みなさま、カゴカキダイはご存じでしょうか?

そう、本命魚のエサを横取りしてくるエサ取り名人の外道で、釣り人の憎悪の対象になっているアイツです。

黄色と黒のシマシマ模様も全く食欲をそそられないため、釣れてもほとんどが海ポチャかその場で捌いて釣り餌にされてしまうみたいですね。

酷い時はリリースすらされなかったこの子の死体が釣り場に転がってる時もありますね(; ;)

でも実はこの子めちゃくちゃ美味しいんです!

魚界のゴッドファーザー・ぼうずコンニャク氏や野食ハンター茸本朗氏らがその美味しさを啓蒙してくださったおかげで、近年人気が出始め値段が徐々に上がってきています。

とはいえ全国各地の釣り人の友人にカゴカキダイの写真を送ると「この外道が!!!!!!!」と返ってきますし、「食べたことない? え? コイツ食えんの?」という反応が99%です。

そして地域によっては現在も30~50円で叩き売られていたり、値段すらつけられず「『箱に色々な種類の魚まとめて500円セット』の中によくコイツいる」と友人たちから聞きます。

人気急上昇中とはいえ、全国的にはまだまだカゴカキダイは無名な未利用魚なようです。

しかしその美味しさを知る人々からは絶大な支持を集める魚なので、「美味しい未利用魚セット」にはよく入っている印象があります。

▼「へんおじの物産展」未利用魚セットの参考写真です。

もちろん行きつけの魚屋「海鮮市場マルモト」(神奈川県伊勢原市伊勢原1-3-37)の地魚コーナーにもいたりします。

興奮しすぎて写真を撮り忘れてしまったのですが、先日マルモトには大量のカゴカキダイだけが詰め込まれたトロ箱もありました(*´ω`*)

ぼうずコンニャク氏たちの努力のおかげで、関東ではカゴカキダイの人気が高まり値が上がっているのですが、それでも1尾100円~200円程度です。安い!

カゴカキダイ

シマシマ模様に丸いフォルムのずんぐりむっくり体型がとにかく可愛い。超可愛い。

私は「何だこの可愛い生き物は!? 可愛すぎワロタw えっ?? 食べられるの? しかも超美味しい……だと!?」と、カゴカキダイをきっかけに未利用魚に興味を持つようになったので、特に思い入れのある魚です。

大きくまんまるなおめめと、カワハギ並みのエサ取り名人芸を繰り出す小さなお口が奇跡的な可愛さを生み出しています。この可愛さはまさに世界の神秘。

その愛らしい姿からは想像もできない攻撃的な武器(トゲ)を背ビレと尻ビレに隠し持っています。このギャップもまた大変魅力的です。

カゴカキダイを捌く

捌き方はウロコを落として普通に3枚おろしで大丈夫です!

でも小さいうえに背中(頭の後ろ)が急激に盛り上がってるので捌きづらく少々手こずりますが(・∀・;)

焼き物にする場合はウロコも取らずに塩をふってそのままグリルに突っ込めばOKです! 超楽。

ウロコの旨みがまたすごいのです。内臓が苦手じゃなければ内臓もそのまんまでOKです。

基本的にはとても美しい透き通るような乳白色の白身魚です。

が、血合いの色が鮮烈で赤みがかった個体もいます。こういう個体は少し磯臭い傾向にある気がします。

磯の香りが苦手な方は切り身をキッチンペーパーに包んであげると良いでしょう。

茸本朗氏がYouTubeで「キッチンペーパーで包むと紙に匂いが移るので磯臭さが取れる」と仰っておりました。

そして寒い時期のこの子は脂がすごいんです!!!!!! 思わず「きみ本当に魚?」と問いかけてしまったほどのこの脂を見てください!!!!!

霜降り和牛のようなこの脂のサシ!!!!!! この脂のノリがカゴカキダイの特徴で絶品たる所以なのです!!!!!!!!

ちなみに夏の脂が少ない個体でも包丁がすぐにベットリしてしまうぐらいには脂がのっています。

では捌けたのでさっそく食べていきましょう。

今回は「カゴカキダイは大量入手できる時も多いけど、捌くのに疲れちゃったり食べきれずに冷蔵庫に放置しちゃうことがあるよ。脂が多い魚だからすぐに食べきらないとダメ? 寝かせちゃダメなの?」という疑問を解消すべく、3~4日冷蔵庫に放置した刺身も食べ比べてみたいと思います。

本日のお品書き

・刺身

・唐揚げ

・煮つけ

・塩焼き

で頂きます。

カゴカキダイの刺身

血合い骨は食感的には気にならないけど、血合いに磯臭さや鉄っぽさがあり苦手なので、血合い骨部分は切り落としてから頂きます(。・н・。)パクッ

まぁ、言うまでもなく激ウマですよね。

刺身が舌にふれた瞬間に脂が溶けだして甘みがジュワーっと広がり、同時に脳みそも溶けます。

霜降りカルビのアツアツ焼肉を食べる瞬間を想像してください。あの口に入れた瞬間に脂がジュワーっと溶け広がる現象が刺身で起こるのです。

魚の脂は融点が低いので冷たい刺身で食べても舌の温度で「ジュワーっ」が起こるのです。

身自体も上品で甘く白身魚らしい旨さがたっぷり詰まっており、コリコリサクサクした歯ごたえで非常に美味しいです!!

そしてカゴカキダイの刺身はウニの味もする気がする。

磯臭さとは全く別で、噛んでいるとフワッとウニに似た風味が立ち上ってきます。

「カゴカキダイには独特のクセがある」という声もたくさんあるのですが、このウニっぽさがそのクセなのかしら?

