過去5シーズン、プレーオフの舞台から遠ざかり、昨季はウエスタン・カンファレンス14位に沈んだサンアントニオ・スパーズが健闘を見せている。
現地11月19日に行なわれたオクラホマシティ・サンダー戦を皮切りに、ユタ・ジャズ、ゴールデンステイト・ウォリアーズ、そして再びジャズを破り、4連勝をマーク。27日にロサンゼルス・レイカーズに敗れて連勝はストップしたものの、10勝9敗と貯金生活を送っている。昨季の同時点では3勝16敗だったことを考えれば大躍進と言えよう。
サンダー戦からウォリアーズ戦までの3試合は、いずれも序盤にリードを許しながら、後半で形勢を引っくり返して勝利に持ち込んだというゲーム展開だった。
サンダー戦は前半終了直前にリードを奪ったが、ジャズ戦では最大20点のビハインドから最終クォーターに逆転。ウォリアーズ戦も同じパターンで、試合のほとんどを追う展開の中で最大17点差を巻き返し、最終クォーターで相手の得点を13点に抑えて逆転勝ちした。昨季までは相手が乗ってくると持ち堪えられずに後退……というゲームが少なくなかったスパーズにとって、これは目覚ましい変化だ。
クリス・ポールはウォリアーズ戦のあと、「(試合終盤は)ディフェンスに集中することを意識した。最終クォーターを13点に抑えられたのは上出来だ」と満足げに語っていたが、先発フォワードのジュリアン・シャンパニーは、そのポールの存在こそがチームに闘志を焚き付けていると証言する。
「クリスはいつも僕たちに、『勝つことを想定して戦わなければダメだ』と言い続けている。それで僕らも、それを信じ始めているんだ」
20歳の若き主砲ヴィクター・ウェンバンヤマもウォリアーズ戦後、今オフに加入した2人のベテラン、ポール(39歳)とハリソン・バーンズ(32歳)がもたらす効果について語っている。
「彼らはいつも、的確な言葉を見つけては、ここぞという部分を強調して伝えてくれる。だからものすごくわかりやすいし、素早く学ぶことができる。彼らは自分たちの経験から、同じ失敗を繰り返さないようにするにはどうしたらいいかを知っていて、それを僕たちに教えてくれているんだ」
スパーズの後半での粘り強さは、数字にも表われている。今季のクォーター(Q)ごとの得点数を見ると、第1Qの平均25.9点はリーグ全体で29位、続く第2Qも26.9点で22位と前半は平均以下だが、第3Qは30.5点でリーグ5位にジャンプアップしているのだ。
ハーフタイムにロッカールームでポールやバーンズが若手を鼓舞し、なおかつ修正ポイントを的確に伝えている様子が想像できる。
ウェンバンヤマは「試合結果だけでなく、各部門のスタッツからも確実に進歩が見て取れる。だからこれは現実的な成果だ。ロッカールームでも誰1人として今の状況に驚いている者はいない。後ろを振り返る理由なんてない。これからは上を目指していくのみだ」と、ここまでの結果が決して偶然ではないことを強調している。
ただ、今季の10勝のうち8勝はホームであげたものであり、ロードではまだ2勝(相手はいずれもジャズ)しかしていない。ゆえに、遠征が続く12月後半から1月中旬にかけては地力が試される正念場となる。逆にここを最善の形で乗り切れば、プレーオフ争い参戦も現実味を帯びてくるだろう。
百戦錬磨のベテラン加入で上昇気流に乗るスパーズ。名門復活のシーズンとなるのか注目だ。
文●小川由紀子