開店から10カ月経って、ようやく手応えを感じられるように
mani maniの店内。木やグリーンの温かみにあふれた、みんなの居場所です。
――mani maniがオープンして10カ月ほど経ちました。ターゲットとなる子どもたちや保護者は、お店に来てくれるようになりましたか?
伊藤 手応えを感じるようになったのはつい最近のことです。開店当初は知り合いや関係者、教え子が開店祝いがてら来てくれましたが、お客さんはあまり来なくて、悩んだこともありました。私たちはごはんやドリンクをつくる仕事じゃなくて、子育て相談をしたくて始めたはずだったのにおかしいな……と(笑)。
もしかして、私たちのやりたいことは世の中のニーズとはズレてるのかなと複雑な思いにもなりました。2人でいくら話しても結論が出ず、長いトンネルの中にいる気分でしたね。
9月ごろからだんだん潮目が変わってきました。「いつかmani maniに行きたいと思っていて、今日勇気を出して来ました」と言っていただいたり、たまたまランチを食べに来たら相談できることが分かってそのままお話ししたり、お友達に紹介してくださったり、ということが多くなったんです。ようやく、mani maniを必要としてくれている人たちにたどり着けたんじゃないかという感触があります。
川崎 最近は、売り上げは少なくても、本来私たちがやりたかったことに近づけてきた感じがしています。オープン前は2人で「mani maniがすぐ大人気になっちゃったりして!」なんて言い合っていたんですけど(笑)。かつて小学校に勤めていたときは、何もしなくても当たり前ですけど毎日子どもたちが集まってきたので(笑)。お客さんを呼ぶというハードルをつくづく感じています。
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経営なんて全然わからないのに、カフェを始めちゃった
――mani maniを経営するうえで、難しさを感じている部分はありますか?
川崎 いちばんは、mani maniのコンセプトをうまく伝えられないことです。子育て相談を全面に押し出すと、そうでない人が来にくくなってしまいそうですが、でも何も発信しなければ誰にも伝わらない。言葉の選び方や発信方法が本当に難しくて。毎日、このせめぎ合いです。
伊藤 ただお店を開いて待っているだけでは来てもらえない。かといって、デリカシーなく「困ったら、来てね!」と呼ぶのも憚られる。伝え方についてずっと2人で相談しています。ニーズがあることと、私たちがやりたいことと、そしてできること。3つの円が重なる部分を、試行錯誤しながら探しています。
川崎 ニーズでいうと、不登校支援は想像以上に求められているんだなと感じますし、一生懸命それに応えている状態です。1人で全部やれば自由度は高いけど、どうやったらいいか全然わからなかったはず。いつも伊藤さんと相談し合って判断できるので、2人でやっていて本当によかったと思います。
伊藤 私たち、経営のことなんて全然わからないのにmani maniを始めちゃったみたいなところがあります(笑)。売り上げの目標もとくにありません。我ながら、まっしぐらに向かう先のゴールがないのに、よくやっているなと思います(笑)。
川崎 お店の名前につけた「mani mani」は、「なるようになる、なるようにしかならない」という意味。まさにそのとおりの経営スタンスですね。多分、あんまり儲からないんだろうなあということだけはわかっています(笑)。