吉本興業とのマネジメント契約を終了して個人事務所として活動していくエハラマサヒロ。12月1日から新たな道を歩み始めたエハラに退所の真相と今後の展望を直撃した。(前後編の後編)
「だから僕は嫌われているんですよ(笑)」
––––退所する前に、芸人仲間には相談したのでしょうか?
エハラマサヒロ(以下、同) 相談という形ではなかったですが、やめた人には話を聞きに行きましたね。まずは、シンガポールにいるあっちゃん(オリエンタルラジオ・中田敦彦)に連絡して、「(退所して)どうやった?」って聞いて。
僕、先輩で一番尊敬しているのがキングコング西野(亮廣)さんで、後輩で一番お世話になったのがあっちゃんなんですよ。あの2人も、自分のやりたいことがあるけど、会社とはマッチしない部分があって、退所したわけですよね。結局、僕も同じような感覚で仕事したかったんだと思います。
この2人と同じラインにいるから、僕も芸人仲間から嫌われているんだと思いますって書いといてください(笑)。
––––鬼越トマホークの2人は、エハラさんのことを「芸人に一番嫌われている芸人」としてイジっていますよね(笑)。エハラさんが嫌われる理由って、どこにあるんですかね?
言いましょうか? ドヤ顔ですよ。
––––(一同笑)。
“余裕でやってますよ”感が、上から目線で鼻につくんでしょうね。
––––できる人ができる顔をしても、腹立たしく感じない気もするんですが……。
そう思うのは、すごくいい人だからですよ。大半の人が、ムカついていると思います(笑)。
あと、今回吉本をやめるってなったとき、いろんな人にLINEで「今までありがとうございました」ってメッセージを送ったんですよ。そうしたら、品川庄司の品川(祐)さんが「まだいたの?」って返してきました(笑)。
……あ、ちょうど今、ぐっさん(山口智充)からLINEがきましたね。
––––なんと?
「インスタ見た。ひとまずお疲れ様でした。体が健康で、家族がいて、やる気があったらどこでもできる。やりたいことがあるって、どれだけ幸せなことか。俺、一生かかってもやりたいこと終わらへん……」だそうです。最後は「独立、乾杯」で締められていますね(笑)。めちゃくちゃありがたいです。本当にいい先輩ですわ。
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「26歳の時点で、NGKで師匠やっている絵が浮かばなかったんですよ」
––––お話を聞いていると、エハラさんは、もとから将来的な自身のキャリアを描きながら、計画的に活動されていた印象を受けます。
こんなこと言っていいのかわからないですが、僕は26歳のときに「R-1グランプリ」で準優勝して、仕事が一気に増えたんですよ。「爆笑レッドカーペット」や「エンタの神様」にも出演して、ブワーッとお客さんも増えて、劇場でも月に100ステージとかネタをやっていて。
その途中で、言い方は悪いかもしれないですが「小銭稼ぎを、俺は何歳まで続けなくちゃいけないんだ?」と思って。でも、50歳〜60歳の自分を想像したとき、後々の人生、NGK(なんばグランド花月)で師匠になっている絵が浮かばなかったんですよ。
よくよく考えてみると、僕が小学生のときから、師匠の方々は全然変わっていなくて。たとえば、オール巨人師匠や西川きよし師匠は、僕が小さいころからずっと師匠として活躍されています。一方で、「師匠」と呼ばれる人が増えているかと言われると、全然増えていないわけですよね。
ということは、26歳の芸人がやめるタイミングっていつなのかと言ったら、仕事がなくなった時点でゆっくりフェードアウトしていくしかないんですよ。
––––なるほど……。
華々しい経歴を持つ先輩方が、すごく苦労されてアルバイトを始めた、みたいな話を当時からよく聞いていて。「10年後、俺にもその未来が待っているな」と思ったんです。そこからマインドが変わって、セカンドキャリアを絶対に決めておいたほうがいい、と考えるようになりました。
30歳のときにミュージカルをやり始めたのも、僕にとってはすごく大きくて。というのも、ミュージカルだと、60〜70歳の方々も現役で出演されているんですよ。それで「今後、活動の主軸はここかもしれない」と思い、力を入れ始めたんです。
ちなみに、2028年のミュージカルの仕事も決まってます(笑)。
––––多くの若手芸人にとっても、セカンドキャリアは他人事ではない話ですよね。
もちろん、若手時代にとんでもないレジェンドになってしまえばいいんですよ。でも、僕には夢破れる未来しか見えなかった。飛び抜けてすごい人になれる自信がなかったから、目的地を変更したんです。
そこからは、自分にとって「“面白”は7割でよくなった」というか。全力で“面白”に振り切っていないから、やっぱり周りからは「最近全然おもんないやんか」とか言われるんですよ。でも、僕としては「別ジャンルでちゃんと魅了できている」と思っているから、あまり傷つかない。で、傷ついていないのが、やっぱり鼻につくらしいです。
–––––(笑)。その時々で、自身の状況を分析されてきたんですね。
そうですね。昔から、結構リサーチやマーケティングをしながら生きている人間だとは思います。
たとえば、オーディションに持っていくネタも、「面白いかどうか」ではなく、「この横並びで、この時間帯で、このディレクターは何を求めているか」ということを考えて、合格率を1%でも上げる突破口を探してネタを作っていましたね。