ただクリアをめざすだけでなく、100分の1秒の世界でクリアタイムを競い合うRTA(リアルタイムアタック)というゲームの世界がある。eスポーツが注目される中、イベントも開催されるほどの人気を持つRTAの魅力とは? RTA in Japanを運営する中島和希(もか)氏、中村圭宏(Naka)氏にRTAの成り立ちやその魅力を訊いた。
ゲーム開始からクリアまでの”現実の経過時間”を競い合うのがRTA
ゲームの楽しみ方は実に様々だ。広大なマップを隅々まで探索したり、無駄を極力省いて効率的にゴールをめざしたり、人それぞれに好みのプレイスタイルがあるだろう。
そんななかでも一風変わったRTA(リアルタイムアタック)というゲームの遊び方がある。
「RTAとはその名の通り、いかに早くゲームをクリアするか競う、タイムアタックの一種です。大きな特徴はスタートからクリアまでの実時間を計測するという点にあります」(RTA in Japan・中島和希氏)
多くのゲームには「In Game Time(インゲームタイム。以下、IGT)」と呼ばれる、ゲーム内部で計測される時間が存在する。一般的なタイムアタックではクリアまでのIGTを競い合うのだが、ゲームをリセットすると最後に保存した時点までIGTも巻き戻るため、保存とやり直しを繰り返せば比較的簡単に良い記録を残せるのだ。
一方、RTAはクリアまで実際にかかった時間を競い合う。一度計測を始めたらミスによりリセットを余儀なくされてもタイマーはそのまま。一時停止や途中休憩も認められない。ゲームによってはクリアまで数時間、十数時間かかるものもあり、通常のタイムアタックより難易度もプレッシャーも格段に上がる。
「このスリルがたまらない、という人も少なくないと思います。私もその一人です。短い時間で攻略しようとすると、普通にプレイするよりも難しい操作や判断が求められるのですが、その分クリアしたときの感動や達成感も大きいんですよ」(中島氏)
「とくにアクションゲームでは努力の成果がはっきりとわかるんですね。自分の操作精度をあげるために、一つのゲームに1500時間以上費やしたこともあります」(RTA in Japan・中村圭宏氏)
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RTAが行われたゲームは最低2万タイトル以上!
RTAは国内だけでなく、世界にもプレイヤーが存在する。海外ではRTAではなくスピードランと呼ばれることが一般的だ。ユーザーが自身の記録を投稿できる海外サイト『speedrun.com』には現在、115万人を超えるプレイヤーと、2万以上のゲームタイトルが登録されている。
「未登録の方もいると思うので、実際の走者(RTAプレイヤーのこと)はもっと多いでしょう。RTAをプレイするゲームもそのルールも多岐にわたり、みなさんそれぞれが面白いと思う方法で記録を狙っています」(中島氏)
RTAでは一つの作品に対して複数のルールが設けられている場合がある。例えばRPG(ロールプレイングゲーム)であれば、制作側が想定した手順をしっかりと踏んで攻略するルール、ありとあらゆるバグを駆使してとにかく早くクリアをめざすルール、収集アイテムをすべて集めるルールなど多種多様だ。
作品によっては本来クリアに10時間以上かかるところ、数十分足らずでエンディングまで到達するRTAもある。
「例えば野球ならダイビングキャッチ、サッカーならハットトリックのような、人々を魅了するスーパープレーがありますよね。
RTAではゲームを早くクリアするために様々なテクニックが求められるのですが、これもスーパープレーの一種と言えるのではないでしょうか。子どもの頃に遊んだゲームのRTAを見ると、あまりに緻密な操作の数々に『当時の自分と全然違う動き方をしている!』という驚きがありますよ」(中村氏)