ついに来た。来なくてもいいのに来た。闇バイトの誘いが。まったくもって、うんざりする。本来であれば、こんな誘いはスルー。というか、無視が鉄則。絶対に乗ってはいけない。
だが、勧誘の手口を明らかにすることで注意喚起になるかも……闇バイトに応募する人が減るかも……と思い、あえて途中まで乗ってみることにした。
【写真】「ご安心くださいませ」のあとに続く日本語が不自然で全く安心できない
・こうやって誘われた
ある日のこと、私のスマホにこんなメッセージがSMS経由で届いた。
スマホで簡単な操作をしたら日給1〜5万円。怪しすぎる。送信先からして怪しい。この時点でもうクロだろ。ご丁寧にLINEのIDなんか書いてあるが、誰が検索するんだよ。
──と思ってしまうが、実際に飛びついてしまう人がいるから事件だって起きている。無視したい気持ちはヤマヤマだが、ここは犯人の手口を白日の元にさらしてやろう。
というわけで、SMSに記載のIDで “友だち検索” してみた。すると……
和服姿の女性が出て来たではないか。見たところ、年齢は20〜30代くらい。
これは恐らくハニトラ的な釣り針も仕掛けられているのではないか? 「よっしゃー!! キレイな女性のLINEのIDゲットしたぞーーー!!!!!」と思わせて “友だち追加” させるみたいな。
事実、私も詐欺だと分かっていながらテンションが上がった。イカン。仕事だ仕事、と気を引き締めていたら、「友だち追加」から2分くらいで女性が自己紹介。展開が早い。
どうせ偽名だろうが、「久岩田絵里奈」というらしい。ちなみに、LINEは「岩田絵里奈」で登録されていた。
とにかく、絵里奈だ。そして、この絵里奈が最終的に有名暴力団の名前を出したことで、調査が中止に追い込まれることになる。では、一体なぜそうなったのか?
正直なところ私のミスもあるのだが、起こったことをありのままに報告しよう。
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・狡猾な誘導
さて、絵里奈がまずやったのは、私にPayPayのアプリを開かせることだった。といっても、直接「PayPay開いて」と言ってきたのではない。絵里奈はまず、こう言ってきたのだ。
読んでもらえばわかるように、絵里奈は私を「動画視聴」の方に誘導している。それはもう明らかな誘導だ。選択肢を2つ提示しておきながら、「動画視聴」の方の滑走路にはライトをキラキラと点灯させて、「手作業」の方の滑走路はノーライト。
どう見ても「動画視聴」の滑走路に着陸させようとしている中で、「じゃあ手作業で」と言ったらどんな反応を示すのか? そこがメチャクチャ気になったが、今回はあえて絵里奈の誘導に乗ってみる。
そしたら……
YouTubeを見てスクショを送ったら150円あげると、絵里奈は言う。そういえば、以前に当サイトで「インスタDMで稼げるパターン」や「Amazonの商品をカートに入れるだけで稼げるパターン」を紹介したが、今回はYouTubeの動画視聴のようだ。
そして今回も、報酬の支払いはPayPay決済。つまり、動画視聴という名の仕事が終わったらPayPayのアプリを開くか、何らかの個人情報を教えるように誘導されるのだろう。怖すぎるぞ、絵里奈。
ちなみに、実際にYouTubeを見てみると、誰かが福島旅行をしている様子が紹介されていた。動画の制作者は犯罪組織と無関係な可能性が高いのでボカシをかけておくが、とにかくごく普通の旅行動画である。
見終わったところで、絵里奈にスクショを送る。ここで、絵里奈が示したのは……
またしても2つの選択肢。報酬を受けとるのはPayPayか、それとも銀行口座か。どっちも絶対に教えたくないが、2つの選択肢を与えることで安心感を与えようとしているのだろうか?
というか、さっきはPayPayだけだったのに、いつの間にか銀行口座も選択肢に入っているのはどういうことだ?
どう返していいか分からなかったが、とりあえず「PayPay」と返事をしたらリンクが送られて来た。
PayPayのアプリが閉じていることを確認した上でリンクを踏んでみると、たしかに送金されたかのような画面が。
しっかり確認するためにはPayPayを開いた方がいいんだろうけど、絶対に開きたくないな〜と悩んでいたところで、絵里奈から追撃のメッセージが届く。
この副業プランに加入している人は平均して毎日5000〜5万円稼ぐらしい。んなわけないだろうと思いつつも、またしてもあえて乗る。
すると絵里奈は「仕事を正式に始めるにはアカウント登録せよ」と言う。
「絶対にイヤです」という気持ちを押し殺して先に進めると、次に誘導されたのは「MHTIN TUP」というサイトだった。
知らんぞ、こんなサイト。でも、とりあえず普段は絶対に使わないようなユーザー名やパスワードを入れて登録だけ済ませるか……と思って進めたものの、全く先に進めないのである。
──と、そのとき!
思い出したのだ。当サイトで先日公開した「闇バイトについて潜入調査中のベテラン迷惑メール評論家が感じた知の格差」に、「思い通りに動かせる本当に本当のバカにしか対応しない絶対的ルールみたいなのが出来上がっている」と書かれていたことを。
つまり、相手に「すげーバカ」と思われてないと逃げられるのではないか? 「普通にやり取りできる」と思われたら、調査としては逆効果なのではないか?
でも一体どうすれば……
……
……
せや!
絵里奈をナンパしよう!
そうすると、向こうは「こいつめっちゃバカじゃん」と思うと同時に、「いいカモ来たで」となるのではないか?
結果的に、相手は闇バイトへ勧誘する手口をバンバン出してくるのではないか? あわよくば、相手に直接会って話を聞けるのではないか?
──と思った私は、相手と外で会う方向に持っていくことにした。その結果は……以下の通りだ。
ご覧のように、絵里奈は私を完全にスルー。それどころか、「アカウント」と一言だけ発したところではややキレている。
おそらく、絵里奈は揺れている。「マジでこんな人間を相手にしたくねぇ」という気持ちと「めっちゃバカっぽいから楽勝で闇バイトに引き込めそう」という気持ちの狭間で。
だからなのか、絵里奈の仕事がいい加減になってきた。たとえば、私が適当に教えたアカウント「iloveyou」に対して……
セットアップは完了したから再度やれ的なことを言ってくる。いや、無理だろ。っていうか、あのアカウント&パスワードをマジで登録したのかよ。