トランプ氏の米大統領選勝利から3週間が経過し、徐々に外交政策の優先順位が鮮明になっている。

 トランプ政権が最大の課題とするのは対中国であり、それは国務長官や安全保障担当の大統領補佐官に対中強硬派の急先鋒たちが相次いで起用されることからも明らかだ。トランプ氏は11月25日、来年1月20日の大統領就任後、中国からの輸入品に10%の追加関税をかけることを早くも表明しており、まずは中国をやっつけることに優先順位を置く。

 そして次に重視するのが、世界の紛争を終わらせることだ。トランプ氏は米国が負担を負うことなく多くの紛争を早期に終わらせ、自らが偉大な大統領として功績を残したいと思っている。そうなれば、まずやりがいを感じるのはウクライナ戦争となる。ウクライナとロシアの戦闘は一向に改善が見られないが、ここで両者を和平に向けてのテーブルにつかせ暴力停止を確約させることができれば、トランプ氏は戦争を終結させた米国大統領として歴史に名を刻むことができる。

 その次は中東情勢となる。こちらは一筋縄ではいかないが、イスラエルが自ら戦闘を終了させれば状況はかなり落ち着いてくる。トランプ氏にとってイスラエルのネタニヤフ首相は盟友であり、自ら戦闘停止を要請すれば従うだろうとの自信があると思われる。

 そして優先順位として次に来るのが北朝鮮や台湾問題だろうが、この2つでは大きな差がある。トランプ氏は政権1期目、北朝鮮の金正恩総書記と3度も対面し、朝鮮半島の緊張緩和に努めようとした。双方の望むような結果には至らなかったが、再び正恩氏との対話に向けた外交を進める可能性が高い。現にトランプ氏は、1期目で北朝鮮担当特別副代表を務めたアレックス・ウォン氏を大統領副補佐官に起用することを発表。11月26日にはロイター通信が、トランプ氏のチームが正恩氏との直接会談を検討していると報じている。

 最後になるのが、台湾だ。トランプ氏は台湾が半導体産業を米国から奪ったと指摘しており、実質的な相手は中国ではあるものの、台湾への侵攻は起きていない。「戦闘を終わらせたヒーロー」になれる可能性は、今後もウクライや中東に比べると限りなくゼロだ。冒頭で指摘したように、トランプ氏は対中強硬姿勢だが、それは米国を守るためであって、台湾という外国を守るためではない。強硬な姿勢はあくまで貿易や関税の分野で示されるものであり、台湾問題で同様の圧力を中国に加える可能性は低い。中国からの圧力が強まる台湾にとっては、極めて深刻な事態と言えよう。

北島豊

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