「先史時代の超文明の遺物」という響きだけでもワクワクするものです。『∀ガンダム』ではモビルスーツがその遺物の一種なのですが、そのように悠久の時を経た兵器が修復したら動く、などということはあり得るのでしょうか。



はるか未来では「ボルジャーノン」と呼ばれていました。「HG 1/144 ザクII」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

【画像】「えっ、オーパーツ?」こちらリアルにメソポタミアで出土した戦闘機です(4枚)

そもそも兵器を長期間保存することなんてあるの?

 アニメ『∀ガンダム』では、数千年前と推定されるモビルスーツ「ザク」などが地下から掘り起こされ、レストアされて再び戦場に姿を現すという壮大な物語が描かれています。しかし、現実世界において、このようなことは果たして可能なのでしょうか?

 数千年の時を超えて、兵器がそのままの形で残っていることは、まず考えにくいといえます。金属は酸化し、有機物は腐敗し、電子機器は微細で高度なものから早く機能を永久喪失します。たとえ地下深く、湿気や酸素のない環境に埋もれていたとしても、長い時間によって少しずつ劣化してしまうでしょう。

『∀ガンダム』作中で登場したザクは、「オリジナルではないレプリカモデルである」または「ナノマシンによるレストアであるなど何か未知の技術が使われている」という説もあるようですが、真相は定かではありません。

 現実世界においても兵器を長期保存するといった事例はあり、一般的に「モスボール」と呼ばれます。

 モスボールには、さまざまな保存状態があります。完全に密閉された状態で保存されるものもあれば、部分的に簡易的な防護措置を施された状態で保存されるものもあります。また保存状態によって、その寿命は大きく異なってきます。

 アメリカ空軍のデイビスモンサン空軍基地(アリゾナ州)には、広大な砂漠を利用した世界最大規模の航空機保管庫があり、数千機の航空機がモスボールされています。その大部分は廃棄を待つことになりますが、状態の良いものは部品取り用に、あるいは数十年の眠りを経て現代の技術を用いてリフレッシュされ、再び空を飛ぶものも存在します。

 たとえば2024年現在、アメリカ陸軍で現役のCH-47「チヌーク」ヘリコプターの多くは1960年代から70年代にかけ製造された機体であり、10年以上のモスボールを経た後に機体構造まで完全分解され、新しいエンジンや電子機器を搭載し再生、現役復帰させられたものが多くを占めます。

 モスボール機のリフレッシュは安く上がるように思えますが、実際は1機あたり数十億円に達し、「新造するよりかはいくらか安い」程度になってしまうことも少なくないようです。

 また2022年から続くロシアによるウクライナ侵略戦争においても、モスボールから再生された戦闘車両が数多く実戦投入されていることが確認されています。その中には1950年代に開発された古いT-54戦車も含まれているとされています。

 こうした旧式戦車の復活には数億円が必要であり、新型戦車でも10億円程度であることを考えると、かなりコストパフォーマンスの悪い選択であるといえるでしょう。しかし、戦時のロシアにおいては多少、高くついたり古かったりしても、ないよりは遥かにマシであり、早期に数をそろえたいという差し迫った状態をうかがい知ることができます。

 いずれの場合にしても、モスボールされる期間はせいぜい数十年といったところが現実的な期間です。数百年、数千年の保管となると、現代の技術水準で復活させるのは難しいと考えられます。