「カフェ難民」続出の原因は“排除アート”にあった? 管理者は“座らせない”意図を否定…休憩場所を積極的に提供する施設も

新宿は親切と排除が混合…専門家の見解は? 

さらにベンチを探してタカシマヤ タイムズスクエア方面へ足を向けると、仕切りつきのベンチや植え込みに設置されたベンチなど、“排除アート”と呼ばれそうなデザインがいたるところに見られた。

さらに、このエリアでは路上生活者への“対策”なのか、段差にプランターを置いて物理的に座れなくしている場所もあった。

 一方で、そのすぐ隣には、新宿タカシマヤが提供する無料の休憩スペースも。

排除アートの広がりが指摘される中、時代に逆行するように、むしろ“休憩場所”を積極的に提供しており、複数の利用者を確認できた。

この狙いについて、設置者である新宿タカシマヤの広報に質問したところ、「日頃から、お客様より、『休憩スペースを増やしてほしい』とのお声をいただいておりますので」と、やはり休憩場所のニーズがあることを明かし、さらに詳しく答えてくれた。

「お客様の声を受けまして、1階JR口の外に、10月30日から11月22日までの期間限定でベンチを複数、試験的に置きました。どのようなお客様が、どの時間帯にご利用になるのかなど、確認する目的もございます。

反響につきましては、当方の告知が足りていなかったこともあるかと思うのですが、思っていたほど多くのご利用はありませんでした。お昼休みのサラリーマンなどおひとりで利用する姿が多かったです」

今回の調査でわかったのは、ベンチの減少や排除アートが“カフェ難民”発生に影響しているとSNSで指摘されているが、ペンギン広場や新宿タカシマヤなど、都心でも利用者が快適に使える公共スペースは一定数確保されていたことだ。

都市・建築学や建築デザインを専門とし、排除アートに関する書籍も多数出版している東北大学大学院・五十嵐太郎教授にも話を聞いた。

「居場所を潰す行為の可能性を減らすという意味では、多少関係があるかもしれませんが、それほど大きな要因とは思いません。近代以降、日本はそれまでの都市空間には存在しなかった『広場』を取り入れようとしてきましたが、それをうまく機能させられていないことが問題だと思います。

ただ、ベンチ数に関しては、海外(ヨーロッパやアジア)の都市と比べると、日本はベンチもゴミ箱も少ない印象を持っています」(五十嵐教授)

SNSでは「排除ベンチ」がカフェ難民の原因だと指摘されていたが、それは大きな要因ではなさそうだ。

しかし、満席でカフェに入れない人々のためにも、憩いの場となる快適なベンチがもっと日本に増えてもいいのではないだろうか。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班