テニスの不正行為を監視する第三者機関「ITIA」は11月28日、女子テニス世界ランク2位のイガ・シフィオンテク(ポーランド)に約1カ月の出場停止処分を科したと発表した。今年8月に行なわれたドーピング検査で禁止薬物の「トリメタジジン」(血管を広げて血流を良くする物質)が検出されたからだ。
このニュースを受け、世界元1位(現877位)のシモナ・ハレップ(ルーマニア)は黙っていなかった。
ハレップは2022年の全米オープン中に実施された検査で禁止薬物の「ロキサデュスタット」が検出された件と、翌年に「生体パスポート」に関わる違反が判明して4年間(22年10月から26年10月)の出場停止処分を科せられた。
後に違反は意図的なものではなかったことが裁判所で認められて出場停止期間が短縮。今年3月のマイアミ・オープンで戦線復帰を果たしている。
だがハレップは、自身とシフィオンテクに対するITIAの処分が大きく違うことに納得がいかず。11月29日には自身の公式インスタグラム(@simonahalep)を通じて下記のように不満を綴っている。
「私は座って理解しようとしているけど、このようなことを理解するのは本当に不可能。なぜ待遇や判断がこんなに違うのか?論理的な答えは見つからないし、あるとも思えない。明白なことであるにも関わらず、私を破滅させるためにあらゆる手を尽くしてきたITIAの悪意としか思えない」
そして「彼らは私のキャリアの最後の数年間を破壊することを強く望み、私が想像もしなかったことを望んだ」とし、「私はいつも善を信じ、公正を信じ、優しさを信じていた。私に対する不当な仕打ちはつらかったし、今もつらいし、これからもずっとつらいと思う」と嘆く。
そして「同時期に起きた同じ事件でITIAがまったく異なるアプローチをとり、私に不利益をもたらした。WTAと選手評議会が、私にふさわしいランキングを返そうとしなかったことを、どうしたら受け入れることができるのか!?」と訴える。
「私は2年間のキャリアを失い、眠れぬ夜、不安、失望、答えのない疑問に何度も襲われた。しかし私は正義を勝ち取った。怒りは今も感じない。毎日一緒にいてくれた人たちのサポートと愛に感謝している。ありがとう!その時に愛を与えてくれた人たちは、私のことを本当にわかってくれていたの。それが最大の勝利かもしれない」としている。
ハレップは復帰戦となったマイアミ・オープンでは1回戦敗退、続く5月の下部大会は途中棄権して再びツアー離脱。9月に香港で開催された下部大会に出場すると、そのまま10月の「香港テニス・オープン」に出場したがこちらも1回戦敗退。思うような結果が出せないまま今シーズンに幕を下ろしたハレップ。ドーピング騒動によって強いられた約2年に及ぶブランクは33歳を迎えた彼女に重くのしかかっている。
2020年にノバク・ジョコビッチ(セルビア)とバセク・ホスピシル(カナダ)によって設立されたテニス選手協会(PIPA)は28日、「テニスには透明性、一貫性、客観性に根差したアンチ・ドーピング・システムが必要だ」とコメントを出している。
構成●スマッシュ編集部
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