BE:FIRSTのドキュメンタリー映画第2弾となる『BE:the ONE -MEANT TO BE‐』(公開中)。2024年3月2日に開催し大成功を収めたグループ初の東京ドーム公演「BE:FIRST LIVE in DOME 2024“Mainstream – Masterplan”」初日の圧巻のライブパフォーマンス、バックステージやリハーサルシーン、さらに未公開のスペシャルインタビューなど、彼らの「進化」が余すことなく記録された、BESTY(ファンネーム)必見の内容となっている。メガホンを取ったのは、前作『BE:the ONE』(23)に引き続き、オ・ユンドン監督。BTSやBLACKPINKなど、これまで数多のK-POPスターのドキュメンタリー映画を手掛けてきた監督は、BE:FIRSTをカメラに捉え、どのように感じたのだろうか。BE:FIRSTならではの魅力や、前作からの7人の成長、アーティストのライブを映画館で楽しむODS作品を制作するうえでのこだわりなどについて聞いた。
【写真を見る】プロデューサーであるSKY-HIと綿密に計画して作り上げられた『BE:the ONE-MEANT TO BE-』 / 撮影:田中聖太郎写真事務所 [c]B-ME & CJ 4DPLEX All Rights Reserved.
■「BE:FIRSTと出会って日本のアーティストへの印象が変わった」
「いままでK-POPアーティストのライブフィルムをたくさん手掛けてきたのですが、日本のアーティストとしては初めてBE:FIRSTの作品を手掛けました。初めてだからこそ愛情もありますし、前作に引き続き、この3年間で成長している彼らの姿を近くで見てきているので、私もBESTYの一人としてすごく思い入れがあります。ほかのアーティストの場合は、ある程度すでに成功している時期に手掛けている作品が多いですが、BE:FIRSTはまだ成長の過度期に出会ったこともあり、彼らに対しての期待や愛情は、ほかのアーティストよりも強いかもしれません」
監督の言葉にあったように、前作の『BE:the ONE』は、BE:FIRSTが誕生するきっかけとなったオーディション番組「THE FIRST」から初の全国ツアー「BE:FIRST 1st One Man Tour “BE:1” 2022-2023」までのリアルな成長ストーリーが丁寧に描かれている。まさに7人の原点から現在までを見届け続けている監督にとって、BE:FIRSTは特別なグループのひとつなのだろう。そして第2弾となる今作では、グループにとって念願の初の東京ドーム公演の模様を軸に描かれているが、監督が特に印象的だったシーンとは?
今回の東京ドーム公演でBE:FIRSTの多くの成長を感じたというオ・ユンドン監督 / 撮影:田中聖太郎写真事務所 [c]B-ME & CJ 4DPLEX All Rights Reserved.
「この作品のすべてのシーンがもちろん印象的でしたが、特に東京ドーム公演でのクライマックスステージの終わりに向けて走っていく、その過程での7人のコメントが最も印象に残っています。なので、そのシーンはBESTYにもっとドラマチックにお届けできるような演出をしました」
さらに監督は、「BE:FIRSTと出会い、日本のアーティストへの印象が変わった」と続ける。「BE:FIRSTと出会う前は、日本のアーティストに対してある意味、固定概念がありました。定型化されたシステムの中で活動していて、その中でキャラクターを設定しているイメージだったんです。でも、彼らと初めて打ち合わせをした時に、想像していたより自由な姿を見せてくれて、これまで抱いていた印象と違うなと思いました」
また、前作に比べて今作では、7人の大きな成長を実感したのだそう。「前作の代々木第一体育館でのライブでは、すごくプレッシャーを感じていたようでしたが、それにも関わらず、緊張しないようにステージを楽しもうという姿がとても印象に残っています。しかし今回の東京ドーム公演では、ステージを楽しむ姿が100%で感じられて、アーティストとして完成形になってきているなと思いました。もともと皆さんルックスもかっこよかったですが、さらに洗練されてきて、すごく努力されたのだなとも思います。また、もしかしたらSKY-HIさんの意図もあったのかもしれませんが、代々木の時のメンバーのコメントって、選び抜かれた言葉だったんです。だけど今回の東京ドームでは本音をあらわにしていたので、自分たちの言語というものを持つようになったのだなと、成長を感じました」
日本でも映画館でライブを楽しむODS作品の人気が高まっている / 撮影:田中聖太郎写真事務所 [c]B-ME & CJ 4DPLEX All Rights Reserved.
