料理の投稿で大切なのは再現性の高さと彩りの良さ、そして時々失敗作
――そもそもおふたりがSNSに投稿を始めたのはどのようなきっかけなのでしょうか?
りよ子 仕事が忙しくてしんどい時期に、仕事以外で社会とつながりを持てる場所がほしいなと思って始めました。鍋料理も好きなので、実は少しだけ鍋を投稿していた時期もあるんです。でもしっくりこなくて。それでちょうどせいろにもハマっていて、レシピを調べたりしていたんですが、点心などせいろを使った中華のレシピはあっても、私がやりたい日常系のせいろ料理を発信している人はいなくて。それで始めました。
Hideka 私はどちらかというと作った料理の記録用として始めました。料理ってけっこうエネルギーがいるので、せっかく頑張って作ったならそれを残しておきたいなと思って。なので最初は、自分の作りたいものを作って載せていただけだったんですが、やっぱりそれだと同じ料理が続いて見ている側は飽きてしまうので、次第に同じメニューばかりにならないようになど、考えるようになりました。あと彩りが大事だと気づき、赤、緑、黄色が揃うように意識するようにもなりました。
りよ子 私も自分でリアルに食べるごはんよりも、見栄えがいいものを選んでアップしています(笑)。まだ投稿が少なくて誰にも見られていなかったころって、ただ冷蔵庫にあるものを蒸していたので、あまり写真映えしていなかったんです。でもフォロワー数が1万人を超えたぐらいからは、彩りを意識するなど、おいしさだけでなく見せ方も考えるようになってきました。
Hideka 私も1万人ぐらいになったときから意識が変わりました。地味なごはんは載せられないなって思って、少しだけ前よりも頑張るように(笑)。なので失敗したものはあまり載せないようにしているんですが、いまはストーリーズにたまに載せていますね。コメントでも時々言われるんですが、親近感を持っていただけた気がします。
りよ子 私もフォロワーさんが増えてきたばかりのころは失敗を気にしていましたが、途中から多くの方に見ていただいているっていうこと自体に慣れてきて、妙に凝ったものではなく等身大のものを載せられるようになりました。
Hideka あとは、フォロワーさんが実際に作ることを意識して、マネしやすさを考えるようにもなりました。簡単に作れて、誰でも再現できるレシピにすること。
りよ子 フォロワーさんが再現できるかどうかってすごく大事ですよね。特殊な調味料や食材ではなく、誰もがスーパーで買えるものを使うようにしたりしています。
――ビジュアル面で大切にしていることはありますか?
Hideka 私はリール動画とフィード投稿の両方をあげていて、リールは視覚的にわかりやすくすること、フィードはレシピとかゆっくり見たいものを紹介するという形で使い分けるようにしています。
りよ子 私は、とにかく「せいろってすごく簡単に使えるんだよ」っていうことが伝わる構成にすること。食材を切って、ぽんぽんぽんってせいろに入れて、火にかけて放置して、フタを開ければ完成っていう、「めっちゃ簡単だよ」っていうのを全力で伝える動画にしているつもりです。
Hideka そもそもおぼんって細々したものがひとつにまとまるっていうのが利点なので、少し小さめのお皿を使うようにもしています。大きいお皿だとおぼんを使う意味があまりないなと思うので。あと、副菜は1、2分で作れるものにすること。電子レンジを使ったり。
――おふたりは、そういったレシピをどのようにして作っているんですか?
りよ子 大きく分けて、普段のごはんでおいしくできたものがあったらそれを投稿するパターンと、外食をしたときにユニークな食材の組み合わせに出合ったら、それをせいろでも試してみて投稿するパターンがありますね。
Hideka 私も、レストランの料理やデパ地下の惣菜とか、そういったところから食材の組み合わせ方を学んでいます。そこに自分なりのアレンジを加えるようにしていて、私だったらあの食材を足すかなとか、こういった味付けにしたほうがおいしそうだなとか考えます。
りよ子 お風呂に入っているときなどにアイデアを思いつくことも多いですね。缶詰やレトルトカレーをせいろで温めるというアイデアは、まさにそうやって思いつきました。これをやったらどうなるんだろう?っていう好奇心でいろんなものにチャレンジしています。
――試したけれどイマイチだったものはありますか?
りよ子 生サバは、そのまませいろに入れて蒸すだけだとくさみがあって失敗しました。あとは生麺タイプのラーメン。これも、そのまま蒸すとゴムみたいな食感になっちゃって、これはダメだなと。それと、書籍にお餅のレシピを載せているんですが、最初に試したときはでろでろに溶けちゃって……。何度か挑戦してちょうどいい蒸し時間を見つけました。
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なぜ令和のいま「せいろ」と「おぼん」がブームに?
――無印良品でせいろが品切れになったり、定食カフェ「おぼんdeごはん」がレシピ本を出したりと、「せいろ」と「おぼん」がいまブームになっていますが、本来はどちらも昔からあるアイテムです。なぜいま注目されていると思いますか?
りよ子 ここ数年、「丁寧な暮らし」というものが流行っていて、実際、SNSではそういったテーマで発信している人も増えています。せいろやおぼんは、その一部として取り入れやすいアイテムのような気がします。
Hideka せいろ料理は油をあまり使わずヘルシーですし、昨今の健康意識の高まりとも相性がいい気がしますね。
りよ子 SNSのコメントを見ていても、ヘルシーさに惹かれている方はけっこういますね。あとは、「調理もお手入れもラクそう」というコメントもあります。そして意外なところだと、「楽しそう」って言われることも。作った料理をただお皿で食べるんじゃなくて、せいろだったりおぼんだったり、何か違う要素が加わることで楽しく感じるのかもしれないですね。
Hideka ワクワク感が生まれるのかも。
――そんなおふたりが次に挑戦したいことはありますか?
りよ子 発酵料理ですね!
Hideka ブームがきていますよね!
りよ子 ですよね! 麹とか、味噌とか。Instagramにも麹調味料を手作りしている動画があがっているので、やってみたいなって思います。2025年には必ず挑戦しようと思います!
Hideka 私は、りよ子さんの書籍にもあった、同時に2、3品作れる料理を研究していきたいなと思っています。時短にもなりますし。
りよ子 料理以外だと、オフラインのイベントを企画できたらいいなって思っています。直接フォロワーさんにお会いする機会を作りたいです。
Hideka 私は2年前くらいから思ってるんですが、自分のオリジナルのブランドを作ってエプロンをプロデュースしたいなって思っています。お気に入りのエプロンがあったらもっと料理が楽しくなると思うので。シンプルで着やすくて、軽くて料理もしやすいものを考えたいです。
――最後に、今回作った書籍をどんな方に届けたいか教えてください。
りよ子 本の「はじめに」にも書いたんですが、仕事が忙しかったときにせいろにめちゃくちゃ癒された経験があるので、「忙しくて毎日コンビニ飯とかお惣菜とか食べています」っていう方に手に取っていただけたらと思いますね。
せいろは本当に調理もお手入れも簡単なので。これだけで生活ががらりと変わるのでおすすめです。自炊のハードルって意外と低いんだと感じてもらえると思います。丁寧に暮らしている気分にもなれて心にもいいですし。
Hideka 私は、夫の喜ぶ顔が見たくてご飯を作っているところがあって、今回の本も大切な人のために作りたくなるレシピが多いんです。なので、誰かにおいしい料理を作ってあげたい人、そして自分のためにおいしい料理を作りたい人に届けたいですね。簡単なのに、感動するほどおいしいレシピがたくさんあります。