今年も始まった福袋商戦。初売り日に店舗に並ぶという古典的方法から完全予約制まで、近年の販売スタイルはさまざまだ。
とりわけマクドナルドやスターバックスが採用する「購入権利の抽選」は、冷酷ながら無駄のない合理的なシステムと呼べるだろう。
そんな中、先着順でインターネット予約を受け付けた「焼肉きんぐ」の福袋がえぐかった……。
・「焼肉きんぐ」の福袋
はじめに記しておきたいが、同店の福袋の内容自体には筆者はとてもとても満足している。
年によって異なるものの、「オリジナルグッズ&食事券」を基本とする焼肉きんぐの福袋。食事券は金券ではなく割引券タイプで、「○○円の会計ごとに○○円割引」のクーポンが入っている。前期・後期に分かれた使用期間など独自ルールがあるが、むしろメインはオリジナルグッズなので気にならない。
工夫を凝らしたグッズの数々はユーモアにあふれ、毎年レビューが楽しみなほど。個性的すぎる「赤身肉」雑貨がシリーズのように増えていくのも楽しい。
2025年版の予約は12月2日(月)11時にスタートすることが告知されていた。期待と緊張が入り混じった気持ちでスタンバイして開始時刻を待つ。
販売ページがオープンすると同時に必要事項を入力し、確定ボタンを押す。60秒もかかっていない。しかしサーバーが混雑しているのか、最終場面まで進めず画面が真っ白になる。何度か試みているうちに、アクセス集中を告げる画面になった。この時点で11時07分。
う~~~む、そうか。申込が殺到しているな。
人気の福袋ではままあることだ。焼肉きんぐの福袋は、自分の受け取りたい店舗を選んで予約する方式。全店舗が一気に完売になることは考えにくい。購入できた人から離脱していくだろうから、ここは気長にいくことにした。
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・だんだん人の心を失っていく
何度もトライするが10分……20分……と経つごとに繋がりにくさが増していく。販売ページが無事に表示されるのは10回に1度くらいの割合。「よし、表示された!」と思っても、次なる試練が待ち受ける。
都道府県ごとに該当店舗の一覧が表示されるのだが、そのデータのやりとりで固まってしまう。きちんと店舗が表示されるのが、やはり10回に1度くらいだろうか。
やっとの思いで二度の難所を通過し、あとは「内容を確認する」ボタンを押すだけだ! となっても押下と同時にホワイトアウト。入力がクリアされ、振り出しに戻ることを繰り返す。
そうこうしているうちに2時間が経過。「504 Gateway Time-out」が頻繁に表示される。いつ通信に成功するかわからないので、画面から目を離して別の作業をするわけにもいかない。仕事、学業、家事、育児など通常の社会生活を送っている人は、とても買えない仕様だ。
13時半ころ、公式から「ページが繋がりにくい状況となっております」というお詫びのツイートが出る。「対処してくれる!」と少しホッとする。揺れる機内で「飛行にはまったく影響ありません」とアナウンスがあるだけで安心するようなものだ。
しかし事態は変わらず。ついには「502 Bad Gateway」が頻出するようになる。完全にサーバーがパンクしている……?
「今度こそ上手くいくかも」と期待してしまうと落胆するので、心を無にして淡々と再入力を繰り返す。何モ感ジナイ。ワタシハ決メラレタ手順ヲ実行スルロボット……。
幸い筆者は時間に制限のある職業ではないので、イライラはしない。ただ虚無感に沈んでいくだけだ。
「無益な労働こそ、もっとも残酷な刑罰だ」と言ったのはドストエフスキーだっただろうか。山から転がる岩を運ばされる神話のシーシュポスのように、あるいは賽の河原の石積みのように、「これって意味あんのかな?」と考え始めると心がすさんでくる……。むしろ「抽選で外れました」と言われるほうが親切なような気がしてきた。
午後5時過ぎ、つまり開始から6時間ほど経ってついに販売ページがメンテナンスに入った。メンテ終了時刻はわからない。Xでは「日時を改めて仕切り直しを」「抽選販売にしては」「せめて再開日時を告知してくれ」という悲痛な声が挙がる。
いつ再開するかわからない販売ページをリロードし続けるのは現実的ではなく、気づかないうちに完売したら不平等だ、という意見だ。もっともだと思う。