立花氏の選挙活動に問題はないのか
辻元氏の3番目の質問で挙げられた問題は、選挙で特定の候補者が他の候補者の選挙運動を行なっていいのか、という点だ。
今回、知事選では「当選を目指さない」「斎藤氏を応援する」と言って出馬したNHK党党首・立花孝志氏が、斎藤氏の街頭演説の直前や直後に同じ場所で演説することを繰り返した。
その演説の内容は確かに斎藤氏の支持拡大を後押ししたと、県の政界関係者は話す。
今年3月、当時の西播磨県局長・Aさん(60)は、斎藤氏や側近の違法行為疑惑をメディアなどに匿名で告発したが、斎藤氏の指示を受けた県幹部に発信者と特定され、懲戒処分を受けた。
その調査の過程で県当局はAさんの使っていた県の公用パソコンから私的な文書を発見。これを斎藤氏の側近は県議らに見せて回ってAさんを貶め、告発の信用性を否定して回っている。指摘文書の内容が知られることに苦しんでいたAさんは7月に自死している。(#13)
この私的文書は疑惑とは関係がない。そして、個人情報なので公にされず、外部にも知られてはならないはずのものだ。
立花氏はその“内容”だというものを演説で話し、メディアと県議会はこうしたことを隠して斎藤氏を陥れたと主張、この様子を動画で公開もした。「斎藤さんの演説に集まった人たちはこれに喝采を送ったんです」と、斎藤氏の陣営の関係者は話す。
斎藤氏は立花氏との連携を否定している。だが「二人三脚」とも「二馬力」とも言われたこうした光景が続いたことが、斎藤氏にはプラスに働いた、とこの斎藤陣営の関係者は認めている。
村上総務相はこの件に関しても「一般論」と断りつつ、比較的明確な考えを述べた。
「候補者が他の候補者の選挙運動を行なう場合には、その対応によっては公職選挙法上の数量制限などに違反する恐れがあるものと考えています」(村上氏)
立花氏の選挙手法は、第1の論点である虚偽広告の件でも問題になりそうだ。
立花氏は公営の掲示板に張り出した自分の選挙ポスターに「元県民局長自殺の真相」と大書きした上で「元県民局長が使用していた公用パソコンにはおびただしい数の不倫の証拠写真が保存されており、それはどうも不同意性交等罪という、5年以上の拘禁刑が科される重罪の証拠である可能性が高まった」と主張した。
だが、集英社オンラインは関係者への取材で、パソコンにあった私的文書の内容はこれとはまったく違うことを確認した。「ポスターの記載は大嘘だ」とAさんの知人は怒りに震えている。
「今回の選挙は見たことがないほど“汚い選挙”“暴力的な選挙”になりました」
そう地元記者が嘆息した兵庫県知事選。ネット上での情報戦だけでなく、故人やその関係者を痛めつける行為がなぜ続いたのか。
こうした選挙を繰り返さない制度の見直しが必要ではないのか。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班