高騰が収束する日は来るのか⁉
また若い頃からウイスキーを欠かすことがなかったという都内在住のサラリーマンは、「ビンテージウイスキーはうまいですけど高すぎるので、ブランデーを飲むようになりました」と告白する。
「ここ数年でブランデーに流れている人も多いですよ。結局、毎日、熟成した酒を飲みたいですから」(ゴールデン街に通う40代)という。
国内の状況とは反対に、円安を背景に派手にビンテージウイスキーを注文する外国人観光客が増加中だ。
「比較的ビンテージが揃っているホテルのバーなんかに行くと、外国人観光客が高いジャパニーズウイスキーをガンガン飲んでいますね。特にアジアの富裕層たちがお金に糸目をつけずオーダーしています。ボトルを買おうとしたり……。うらやましいですね。日本人が日本のお酒を飲めないなんて、ウソでしょ」(60代の塾講師)と嘆く。
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高騰はいつ落ち着くのか?
前出の土屋守氏によると、高騰の影で喜ばしい兆しも現れているという。
「2022年の日本産ウイスキーの輸出金額は過去最大の561億円で、そのうち200億円強は中国への輸出でした。彼らにとって日本のウイスキーは投資の対象であり、高騰の一因にもなっていました。
しかし中国経済の低迷により2023年の輸出金額は132億円と、61億円も落ちています。そして今、中国では、ものすごい勢いでウイスキーの蒸留所がつくられ、計画段階を入れると40ヵ所、すでに製造開始しているところが25、26ヵ所あります。
それらの商品が市場に出回りはじめ、以前ほど日本のウイスキーに対する信仰心が薄くなってきています」
最大の輸出先であった中国のジャパニーズウィスキーへの憧れが、このまま落ち着けば、近い将来、昔のようにもっと気軽に楽しむことができる日が来るかもしれない。
取材・文/集英社オンライン編集部 写真/わけとく
<プロフィール>
土屋守(つちや・まもる)
1954年生まれ新潟県佐渡出身。ウイスキー評論家、ウイスキー文化研究所代表、ウイスキー専門誌「ガロア」編集長。NHK朝の連続テレビドラマ「マッサン」のウイスキー考証の監修を務める。1998年、世界のウイスキーライター5人に選出。「完全版 シングルモルトスコッチ大全」(小学館)をはじめ著書&監修多数。