魚のうま味も脂もたっぷりで、しかもウニの風味がするって最強の味だと思うのですが、確かにウニ嫌いな人には「クセがある」魚に感じるかもしれないなぁ……。

磯臭さに関しては、この個体はカゴカキダイにしては磯の匂いが強めでしたが、磯臭いのが大の苦手な私でもそんなに気にならない程度だったので、もともとそんなに磯臭くなる魚ではないんじゃないかなぁ? と思っています。

3日放置したカゴカキダイの刺身

エラと内臓だけ取り、キッチンペーパーで包んで冷蔵庫で放置した子を刺身にしました。

寝かせたほうが脂が馴染んで美味しそうに見えるような。

うますぎる魚カイワリの活け締めは3日目ぐらいから少し脂が酸化した匂いが出てたけど、脂の権化でしかも野締め個体のカゴカキダイはどうなんだろう? 食べてみます(。・н・。)パクッ

食感以外はほとんど変化なしです。

食感は柔らかくなり、初日のコリコリサクサクした歯ごたえからサクサクトロッに変わりました。

あとは強いていうなら脂と身の味が馴染んでまとまり、味に深みが出て少し美味しさが増したかも?

どうもカゴカキダイは寝かせるとうま味が強くなるタイプではなさそうです。夏にうま味が乏しい個体を寝かせた時もそんなに味に変化はなかったです。

脂が酸化するなど風味の劣化は全く感じられなかったので、カゴカキダイはたぶん5日ぐらいは余裕で持つ気がします!

カゴカキダイの唐揚げ

ウロコ付きのまま塩をふり、小麦粉をまぶして揚げました。

ウロコと厚い皮で中が蒸し焼きにされて、ふっくらジューシーに仕上がっています。

身は柔らかくホロホロです。

味自体は甘みの強いキンメダイのような味わいで当然絶品です。

ウロコについては審議が必要ですね。

確かにウロコつきの皮が超絶なうま味と香ばしさを付け足してて極上ではあるのですが、いかんせんジャリジャリと口どけが悪く食感があまりよろしくないです。

ウロコをつけたまま調理して味の良さをとるか、ウロコは外して食感をとるかはちょっと悩みどころです……

もしかするともっとじっくり揚げればウロコもサクサクで口どけが良くなるのかもなぁ。

あとはやっぱり血合い骨あたりが磯臭くて、危うく磯臭さ警察が出動しかけました。

そして特筆すべきはエンガワの旨さです!!

エンガワ部分の脂はぼんじり(鶏のお尾骨あたりのお肉)みたいな味もするし、揚がった小麦粉の香ばしさとあわさって信じられないほど美味しいのです。

エンガワあたりにはヒレのトゲと同じく鋭く強靭な骨がたくさんあり危険なのですが、ウマすぎて脳内麻薬の大放出が止まらず、口の中ズタボロ&喉に骨をぶっ刺しながら完食してしまいました。私はきっといつかカゴカキダイに殺られる気がします。

カゴカキダイの煮つけ

鍋に同量の酒、醤油、みりん、生姜スライス、ネギを入れて沸騰させ、ウロコだけ落とした内臓つきのカゴカキダイを丸のまま入れて煮つけました。

身が柔らかくホロホロすぎて器に盛る時に背中側が崩壊したし、可愛いシマシマ模様のせいで全く美味しそうに見えないのですが頂きます(´~`)モグモグ

当たり前に美味しいです。だってカゴカキダイだもん。

味は脂のりマックスのキンメダイを想像していただければ大体あってると思います。

身はふんわりホロホロで皮はトロりとしており、出汁なんか入れてないのに煮汁も旨さが爆発していて、これはご飯が進みすぎて困る。

内臓はほのかな磯の香りと苦味、複雑なコクとうま味が絡み合って珍味的な美味しさがあります。が、私は内臓が苦手なので食べられなくはないけど内臓はないほうが好きかな(・∀・;)

冷めるとプルプルの煮凝りができてそれもまた旨しです。

ただ冷たい状態だと皮の魚臭さが目立つし、脂がド乳化した煮汁の美味しさを十分に堪能できないので、温めて食べたほうがやっぱり美味しい。

カゴカキダイの塩焼き

何も手を加えず塩だけふってグリルに突っ込めばOKです。

繰り返しになりますが、カゴカキダイはウロコも美味しいのでウロコ付きのまま焼くのがおススメです。

言うまでもなく美味しいです。

皮目の脂がジューシーで甘く香ばしく、うま味はしっかりあるのにクセがなく非常に上品な味わいです。

カゴカキダイの塩焼きは酒飲みの友人の大好物なので、ツマミとしても最高に良いのではないかと思います。

カゴカキダイの評価

味:文句なしの星5 ☆☆☆☆☆

可愛さ:カンスト ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

刺身にするのはちょっと面倒くさいけど、苦労が報われすぎてお釣りがくる美味しさだし、焼き物や揚げ物なら手を加えずに火にかけるだけでOKなのでめちゃくちゃ調理が楽です。

知る人ぞ知る未利用魚の王と言っても過言ではない美味しさを誇り、寒い今の時期がまさに旬なので、見かけたらぜひ食べてみてください!

美味しさが全国にバレてそのうち高級魚になってしまうかもなので、買うなら安い今がチャンスです!

※画像引用:「へんおじの物産展」画像引用元URL:https://henoji.theshop.jp/items/90932246[リンク]

※その他画像は全て筆者撮影

海鮮市場マルモト

https://www.0-to.com/[リンク]

へんおじの物産展

https://henoji.theshop.jp/[リンク]

ぼうずコンニャク氏の寿司図鑑カゴカキダイ

https://sushi.zukan-bouz.com/detail.php?id=1354[リンク]

(執筆者: ゆずくん)