世に「おしゃれ家電メーカー」は数あれど、「おもろい家電メーカー」は恐らくここくらいだろう。大阪府東大阪市に本社を置くライソン株式会社だ。「万人受けする商品より100人に1人、めちゃくちゃ刺されば良い」という社長の号令のもと、一点突破主義のモノ作りを目指す。
「大きかったらおもろいやん」で製品化
約6000もの工場が立ち並ぶ「ものづくりの都」、大阪府東大阪市にユニークな家電を生み出している会社がある。
この会社ではこれまでに100種類以上の商品を販売していて、中にはカップ焼きそば「ペヤング」専用のホットプレートである「焼きペヤングメーカー」や、直径10センチのたこ焼きをつくる「ギガたこ焼き器」といった、くすりと笑ってしまうようなものも数多くある。
「ギガたこ焼き器は、『大きかったらおもろいやん』というだけの理由で商品にしました」
こうあっけらかんと語るのは、製造元であるライソン株式会社の山俊介社長(40)。基本的には、面白くて、開発コストなどが見合うものであれば大抵の企画は通るという。その上で、決して万人受けしないこともポイントに挙げる。
「うちの商品は、他社にはない非日常感のものばかり。マーケティングをして、たくさんの人がほしがる商品をつくるのではなく、100人に1人、めちゃくちゃ突き刺さればいいんやという思いで作っています」
このいわば「いてまえ精神」、「一点突破主義」こそが同社のビジネス戦略なのだ。
そうした姿勢が消費者にも好感を持たれている。例えば、「せんべろメーカー」は、焼き鳥やおでん、惣菜などを目の前で調理しながら晩酌できるという商品。実は山社長自身がほしいと思って企画・開発したものだが、コロナ禍での巣ごもり消費の影響などで、年間1万台も売れた。
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焼きいもの論文を読み漁る
一見、ふざけた会社のように思えるかもしれないが、商品開発に対する熱意はいたって真剣だ。
例えば、2021年9月に一般販売した「超蜜やきいもトースター」。これは企画から2年かけてつくり上げた、きちんと理論に裏付けされた商品である。このために、山社長は焼き加減だけでなく、焼きいもそのものの研究までした。
「ネットで焼きいもの歴史を調べたり、焼きいもの論文をたくさん読んだりしました。焼きいもはどういう原理で甘くなるのかご存知ですか。焼きいものデンプンが70度くらいで糊化というのり状になって、その後に糖化という麦芽糖に変わる化学反応が起きるからなんです。それを知ったうえで、甘さを出すためには焼いた方がいいのか、蒸した方がいいのかも検討しましたし、調理法の論文もたくさん読んで、再現していく作業を繰り返しました」
当然、いろいろなさつまいもを焼いては試した。その数は2000本以上になるという。結果、熟成された「紅はるか」が最適な甘さを引き出せることがわかった。
苦労して開発した甲斐があり、顧客からの評判は上々。「想像していたものの10倍おいしかったと感動していただいたりしました。製品に対する苦情は言われてないですね」と山社長は胸を張る。