年に一度の“映画の日”と重なった、11月29日から12月1日までの全国映画動員ランキングが発表。前週まで2週連続で首位を守っていた『室井慎次 生き続ける者』(公開中)を退け、見事に初登場No. 1を飾ったのは、藤井道人監督と横浜流星がタッグを組んだ『正体』(公開中)だ。
■はやくも国内映画賞で注目の的!『正体』が堂々1位に初登場
脱走した死刑囚の“正体”を、彼を知る4人の視点から描くサスペンス / [c]2024 映画「正体」製作委員会
全国344館で公開を迎えた『正体』は、初日から3日間で観客動員16万6000人、興行収入2億200万円を記録。数字の上では、最終興収30億円を記録して藤井監督の作品で最大のヒット作となった『余命10年』(22)の初動成績(動員22万8000人、興収3億円)には届かなかったものの、動員ランキング初登場1位は同作でも叶わなかった藤井作品初の快挙。しかもそれが、横浜とのタッグ作で成し遂げられたとなれば、ファンの喜びもひとしおだろう。
染井為人の同名小説を原作にした同作は、タイトルの通り1人の男の“正体”に迫ったサスペンス。日本中を震撼させた殺人事件の容疑者として逮捕され、死刑判決を受けた鏑木(横浜)。脱走した彼は各地を転々としながら、東京では沙耶香(吉岡里帆)と一緒に暮らし、大阪では日雇い労働の現場で出会った和也(森本慎太郎)と親しくなり、長野では介護施設で働き舞(山田杏奈)と出会う。彼ら3人と、鏑木を追う刑事の又貫(山田孝之)の視点から、鏑木の真の目的をたどっていく。
山田孝之、吉岡里帆ら豪華共演陣にも注目 / [c]2024 映画「正体」製作委員会
藤井監督と横浜が初めてタッグを組んだのは、真野恵里菜が主演を務めた『青の帰り道』(18)。その後、藤井監督は『新聞記者』(19)で一躍脚光を浴び、横浜もテレビドラマを中心に大ブレイク。『新聞記者』が最優秀作品賞を獲得した年の日本アカデミー賞で、横浜が新人俳優賞を獲得したというのも縁の深さを感じる。コロナ禍に制作された『DIVOC-12』(21)の「名もなき一篇・アンナ」で再タッグを果たし、『ヴィレッジ』(23)や『パレード』(24)、そして今回の『正体』。他にもMVやCMなどでもタッグを組んでおり、まさに盟友と呼ぶに相応しい間柄だ。
横浜の主演映画が動員ランキングで首位を飾るのも今回が初めて(出演作でも、準主役級のポジションで活躍を見せた『あなたの番です 劇場版』以来だろう)。最終興収9億円を記録した『きみの瞳が問いかけている』(21)のオープニング成績を上回ることにも成功しているようだ。今作の成功は、横浜と藤井監督の“黄金コンビ”を次なるステージへと押し上げてくれることだろう。
【写真を見る】長編映画では4本目のタッグ!“盟友”藤井道人監督と横浜流星の今後にも期待 / [c]2024 映画「正体」製作委員会
ちなみに、先日発表された第49回報知映画賞で『正体』は、作品賞(邦画)と主演男優賞、助演女優賞の3部門を獲得。横浜は昨年の『ヴィレッジ』に続いて2年連続の主演男優賞受賞となった。今後本格化する国内の映画賞レースでも、注目を集める一本となりそうだ。
■『PUI PUI モルカー ザ・ムービー』など2作品も初登場!
さて、ランキングに戻ろう。2週連続で1位だった『室井慎次 生き続ける者』は、週末3日間で動員11万5000人、興収1億4100万円と、前週比80%の動員を維持して2位に。累計成績では動員95万人と、100万人の大台突破も目前。興収は13億円に迫っている。
累計動員100万人到達が迫っている『室井慎次 生き続ける者』 / [c]フジテレビジョン ビーエスフジ 東宝
また、浜辺美波や赤楚衛二ら若手キャストが勢ぞろいした『六人の嘘つきな大学生』(公開中)は、前週に引き続き3位にランクイン。週末3日間で動員7万5000人、興収9800万円を記録しており、累計成績では動員24万人&興収3億3500万円を突破。前週2位の『劇場版「進撃の巨人」完結編 THE LAST ATTACK』(公開中)は4位となっている。
他に初登場作品は2本。5位には、2021年に大反響を巻き起こしたストップモーションアニメをCGアニメ化した『PUI PUI モルカー ザ・ムービー MOLMAX』(公開中)が初登場。初日から3日間の成績は動員4万6000人、興収5800万円。監督を務めたのは、サプライズヒットを記録した『映画すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』(19)のまんきゅう監督で、相葉雅紀と大塚明夫がゲスト声優として参加。今後口コミを中心に話題が広がっていくだろうか。
あのモルカーがCGアニメに! / [c]見里朝希/PUI PUI モルカー製作委員会
また9位には、公開45周年を記念して初のIMAX上映を含むリバイバルがスタートした、宮崎駿監督の名作『ルパン三世 カリオストロの城』(79)がランクイン。通常版の本編後には、2025年に公開が決定している完全新作劇場版『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE(仮題)』の特報ロングVer.が上映。改めてルパン人気の高さを証明する結果となった。
以下は、1~10位までのランキング(11月29日〜12月1日)
1位『正体』
2位『室井慎次 生き続ける者』
3位『六人の嘘つきな大学生』
4位『劇場版「進撃の巨人」完結編 THE LAST ATTACK』
5位『PUI PUI モルカー ザ・ムービー MOLMAX』
6位『WEST. 10th Anniversary Live “W” -Film edition-』
7位『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』
8位『ヴェノム:ザ・ラストダンス』
9位『ルパン三世 カリオストロの城』
10位『海の沈黙』
今週末は、北米で記録的な大ヒットスタートを飾ったウォルト・ディズニー・アニメーションの最新作『モアナと伝説の海2』(12月6日公開)、米倉涼子主演の人気ドラマシリーズ初の劇場版にして完結編となる『劇場版ドクターX』(12月6日公開)、オザキアキラの同名コミックを実写映画化した『うちの弟どもがすみません』(12月6日公開)などが控えている。
文/久保田 和馬