垣根涼介の歴史小説を、大泉洋主演で映画化した『室町無頼』(1月17日公開)。このたび大泉演じる主人公、蓮田兵衛のキャラクタービジュアルが解禁された。
時は室町、応仁の乱前夜の京では、大飢饉と疫病の連鎖により、路上には無数の死骸が。そんな混沌の世の中に風のごとく現れ、巨大な権力に戦いを挑んだ者たちがいた。本作では日本史上、初めて武士階級として一揆を起こし、歴史にただ一度だけその名を留める男、兵衛と彼の下に結集した「アウトロー=無頼」たちの知られざる闘いがドラマチックに描かれる。
己の腕と才覚だけで混沌の世を泳ぎ、密かに倒幕と世直しの野望を抱く無頼漢で剣の達人、兵衛を演じるのは、いまや国民的スターとなった大泉。周囲を惹きつける吸引力を持つキャラクターは、まさに彼のハマり役だ。さらに剣の達人役として本格的な殺陣やアクションに初挑戦するなど、50歳を迎えた大泉が兵衛というキャラクターにエネルギッシュに命を吹き込み、“大泉史上最高にカッコいい男”を演じきっている。
兵衛に拾われ、身も心も成長する才蔵役に抜擢されたのは、なにわ男子の長尾謙杜。その才蔵に棒術を教え込む老師を柄本明が、民を虐げ、贅沢にふける有力大名、名和好臣を北村一輝が、高級遊女にして、男たちの間を漂う絶世の美女、芳王子を松本若菜がそれぞれ演じている。そして300人もの荒くれ者を抱え、幕府から今日の治安維持と取り締まりを任される悪党一味の首領、骨皮道賢に扮するのは堤真一。兵衛とは悪友であり、宿敵ともなっていく複雑な関係性を見事に表現している。
原作は昨年、「極楽征夷大将軍」で直木賞を受賞した垣根の同名小説。監督を務めるのは『22年目の告白―私が殺人犯ですー』(17)や『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』(23)、『あんのこと』(24)など、濃密な人間ドラマをエンタメに昇華させてきた入江悠。憧れだったという京都で撮影に飛び込み、伝統ある京都撮影所の職人たちとともに、新時代の本格アクション時代劇を完成させた。
すでに解禁となっている映像では、鬼気迫る表情で迫力の剣術アクションを見せる姿が話題となった、大泉演じる兵衛。今回、己の腕と才覚だけで混沌の世を泳ぎ、ひそかに幕府討伐と世直しの野望を抱く兵衛が、そのただならぬ風格をにじませて不敵な笑みを浮かべるキャラクタービジュアルが解禁となった。
演じた大泉が「一本筋が通っていて心に熱い信念を持った兵衛は、僕自身も憧れるような人です」と語る兵衛は、荒廃した世の中に倒れる貧しい人々に目を向け、共に戦う仲間想いな人物でありながら、一方では、その圧倒的な剣の腕で、気に食わない者は容赦なく斬り捨てるような非常な一面も持つ。
大泉は「非の打ちどころのないヒーローではなく、無頼というぐらいだから、悪いこともいっぱいしてきたんだろうなと思わせる、どこか異様なイメージ。だけど実は、ものすごく熱いものを持ってるという人」と自身のキャラクターについて語る。「“正しい男”というよりかは、どこかずるいこともしている。むしろお金とかも盗んじゃったりとかするけど、筋は一本通っているという。その感じが本当にかっこいいですよね」と惚れ込んだこの“無頼漢”を、大泉ならではの圧倒的な存在感で見事に兵衛を演じ切ったことが、ビジュアルの兵衛の眼差しからもうかがえる。なお、今回の写真は『八犬伝』(公開中)や『レジェンド&バタフライ』(23)など多くの時代劇作品でも活躍するヘアメイクディレクターである酒井啓介が撮影したものを使用した。
「この男から戦国時代は始まった。」と記された通り、歴史を動かした前代未聞の一揆を率いた実在の人物として、歴史書にはたった一行だけ名を刻む兵衛。これまであまり映像として描かれることのなかった室町の暗黒時代に、「無頼」である兵衛の魅力とカリスマ性が当時の人々の心を動かしたように、映画を観る者すべての心を動かすこと間違いなしだ。
兵衛が、「この世に銭よりもっと動くもの。それは何だ」と問う本作。いまを生きる我々も知るべきこの答えは『室町無頼』から紐解かれるはず。どん底から勝率ゼロを覆す「無頼」たちの知られざる命がけの戦いに乞うご期待。
文/山崎伸子