染井為人による同名小説を映画化した『正体』の初日舞台挨拶が11月29日に丸の内ピカデリーで行われ、横浜流星、吉岡里帆、森本慎太郎(SixTONES)、山田杏奈、山田孝之、藤井道人監督が出席した。
『正体』の初日舞台挨拶が開催された
本作は、『余命10年』(22)が興行収入30億円を超える社会現象を巻き起こし、『青春18×2 君へと続く道』(24)も日本のみならず、現在、アジア各国で大ヒットを記録中の藤井道人監督が手掛けた最新作。日本中を震撼させた殺人事件の容疑者として逮捕され、死刑判決を受けるも脱走、全国各地を逃げ回る鏑木慶一(横浜)の逃亡劇の真相と、潜伏先で出会う4人の視点から彼の“正体”を追いかけるサスペンスエンタテイメントだ。鏑木と出会いを果たすキャラクターを、吉岡、森本、山田(杏奈)が演じ、山田(孝之)が彼を追う刑事に扮した。
「この日を迎えられて幸せ」と感無量の面持ちを見せた横浜流星
4年という歳月をかけて作り上げられた本作が初日を迎え、横浜は「この日を迎えられて幸せに思います。4年かけて一同、妥協せず作りました」と完成作に胸を張りながら、感無量の面持ち。藤井監督も「僕自身、映画が完成せずに終わってしまったこともある。止まってしまったこともあります。この映画は企画の段階から流星が横にいてくれて、『一緒にやろう』と走り切れた。なにか物事をやる時に、ゴールまで行くことは奇跡。お客さんに届けられること自体が奇跡だと思っているので、流星に感謝したいと思います」と長編劇場映画では3度目のタッグを組んだ横浜にお礼を述べた。「出会いは『青の帰り道』」と藤井監督との出会いを振り返った横浜は、「この作品も紆余曲折がありましたが、それを乗り越えたからこそこのステキな方々と出会えて、作品づくりができた。自分のなかでもひとつの集大成となった作品になりました。本当に多くの方に届いてほしい」と力を込めていた。
鏑木の無実を信じる沙耶香を演じた吉岡里帆
それぞれが発見したお互いの新たな一面について明かすことになると、吉岡は「流星くんは万能すぎる。あらゆるシーンでの適応能力、運動神経、感性などいろいろできすぎていて、びっくりすることが多かった」と完璧すぎることに驚いたというが、「一緒に餃子を作るシーンがあったんですが、それがめちゃ下手でした」と意外な一面を見つけたと話して、会場も大笑い。「かわいかったです。チャチャチャっと作りそうだけれど、ちょっと手こずっていらっしゃるのを見て人間なんだなと思いました」と目尻を下げた。横浜は「鏑木は料理が上手なんですけれど…」と申し訳なさそうに苦笑いを見せると、藤井監督がその場面は引いた画で撮っておいたと続くなど、息ぴったりのやり取りで会場を沸かせていた。
工事現場で働く鏑木と親しい友人となるが、犯人ではないかと疑う和也を演じた森本慎太郎
また森本は、演じた役柄の関係性から「撮影の合間は、流星くんは無口であまりしゃべらなかった」と回想。「でもめっちゃおしゃべりですよね。ミステリアスな雰囲気があるから、全然笑わない人だと思っていた。おふざけができない人なのかと思ったらすごく笑ってくれるし、すごいふざけてくれる。そういう一面があるんだとびっくりしました」と宣伝期間を通して感じた横浜のギャップに触れながら、声を弾ませた。さらに森本が「いじるっすよね、俺のこと」と笑うと、横浜は「こういう(役柄の)関係性じゃなかったら、食事にも行きたかったんだよ」と正直な胸の内を吐露していた。
長野の介護施設で働く鏑木と出会い、恋心を抱く舞を演じた山田杏奈
続いて山田(杏奈)は「控え室にカメムシがすごく多くて。電気の周りをぶんぶん飛び始めた。それを流星さんが、ひょいっと取ってくれました。すごくスマートだった」と裏話を口にしたが、横浜は「全然いけますね。(手を)洗えばいい」と虫への恐怖心はないとキッパリと答えていた。
潜伏しながら各地に出没し日本を縦断していく鏑木を追う、刑事の又貫を演じた山田孝之
横浜と山田(孝之)は、本作で初共演を果たした。山田は「なにで、いつ共演するのかと思っていた」と気になる存在だったといい、「特別な想いがある。僕は過去に『破獄』というドラマをやったことがあって。僕が牢獄から逃げ出して、それをビートたけしさんに追われる役だった。逃げる側がいかに大変なのかは知っているので、流星はこれをやるのかと。それならば本気で向き合ってみようという気持ちで参加した。この作品で共演できてよかったと本当に思っています」とがっつりと対峙する関係性で共演ができたとしみじみ。
初共演を果たした横浜流星と山田孝之
「幸せでした」と喜びを噛み締めた横浜は、「ずっと共演したいと思っていましたし、又貫と鏑木としてぶつかり合うことができた。ただの追う、逃げるという構図ではなく、新たな形、関係性になれたのは山田さんだったから。とにかく幸せな時間でした」と充実感をにじませていた。
取材・文/成田おり枝