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ネット保険の台頭により、従来の対面契約型の生命保険会社は苦戦を強いられている。

そんな中で相変わらず「ノルマ」という呪いをかけられた外交員たちの中には、「ノルマ達成のためには手段を選ばない」という者も少なくない。

そこで生保業界のウソのような本当の話を紹介しよう。

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老舗に数えられる某生保会社の外交レディだった元木弥生さん(仮名・28歳)は、今年になって「妊活」を理由にブラックすぎる会社を「ようやく」退社できたという。

彼女の内部告発を聞いて欲しい。

「もともとわが社はノルマがきついことで有名でしたが、ネット保険にお客様が流れたり、コロナ禍で対面契約が自粛されたことでかなり追い詰められたみたいで、コロナ明けからノルマが倍増されました」

ノルマを達成できないと「業務指導」という名目で上司に呼ばれ、時に人格否定にも等しいようなお説教を延々と受けるという。

「お説教という名のパワハラとモラハラが終わると、大口の顧客を紹介されます。そうした企業に出向いて『新規のお客を紹介してもらえ』ということなんです」

「出向く」と言っても通常の営業スタイルではなく、有休か業務時間外に先方に行って雑用や使い走りのようなことをやるらしい。

「男性ですと休日を返上して、先方の会社のBBQ大会の手伝いをした人がいました。設営・調理・片づけで全身が筋肉痛になったそうです。草野球大会の助っ人に駆り出されて腕を骨折した人もいます。毎晩のように先方の社長の送迎ドライバーをやらされている人もいますね。社長が夜遊びしている間ずっと待機しているんです。ガソリン代は支給されるとえはいえ、睡眠時間がなくなります。他にも、子供のおもちゃを買うためとか、イベントの場所取りのために夜中から並ばされたりとか、完全に便利屋化してますよね」

ノルマを達成すれば旅行やブランド品も支給

これが女性社員の場合だと、家事や介護の手伝いなど、ヘルパーのようなことをやらされたりするらしいが、やはりメインは「枕営業」だという。

「生保レディのこうした営業ぶりを都市伝説のように考えてる人もいるみたいですけど、これはガチです。会社から要求されるんですよ。しかも、その女性の年齢とか容姿によって会社が接待相手を振り分けるんです。若くて美人なら、超大口顧客という感じですね」

ちなみに、これを拒否することは「重大な規約違反」又は「業務妨害」「背信行為」として処罰の対象になるというから恐ろしい。

「もっと怖いのはそうした業務を遂行したからと言って、ノルマを達成できるほどの契約を必ずもらえるとは限らないということです。『なんで、こんなことをやらないといけないの!?』と泣いている人もたくさんいましたし、『そんな会社辞めればいいのに』って思われるかも知れないけど、生保レディにはシングルマザーも多いし、みんな生活がかかっているんですよ」

ただ、無事にノルマを達成したときの見返りは大きいという。

給料に反映される歩合に加え、旅行やブランド品なんかのご褒美が支給されることもあるようだ。

もちろん、こうした実情は一部の生保会社の話ではあるが、社会全体がコンプライアンスを重視する時代において、完全にアウトだろう。

「うちの会社にも一応、コンプライアンス相談室はありますよ。まったく機能していませんが…。労基? そんなもの役に立たないですよ。労基の組織の中にうちの会社の息がかかった人間が何人いると思います? 労基の人間を接待することだってあるんですよ?」

生保会社の闇は思っていたより深いようだ。

取材・文/清水芽々

清水芽々(しみず・めめ)
1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。『壮絶ルポ 狙われるシングルマザー』(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。