セビージャのヘスス・ナバスは、今年12月末でスパイクを脱ぐことを発表している。11月21日には39歳で、現役選手としての日々は残りわずか。痛みを抱える膝は現役を続けるには限界のはずだが…。
ピッチに立った時のナバスは、今も健在を示す。
先日のレアル・ソシエダ戦、味方選手のケガのアクシデントで前半からピッチに立ったナバスは、右サイドで起点になっている。もはや全盛期の切れはないが、積み重ねてきた技術を輝かせた。ボールの置きどころが良く、球筋に瞠目するものがあり、生涯、何度も上げてきたクロスは、たとえ他の選手にとっては無理な体勢に見えても、彼には計算が立つ。
ボールをどう操るか。
それを極めた選手だけが入れる領域があるのだろう。
実際、ナバスはその圧倒的なボールプレーによって、世界有数の右サイドの選手になった。セビージャ、マンチェスター・シティではいくつものタイトル獲得に貢献。そのクロスの精度は天下一品だった。
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現代サッカーでは、右サイドには左利きアタッカーを置いてカットインからのシュートというのが主流だが、ナバスは右利きで、どれだけ縦を切られても右足でピンポイントのクロスを放り込める。クラシックなウイングスタイルを最高位まで高めた。
クラブでも、代表でも、横からのボールに強いストライカーがいたら、無敵のパートナーだった。年齢を重ねることで、ポジションをウイングからウイングバックやサイドバックに下げたが、そこでも技術がよすがになっていた。
たとえベンチスタートでも、ナバスはお守りのような存在になった。
事実、EURO2024では38歳でスペイン代表入りすると、グループリーグ最終戦のアルバニア戦にキャプテンで先発出場を果たす。すでに決勝ラウンド進出は決まっていたが、チームを引っ張って勝利を収めることで勢いを消さなかった。そして準決勝のフランス戦もダニエル・カルバハルの出場停止で再び先発し、ダニ・オルモの決勝点の起点にもなったのだ。
完全に仕事人である。
今やフィジカル全盛のサッカー界と言える。たしかに走る量や質、さらに単純なパワーが求められる時代だろう。チーム戦術において、それは義務付けられるに等しい。
しかし、どれだけ強く、どれだけ速くても、それはサッカーの本質ではない。ナバスのように長く勝利に貢献し、スペクタクルを生み出すことはできないのである。
「フィジカルモンスター」
そんな風にもてはやされる選手はほとんど必ず脱落する。結局、サッカーで身を助けるのは技術。それがなければ長くトップレベルで戦い続けることはできないのだ。
文●小宮良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
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