日常のストレスとPMSのしんどさは相関関係あり…⁉
取得率が低迷する背景や、休暇を取りづらい雰囲気を助長させているものは何なのだろうか。女性の労働とライフワークバランスに詳しい近畿大学経営学部の松原光代准教授に話を聞いた。
「男性上司に言いづらかったり、性別的な違いを理解してもらいづらいっていうのも背景の一つにあるのかもしれませんが、それ以上に、取得しない理由の上位に『周りに迷惑がかかるから』っていうのがあるんです。それって育休や介護休暇、有給が取りづらいっていうのと同じで、背景には職場の人手不足や過重労働、長時間労働の問題があるんです。
実際に、生理前にイライラしたり落ち込んだりといった月経前症候群(PMS)のしんどさは、普段のストレスや疲れ、睡眠不足と相関関係があることが近年の研究データで明らかになっています。なので休暇を取ることを推進するというより、そういうストレス過多な職場環境を整えていくことの方が大事だと思います」(松原さん、以下同)
また取得率0.9%という数字についても松原さんはこう話す。
「在宅勤務の導入など多様な働き方が進んだ面も大きく寄与してるんではないでしょうか。また日本は未だに有給休暇の取得率が低いんです。『万が一のために取っておく』という。そうすると、生理痛などの体調不良時に、生理休暇ではなく、給料の発生する有給休暇を先に取得している方も多いと思います。
ただ、有給休暇って心身のリフレッシュのために整備されている休暇なのに、それが“万が一利用”されていることにも問題がありますけどね」
一方、休暇が取りづらい会社にいる限り、社員一人の力ではそのような社風や雰囲気を変えることは難しい。そうなると転職が視野に入ってくるのが自然な流れだ。
「これだけ人手不足で、人材を確保することが難しくなっている時代に、社員が健康で働ける組織づくりは、事情を円滑に運営する上でも大事な戦略であり、経営課題だと思うんですよね。そういう認識を社会的に広げていくことが大切であり、健康経営は社会的な潮流でもあります。
人は健康的に働ける職場に自然と移っていくものなので、仕事のためなら健康を厭わないようなマッチョ軍団のような会社はいずれ淘汰されていくと思います。
生理休暇自体は保険としてあることは大事ですが、まずフィジカル面でもメンタル面でも『しんどすぎる』状況を作らないことが大事であって、社員は健康的に働ける場所へ、そして経営者は危機感を持って健康経営に取り組んでほしいと思っています」
取材・文/木下未希 集英社オンライン編集部