大阪発、“いてまえ家電”の突破力

ファンからの要望も商品化

製品化のアイデアが寄せられるのは社内だけではない。ときには「ライソンファン」のお客からも「こんなん作って」と企画が持ち込まれることがある。そのひとつが、家庭用コーヒー豆焙煎機「ホームロースター RT-01」だ。

同社では元々「ポップコーンメーカー」を販売していた。これを大阪市内で喫茶店を営む男性店主が改良して、コーヒーを焙煎していたのだ。そしてあるとき、「これを商品にしてよ」とアイデアを同社に持ち込んだ。

「家庭でコーヒー豆を焙煎する意味が全然わからなかったし、売れるとは思ってなかった」と山社長は苦笑するが、クラウドファンディングで商品の開発資金を集めた結果、5400万円を超える支援があった。山社長はもちろんのこと、社内の誰もが想像していなかったことが起きたのだった。

ただし、この開発・製造も苦労を伴った。同社は自社工場を持たず、中国の工場にアウトソーシングしている。いわゆるファブレスメーカーだが、検疫の関係でコーヒーの生豆を中国に持ち込めないため、同じ開発環境でテストができなかったのだ。また、中国の人たちはハンドドリップしてコーヒーを飲む習慣がなく、イメージを伝えるのが難しかったという。そんな紆余曲折と苦労の甲斐もあり、ホームロースター RT-01は目出たく製品となり、1万台を売り上げるヒット商品になった。

ホームロースターは成果に結び付いたから良かったが、同社の歴史においては、苦労したのに報われなかった商品もあるのではないか。これについて山社長は「苦労して失敗した商品はあまりないですね。苦労したらある程度、結果は残ります」と断言する。逆に、適当にやって失敗したものはいくつもあるそうだ。

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ホットサンドメーカーで生活の質が高まる

ライソンはあくまでも一般消費者に手が届く、みんなで楽しんで使ってもらえる商品づくりを心がけている。これは会社のルーツにも関係する。

ライソンはもともとゲームセンターの景品や単価の安い玩具などを製造・販売する会社のグループ企業としてスタートして、現在の家電メーカーに成長した。

「(そういう出自)なので当社もユニークで低価格、単機能の家電を得意とする会社になったわけです」

最後に、この春から新生活を始める大学生や社会人にお勧めしたい商品を聞いてみた。山社長が一押しするのは「着脱式シングルホットサンドメーカー」(実勢価格2600円前後)。約3分でホットサンドが焼き上がり、お手入れも簡単なこの商品によって生活の質が向上する、と自信を見せる。

もう一つは、「着脱式ラーメンメーカーどんぶり」。インスタントラーメンの調理から食事までをこのどんぶりで完結できる便利な一品で、値段も2500円前後と手ごろだ。

加えて、58秒でトーストが焼ける「秒速トースター」も勧めたいというが(「秒速」と名付けたいがために、1分から2秒切るために必死になったそうだ)、1万4000円前後と値が張るため、「新入社員にはまだ手が出ないかな」と山社長は微笑みながら首を傾げる。

これからも面白いアイデアで消費者をあっと驚かせ、ついつい食指が動いてしまう商品が登場するのを楽しみにしたい。