今年9月、東京都の婚活支援事業の一環としてリリースされたAIマッチングシステム「TOKYO縁結び」。AIが相性のいい相手を紹介してくれるというが、その精度は一体どれくらいのものなのだろうか。また民間のマッチングアプリとの違いは? 実際に交際相手を探している、30代女性である筆者が利用して、男性と会ってみた。
官製マッチングアプリ、登録はかなり面倒くさい
東京都は近年、行政主導の婚活支援に力を入れている。未婚や晩婚が増えたことによる少子化に歯止めをかけようとしているわけだ。そして、「結婚を希望しながらも、婚活をしていない人が7割近くいる」という調査結果にもとづき開発されたのが、AIマッチングシステム「TOKYO縁結び」。
18歳以上の独身者で、東京に在住しているか、在勤・在学であれば登録が認められる。
30代前半独身彼氏ナシ、東京在住の筆者。まさに、行政が「早く結婚して子どもを産んでほしい」と思っているターゲット層であろう。そこで、一般に向けてリリースされた9月20日の初日に、さっそく登録してみることにした。
「TOKYO縁結び」は、民間のマッチングアプリとは異なり、登録はかなり面倒だ。まず、下記の6点を過不足なく準備しなければならない。
① 写真付き本人確認書類
② 独身証明書
③ 年収を確認できる書類
④ プロフィール掲載用写真
⑤ 誓約書
⑥ 登録料11,000円
独身証明書は、本籍のある市区町村で発行することができる。筆者は近所の出張所で申請した。一度、本籍地の住所を間違えたせいでトータルで20分ほどかかったが、スムーズにいけば10分もかからず発行してもらえるだろう。
年収を確認できる書類は、源泉徴収票や給与明細などが当てはまる。筆者は個人事業主なので、確定申告書のコピーを提出した。ただ、マイナンバーを隠し忘れたせいで、再提出ということになってしまった。ちなみに、その連絡が来るまで3週間ほど待たされている。
また、「誓約書」とは東京都知事に対して、登録した内容が真実であることや、婚活を前提とした登録であることを誓うものだ。
この間、登録料の支払いを済ませ、本人確認のためのオンライン面談と価値観診断テスト「EQアセスメント」も受けている。正直、何度も心が折れそうになった。
おそらく、取材でなければ、もう登録自体あきらめている。それほどに面倒なハードルが多いのだ。
ちなみに、AIマッチングのキモとなる「EQアセスメント」は、自分の性格についてAとBの選択肢が提示され、共感度がどれくらいか選ぶというもの。設問内容は、よくある性格診断とさほど変わらないように思えた。
ただ、同じ内容の選択肢がくり返し出てくるなかで、自分がとくに優先する価値観はなにか、あぶり出されるように感じた。
交際相手や結婚相手の許せないポイントについて問われるセクションでは、「A. 自分を否定的に捉えており、自信がない」と「B. 仲間内でもめごとがあっても積極的に関わろうとはしない」は、どちらも嫌だけどしいていえば……というように、自分が相手に求める条件を具体的かつ詳細に言語化できたのがありがたかった。
ちなみに筆者は上記のAとBの選択肢なら、Bのほうが許せない。なぜなら、Bは他者との関わり方が、自分とは真逆の人だと思うからだ。このテストを通して、自分は相手に社交性やコミュニケーション能力を求めているのだと気付くことができた。
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お相手の提案だけでなく日程調整もAIがやってくれる
こうして、すべての工程を済ませ、年収証明書も再提出し、ようやく活動を開始できるかと思いきや、ここからまったく進捗しなくなってしまう。
10月15日に書類を再提出して、活動開始の連絡がきたのが11月19日。結局1ヶ月以上待たされてしまった。それだけ、登録希望者が多いということだろう。
相手を紹介されるのは毎週水曜日。1ヶ月あたり4人まで、AIがおすすめだと判断した男性がマイページに表示され、お見合いを希望するかどうか返答を求められる。
その下には、相手側からお見合い希望をしている男性のリストも。自分を紹介された相手がお見合いを希望した場合に表示される。
筆者もさっそく、AIから紹介された男性とお見合い日程を組むことに。活動開始までの牛歩が嘘のように、かなりスムーズで驚いた。
というのも、あらかじめお見合い可能な日時を登録しておくと、システムがそれに合わせた候補を提示してくれるのだ。どちらかが先に回答すると、それが相手にも提案されるという流れだ。都合が悪ければ、ほかの日時を再提案することもできる。
今回は、お互い再提案することもなく、とんとん拍子で日時が決まった。
ちなみに会う場所は、お互いによく使う駅を登録するシステムだが、原則として女性の希望が優先される仕組みとなっている。