確かに東京ドームを埋め尽くすBESTYたちを見渡し、喜びを爆発させて泣いているメンバーの姿は、観る者の心を大きく揺さぶるとても感動的なシーンだった。「まさに成長を実感したのは、そういったところです。ステージ上で楽しむ余裕というか、それぞれ自分がどんな強みを持っているのかを明確に理解していて、それをどうBESTYに伝えればいいのか、個人個人が学び終えた感じがします。だけどステージの裏では、年相応の、若者の姿そのものでした(笑)。彼らの持つ“核”のような部分は、変わっていないのだなと思います」
■「ライブフィルムのようなODS作品は、いまでは商業的な映画に並ぶ、メインストリームになってきている」
BE:FIRSTとSKY-HIとの絆やBESTYへの愛を愛も実感できる内容に! / 撮影:田中聖太郎写真事務所 [c]B-ME & CJ 4DPLEX All Rights Reserved.
本作を制作するにあたって、プロデューサーのSKY-HIとどのような話をしたのかについても、明かしてくれた。「2年前にSKY-HIさんに初めて『映画を作りたいです』とプレゼンを行った時に、『全国ツアーからその後の東京ドームまでの道のりを描きたい』という話をしていました。なので東京ドームに関しては、前作の段階から頭の中に企画はあったんです。多分SKY-HIさんのスタイルに合っていたのかもしれないのですが、こちらが提示した方向性にたくさん賛同してくださいました。BE:FIRSTのマスタープランと言いますか、今後のビジョンについて共有してくださったおかげで、その瞬間瞬間を、映画でどのように記録すればいいのかアイデアを得ることができました。SKY-HIさんの望むような作品に、近づけられたのではないかと思ってます」
『BE:the ONE -MEANT TO BE‐』は東京ドームでのパフォーマンスをメインとし、その他にメンバーの素顔を知ることができるメイキングやインタビューなど、様々な要素で構成されている。ライブビューイングとは異なる、一つの映画として作品を作り上げていくうえで、監督が大切にしていることとは?
「BE:FIRSTを最も美しく記録することを、一番大切にしていました。今回の映画はライブフィルムではありますが、ドキュメンタリーでもあります。BE:FIRSTの歴史の中で初の大きなステップとなる東京ドーム公演を、BESTYの視線でどのように描けばいいのか、BE:FIRSTの美しい瞬間をどう記録するかについては、事前にすごく悩みました。ライブ映像もセットリスト通りでなく、映画に合わせて再構成することによって、さらに意味のある記録になったのではないかと思います」
BTSやSEVENTEEN、BLACKPINKらのODS作品を手掛けてきたオ・ユンドン監督 / [c]B-ME & CJ 4DPLEX All Rights Reserved.
『BTS: Yet To Come in Cinemas』(23)、『BLACKPINK WORLD TOUR [BORN PINK] IN CINEMAS』(24)など、世界的人気を誇るK-POPアーティストのODS作品を多数手掛けている監督に、改めてODS作品の魅力についても聞いた。
「K-POPのファンダムにおいて、ライブを劇場で鑑賞するということがまだ浸透していなく、なじみのない時期がありました。しかし私は10年前から、ライブフィルムを映画にしていく作業を行っています。こういったライブフィルムはODS作品と呼ばれていますが、個人的にはODSは、いまでは商業的な映画に並ぶ、メインストリームになってきていると確信しています。その理由として、近年は作品を鑑賞する方法が配信サービスの普及ですごく多彩になってきましたが、観客がいつどこでその作品を鑑賞しようとしても、やっぱり没入感が一番大事だと考えているからです。こうしたライブフィルムは、観客に没入感を与えるという面において、すごく魅力的だと思っています」
しかし韓国では日本やその他の国に比べ、ODS作品はそこまで活性化していないのだという。「私がライブフィルムを制作すると、少なくとも全世界100か国で上映されるのですが、その中で国内(韓国)で上映される劇場数の割合は全体の10%以下であることが多いです。最近は日本やアメリカなど、グローバルでどう展開していくかに注目しています。あとはやはり、作品の人気はそのアーティストの人気とも比例しています。例えばBLACKPINKはアメリカやヨーロッパあたりで人気ですし、SEVENTEENは圧倒的に日本での人気が高いです。また、Coldplayは全世界でバランス良く人気がありました。今はグローバルに、K-POPやJ-POPなど、様々なアーティストの多彩な企画を進行しています」
「監督には今後もBE:FIRSTを撮り続けてほしいし、ぜひほかの日本のアーティストの作品も撮ってほしい」。インタビューの最後にそう伝えると、監督は笑顔を見せてこう語ってくれた。
「BE:FIRSTの次の映画も担当したいと、私も強く望んでいます!今年だけで13本の映画を公開しまして、来年は20本ほど予定していますが、日本のアーティストに関しても積極的に制作していくプランはあります。ですが、初めてだったということもあり、ここまで愛情を持って接することのできる日本のアーティストは、やはりBE:FIRSTだけではないかと思っています」
取材・文/紺野真利子