「連続30時間プレイ」「同一ソフト800本保有」達人に聞くRTAの魅力

研究をきっかけに、同じソフトを800本収集

――SDヒーロー総決戦だけでも800本以上のソフトを持っているとのことですが……

最初はRTAの研究用として集め始めたんです。ファミコン用のソフトなどには初期ロム、後期ロムといった違いがあります。今でこそ、ゲームは発売後にもネットワークを通じてバグを修正したり、機能を追加したり、アップデートが可能ですよね?

しかし、売り切りが一般的だった昔は、致命的なバグを見つけても対応が難しかった。仕方なく、後から発売する分だけを修正することが多かったんです。

――発売後、しばらく経ってから製造された分は不具合が直っているということですか?

そうです。それが初期ロムと後期ロムの違いです。RTA業界では初期ロムと後期ロムの違いで差が生まれることも珍しくないんですね。修正される前の、初期ロムにしかないバグを使ったほうが速い。あるいは、バグが修正された後期ロムのほうが進行で有利という風に。ちなみに、バグを直した影響で、後期ロムにだけ違うバグが発生するというケースもあります。

――なるほど。それなら、初期ロムと後期ロムを1本ずつ用意するだけでも十分な気がしますが……

そうかもしれません。ですが、ソフトによってプレイしたときの感触が違って思えるんです。数値やデータのうえでは厳密には存在しない差なのかもしれませんが、自分がRTAをしやすいソフト、しづらいソフトというのが確かにあって。それを突き詰めているうちに、いつの間にか800本に増えていました。後半はほとんどコレクターとしての血が騒いだだけなんですけど。

―――ここまで集めるのは大変だったのではないでしょうか?

集め始めてから、だいたい6年くらい経ちますね。そこまで単価は高くないゲームなのですが、自分がたくさん注文するせいで、一時期中古相場を押し上げてしまったこともあります。

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10分の壁より分厚い1秒の壁

――げきからさんの記録は”15分22秒13”とのことですが、普通にプレイしたら何時間かかるのでしょうか?

だいたい3時間程度ですかね。アクションゲームに慣れている人であれば2時間でクリアできると思います。最速でクリアするには運の要素も相当絡んでくる作品で、自己ベストである”15分22秒13”は5年間、自分でも塗り替えることができていません。

作中で最も性能の高いキャラクターを使っている方の記録は”14分44秒”なのですが、自分はそのキャラクターを使用しないルールでの15分切りを目指しています。

この作品のRTAを走り始めた頃は、練習すればするほどタイムを縮めることができました。1時間30分を20分に、20分を18分にするまでの試行回数はそれぞれ数回程度だったと思います。

ただ、そこからが本当に大変で。18分台から15分台に到達するまでに1年以上かかりました。15分切りにはもう何年も挑戦しています。ある程度突き詰めると、1分1秒の壁が非常に厚くなる。それがRTAの面白さでもありますね。

――ほかに苦労されたことはありますか?

30時間かかるRTAを3日間連続で取り組んだことがあるんです。ようやく記録が出たと喜んだのもつかの間、その直後にタイムを大幅短縮できる方法が見つかってしまって、すべてがパーになった経験があります。

また、長時間のRTAでは肉体への負担も無視できません。8時間以上のRTAを走るなら椅子や机などにも気を遣う必要があると思います。かれこれ10年くらいRTAを行っているのですが、歳を重ねるにつれて体力の衰えを感じますね。

―――プレイ以外での取り組みも重要なんですね

例えば8時間以上かかるRTAであれば、食べ物や飲み物の準備はもちろん、プレイの数時間前から口にする水分量を調節し、RTA中にトイレに行かなくていいようにするといった調整を行っています。トイレに行きたくなったら、そこで記録を諦めるしかありませんから。