森田剛、『雨の中の慾情』で成田凌による迫力の演技にシビれる!「すごく刺激的で、感動した」

映画『雨の中の慾情』の公開記念舞台挨拶が11月30日にTOHOシネマズ日比谷で行われ、成田凌、中村映里子、森田剛、竹中直人が出席した。


『雨の中の慾情』の公開記念舞台挨拶が行われた
長編映画デビュー作『岬の兄妹』(18)で日本映画界に衝撃を与えた片山慎三監督が、今年デビュー70周年を迎える伝説の漫画家、つげ義春の短編漫画を映画化した本作。2人の男と1人の女のせつなくも激しい性愛と情愛が入り交じる、独創性溢れる数奇なラブストーリーだ。劇中のほとんどのシーンを台湾にて撮影。昭和初期の日本を感じさせるレトロな町並みが多い台湾中部の嘉義市にてオールロケを敢行した、情緒あふれる映像世界も大きな魅力の一つとなっている。


「お疲れ様です」と声をかけた成田凌
売れない漫画家の義男を演じた成田は「この日を心待ちにしていました」と会場を見渡し、「いざ今日は、これで皆さまのものになるんだと思うと不思議と寂しい気持ちになっています」としみじみ。「昨日から熱い感想をいただけて、すごくいい映画ができたんだな、よかったなという気持ちです」と喜びをにじませた。この日は上映後の舞台挨拶となり、「観てくださった後の空気は独特。お疲れ様です」と声をかけて、会場を盛り上げていた。


小説家志望の男、伊守を演じた森田剛
片山監督は何度もテイクを重ね、そこから生まれるものを撮り上げていくという。成田は「伊守から『いい顔をするねぇ、義男くんは』と言われるんですが、台本を初めて読んだ時に『いい顔をしなきゃ…』とすごく考えた」と森田演じる小説家志望の男、伊守とのシーンでたくさん悩んだことを回想。「リハーサルをしてテストをして本番、本番、本番…と全部迷って、全部違う顔をしていたと思います。片山監督は全部のシーン、10回くらいやるんですが、その10分の1が使われているという感じです」と明かす。対峙していた森田は「なんとも言えない顔をするんですよね。毎回顔が違いましたし、すごく楽しかった」と話していた。


片山監督の才能について、驚きを口にした中村映里子
またロケーションやセリフ、動きや小道具などあらゆる点において、片山監督が驚くようなアイデアを日々取り入れていく撮影だったとキャスト陣は口を揃えた。未亡人の福子に扮した中村は「想像していたものよりもすごいものができる。監督がどんどん、いろいろなことを思いつく。監督の頭のなかはどうなっているんだろうと不思議で、興味深かった」と片山監督の才能に惚れ込んでいる様子で、森田も「何回もテイクを重ねていくので、だんだん馴染んでいく。なにをやっているかわからなくなってきて、そこからにじみ出るものを撮ってくれる。そういう信頼関係のもと、やらせていただきました」と充実感を握りしめていた。


笑顔で撮影を振り返った
「誰も観たことがない愛の物語」という本作のキャッチコピーにちなみ、見たことがないようなお互いの姿を発見したエピソードを語り合う場面もあった。中村は「森田さんは現場ですごく静かにしている」と明かしつつ、「『楽しいのかな』と思っていたんですが、ある日台湾のスタッフの方がいろいろなお料理を作ってケータリングで出してくださった日があって。鶏を丸ごと煮込んだお料理があった。(共演者の)松浦祐也さんがニワトリの頭を『丸ごと食べてみる』と言った時に、森田さんがとっても楽しそうにしていた。森田さんってこんなに大きな声で笑うんだと思った」と少年のように大笑いしている森田の様子を目にしたという。会場が笑いに包まれるなか、「たしかに!」とうなずいた森田が「ずっと楽しくなかったんですが、その時は本当に楽しかった」と素直に打ち明けると、会場は大爆笑だった。

森田は「成田くんと病室のシーンがあって。成田くんが横になっていて、頭を打ちつけるシーンがあった。実際に頭を床にガンガン打っていて、『もういいだろう』『そんなに打ち付けなくても』と思っていた。ギリギリのところを行く人で、すごく刺激的で、感動したのを覚えています」と成田による演技の迫力にシビれたと告白。「現場でよく口笛を吹いてしまう」というのが、大家の尾弥次役の竹中だ。竹中は「剛が、僕の口笛をうるさいと思っていたということを後から知った。それが自分のなかに残っています」とぶっちゃけ。森田は「ずっと吹いていらっしゃった。うるさいなと思っていたんですが、ずっと台湾と口笛が残っていて。いまでは感謝しています」と台湾の風景とマッチした音として残っていると、目尻を下げていた。


つげ義春の大ファンだという竹中直人
ステージでお茶目な表情を見せていた竹中は、つげ義春の原作を元に映画化した『無能の人』で監督、主演を務めたこともある。「20歳のころにつげさんの作品を知り、それから大ファン」だという竹中だが、「片山監督は、自分の作品で助監督をやってくださったこともある。今回、自分を呼んでくれたことがとてもうれしかった」と感激しきり。つげ作品のエッセンスがたっぷり詰まった本作を観て、「発見が自分のなかでいくつもあった。当時読んでいたまだ20歳の自分。まだ髪の毛がいっぱいあったころの自分が、つげさんの漫画のページをめくっていた時を思いだした。とてもステキな映画だった。参加できてうれしかった」と想いをあふれさせていた。

取材・文/成田おり枝