教え子の女子中学生に校内で性的暴行を加えてけがをさせたとして準強姦致傷などの罪に問われた東京都練馬区立中学校の元校長、北村比左嘉被告(57)=都教委が昨年11月に懲戒免職=の裁判員裁判が12月2日、東京地裁であった。北村被告は被告人質問で「恋人のように付き合っているつもりだった」などと主張し、傍聴席を呆れさせた。
「生徒が泣いたりうめき声をあげても犯行を続けた」
北村被告は練馬区立中学校校長だった昨年9月、以前勤務していた中学の女子生徒のわいせつ画像を所持していたなどとして児童買春・ポルノ禁止法違反(所持)で逮捕・起訴され、数々の余罪が発覚。
この中で2010年6月当時の教え子であり、顧問を務めていた部活動の部員でもあった当時中学生のAさんに性的暴行を加える動画もあり、東京地検は公訴時効が成立していない準強姦致傷罪を適用して起訴していた。
この事件の初公判は11月20日に開かれ、検察側が冒頭陳述で「立場を利用して抵抗できない状況を作り出し、性行為に及んだ。生徒が泣いたりうめき声をあげても犯行を続けた」と指摘。これに対し弁護側は「被告と生徒は親密な関係で合意があり、性行為でけがを負った証拠もない」などと反論していた。
12月2日は第3回公判で、保釈中の北村被告は濃いグレーのスーツ、深い青のネクタイで入廷。白髪のセンター分けで、教育現場で権勢を振るっていた当時の面影はみじんもない。
冒頭では追加証拠として、Aさんへの賠償として100万円支払ったATMの明細が請求された。民法上は時効だが、「被害者の苦しみは一生続くものです。今できる精一杯の償いとして、賠償をお支払いしました」と100万円という金額の根拠を説明した。
北村被告はAさんへの性暴力を学校の理科室で「マッサージ」と称して行なっていた。これについて裁判員に「『性行為は好きな人同士でするもの』だと生徒に説明していて、被害者とは恋人同士とも思っていたのに、なぜマッサージと言って理科室に連れ込んだのか」と矛盾を突かれた北村被告は「Aさんが受け入れてくれていると思ったので、毎回マッサージの名目で呼び出していました」と噛み合わない返答をした。
別の裁判員は、加害に用いられたソファーベッドがいつ購入されたのか質したが、これについても被告の答えは「定かではありません」と曖昧だった。また、被告はわいせつ行為を録画したビデオで自慰行為をしたと明かし、「警察でそのビデオを見せられ、すごく野獣のようでひどい行為をしていた」と述べた。
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「恋愛や結婚にも興味がなくなり、嫌な記憶と生きていかないといけません」
北村被告はこれまでに2回結婚しており、証人でもある現在の妻は元生徒だ。その妻と交際が始まった理由について北村被告は、「妻が卒業後に近くに引っ越してきて、そこから食事に行ったり映画を見に行くなど、相手の家族も含めて仲良くなったので、その時期から付き合い始めたという認識でした」などと証言。
一方でAさんとは「道具を買って、ラブホテルに行ったとき」に交際をしていると認識したと答えた。
被告人質問の後に20分程度の休憩を挟み、Aさんが証言台で次のように被害の実態を読み上げた。
「昨年、初めて自分が被害を受けたときの映像を見て、乱暴でショックを受けました。できれば見たくなかったです。取り調べで思い出して詳細を説明するのも苦痛で、今も悪夢にうなされます。
それでも告発したのは、同じ思いをした人のためです。(当時は)卒業までの辛抱だと何度も思いました。私が嫌がったら友人に被害がいくかもしれず、私が耐え忍ぶのが最善だと思いました。他の子みたいに普通の学校生活がしたかったと、後で何度も泣きましたが、言葉で説明するのが恥で、ただただ被告のオモチャになるだけでした」
「中学生のときの被害の影響で性行為そのものにマイナスなイメージが付き、大学時代に彼氏ができても、被害の記憶が蘇るため性行為を断っていました。結局彼とは別れたのですが、彼には被害を打ち明けていたので、『ごめん』と性行為を誘ったことを謝っていました。被害のせいで恋愛や結婚にも興味がなくなり、嫌な記憶と生きていかないといけません」
さらにAさんはこう続けた。
「前回の調書で被告には全く反省している様子が見られず、のうのうと暮らしていくのが悔しくてたまりません。賠償金はとても見合わない額ですが、せめて生活の足しになればと受け取りました。しかし傷は癒えないし、厳罰を求める気持ちは変わりませんし、許すことはありません」