アムロに比べいろいろと言われがちなシャアではありますが、超有能であることは誰しも疑いのないところでしょう。特に、組織のなかでの立ち回りのうまさを、アニメ本編におけるセリフのなかに見ていきます。
「上官」「指導者」としては超優秀だが、本人としては「仮面を被っているにすぎない」と思っているかも。「GGG 機動戦士ガンダム シャア・アズナブル」(メガハウス) (C)創通・サンライズ
世渡りの天才、シャア・アズナブル
『機動戦士ガンダム』シリーズでおなじみ「シャア・アズナブル」は、言動が細々と拾われるあまり、「情けないロリコン」「アムロより弱い」といったからかいが目立ちがちです。
が、若くしてジオン軍の大佐に上り詰め、7年後にはエゥーゴの指導者のひとりとなり、さらにネオジオン総帥へと就任しています。ダイクンの血筋という肩書きはあるものの、お飾りだった「ミネバ・ザビ」と違い、本当に指導者となっていました。
同じく士官学校出身の「ブライト・ノア」も、一年戦争を生き抜いた古強者ながら、14年後も艦長兼部隊指令にすぎません。ブライトが有能とすれば、シャアは超有能といえるでしょう。
そのようなシャアの出世力、組織内での立ち回りのうまさを示す言動を5つ、ピックアップしてみました。
1.「当たらなければどうということはない」(『機動戦士ガンダム』)
強力なビームライフルに怯える部下に対して、言い放った言葉です。アムロの未熟さを見抜いていた以上に、「部下のパニックを鎮める」という側面が強いでしょう。
その後に「あのモビルスーツは、戦艦なみのビーム砲を持っているのか!?」と狼狽え、威力を読み違えていた恐怖を露わにしています。それから改めてガンダムを圧倒した肝の座り方はすごく、臨機応変さこそリーダーの資質だと証明していました。
2.「勝利の栄光を、君に」(『機動戦士ガンダム』)
出撃を見送りに来た上司の「ガルマ・ザビ」に、コックピット内から贈った言葉です。その後は勝利どころか……という最大の皮肉です。
それ以前にも通信装置に細工をして「見事じゃないかガルマ大佐の攻撃ぶりは」と心にもないことをわざと聞かせるなど、常にヨイショと陰謀がセットでした。まさにシャアは「世渡りの天才」なのです。
3.「ドレン、私を誰だと思っている?」
かつての部下にホワイトベースの挟み撃ちを提案したとき「追いつけますか?」と訊かれて、切り返したセリフです。そこで「申し訳ありません」とドレンがすぐ謝ったことが、シャアへの信頼の深さを物語っています。
そのような理想の上司、部下像を見せられてからの、「あのドレンが、私が行くまで持ちこたえられんとは……」というシャアの呻きは、ララァを喪ったような悲痛さを帯びていました。
4.「私はかつてシャア・アズナブルという名で呼ばれたこともある男だ」(『機動戦士Zガンダム』)
連邦議会を占拠したとき、全世界に向けて行った演説です。当時「クワトロ・バジーナ」として属していたエゥーゴは劣勢で、連邦軍もティターンズの言いなりでした。
その不利すぎる状況を、シャアの知名度を足掛かりに「ジオン・ダイクンの遺児としてザビ家を糾弾」「そのザビ家よりティターンズは悪質」と訴え、言葉だけでひっくり返した有能さ! 究極の「口が上手い人」なんですね。
5.「アムロ、私はあこぎなことをやっている。近くにいるのなら、この私を感じてみろ」(『逆襲のシャア』)
地球連邦軍の高官たちと、裏取引を終えてからのセリフです。「あこぎ」とは、停戦の合意と引き換えに、地球に落とす気満々の小惑星「アクシズ」を手に入れることでした。
その前に小惑星の「5thルナ」を落としてからの駆け引きで、さすがエゥーゴ時代に不利な立場で鍛えてきた交渉力のすごさです。これだけ上官として超有能なくせに、あくまで「パイロットとしてのアムロとの決着」にこだわるかわいげが、シャアを魅力的にしているのでしょう。