かつて太陽系を探査したパイオニア10号、11号にはメッセージが書かれたプレートが、ボイジャー1号、2号には、さまざまな言語での挨拶や動物の鳴き声などを収録したゴールデン・レコードが搭載されています。これらはいずれも、いつの日か遭遇するかもしれない地球外生命体に向けたものでした。
NASA(アメリカ航空宇宙局)が2021年10月打ち上げを予定しているルーシー(Lucy)探査機にも、同じようなプレートが搭載されます。ただしルーシーは太陽系外に出ることはありません。搭載されるプレートは、私たちの未来の子孫へのメッセージを込めたタイムカプセルになっています。
木星など惑星の公転軌道上で、進行方向の前後60度離れたところに、太陽と惑星との間で重力のバランスが取れて安定する領域があります。木星ではその領域に多くの小惑星が発見されており、「トロヤ群小惑星」と呼ばれています。ルーシーは、そのトロヤ群小惑星の観測を目指す初めての探査機です。
トロヤ群小惑星は、惑星の形成と進化の「化石」であることから、探査機の名称は「ルーシー」と名付けられた人類の祖先の化石に敬意を表して付けられました。そして化石のルーシーは、ビートルズの曲「Lucy in the Sky with Diamonds」にちなんで名付けられたものでした。
ルーシーは2033年までに8つの小惑星の探査を終えた後、数十万〜数百万年にわたり、トロヤ群小惑星と地球の軌道の間を旅しつづけることになります。遠い未来、私たちの子孫が惑星間を漂っているルーシーを発見する可能性は大いにあります。そこでルーシーのチームでは、探査機にタイムカプセルとなるプレートを搭載し、未来の子孫へ向けたメッセージを送ることにしました。そのプレートが2021年7月9日に探査機に取り付けられました。
こちらがルーシーに取り付けられたプレートです。プレートには20人の著名人の言葉が刻まれています。アメリカの詩人のほか、アルバート・アインシュタインやカール・セーガンなどの科学者、ビートルズのメンバーなどが名を連ねています。書かれている言葉は、ルーシー・ミッションのウェブページで見ることができます。またルーシーの打ち上げ予定日である2021年10月16日の太陽系のようすや、ルーシー探査機の軌道も描かれています。
ルーシーミッションについて詳しくは以下の記事をご覧ください。
木星のトロヤ群小惑星を目指す探査機ルーシー
Image Credit: Southwest Research Institute
(参照)NASA、Lucy Mission