるのは、1年間に太陽質量1個分未満です。

ソンブレロ銀河の中心にある超大質量ブラックホールは、太陽の90億倍もの質量があります。ただ質量は大きいのですが、それほど活動的ではありません。周囲から流れ込む物質をゆっくりと飲み込みながら、比較的小さなジェットを放出しています。

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ハッブルとスピッツァーの画像


Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, Hubble Heritage Team (STScI/AURA)

こちらはハッブル宇宙望遠鏡が可視光で撮影した画像と並べたものです。ハッブル望遠鏡の画像であれば、M104がソンブレロ銀河と呼ばれるのもわかるのではないでしょうか。

ソンブレロ銀河はかつて渦巻銀河に分類されていました。しかし2012年のスピッツァー宇宙望遠鏡の観測から、楕円銀河の中に円盤がある複雑な構造をしていることが分かりました。(参考)スピッツァー宇宙望遠鏡が赤外線でみたソンブレロ銀河(M104)

こちらの動画では、スピッツァー宇宙望遠鏡、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、ハッブル宇宙望遠鏡の画像が順に表示されます。

(参照)Webb Space Telescope、ESA/Webb