有村智恵プロの連載第七弾。日本で唯一開催の全米女子プロゴルフ協会公式戦「TOTOジャパンクラシック」。
試合の総括とともに、世界最高峰のトーナメントが日本ゴルフ界に与える影響を、日米両ツアーで活躍した経験のある有村智恵プロに語っていただきました。
「あんな”麗央ちゃん”初めて見た、プレーオフはきつそうでしたね」
こんにちは、プロゴルファーの有村智恵です。
TOTOジャパンクラシック面白かったですね。優勝した竹田選手は、来期のアメリカツアー出場権を手にしました。個人的には「誰でもいいから、日本人選手が勝ってくれ~」と応援していましたが、終わってみれば勝つべき人が勝ったちましたね。
それにしても、後半9ホールのプレーは圧巻でした。普通は、8番、9番の連続ボギーで優勝のチャンスは遠のきます。その時点でトップのイエリミ・ノー選手とは4打差でした。もちろん逆転不可能な差ではありませんが、選手たちは、他の人のスコアがわからなくても、肌間で流れを手放した…と気がつきます。ところが竹田選手は、あきらめていませんでしたね。その要因は、後半のコースセッティングが非常に大きかったかもしれません。瀬田ゴルフコース北コースは全体的にコースが広く飛ばし屋がアドバンテージを得る傾向があります。そして、インコースはPAR5が3ホールありますので一発逆転が起こりえます。竹田選手の力をもってすれば、3ホールで最低3つ、できれば4つスコアを伸ばしたい、それ以外の6ホールで2バーディーくらいとれれば6つ伸ばせる、そんな計算があったのではないでしょうか。とはいっても、簡単なことではありません。やはり、今の竹田選手の勢いは本物ですね。
そんな竹田選手も、プレーオフは息切れしているような気がしました。ティーショットを左に曲げるミスや優勝を決めるパットを外すシーンが続きましたし、いつも淡々とプレーする彼女が「もう決まってよ~」というような表情がでていました。集中してバックナインであれだけのプレーをしたのですから無理もないです。対戦相手のマリーナ・アレックス選手も素晴らしかったですね。コースとの相性、勢いが圧倒的に竹田選手よりだったなか、流石ベテランのプレーでした。
最終日を単独トップでむかえた脇本選手は、とてもいい勉強になったのではないでしょうか。彼女は、とてもステディーなゴルフスタイルです。今大会も3日間通じて安定したプレーができていたと思います。でも、最終日の勝負所でパッティングをショートするところが気になりました。初優勝、ましてやアメリカツアーともなれば終始攻める気持ちが必要です。トップに立つと、追う側よりも攻めるのが難しいのですが、”守りながら攻める”が必要です。殻を破って初優勝を成し遂げてほしいですね。
当時アメリカツアーを戦っていて驚いたことは、想像よりもスコアが伸びていくことでした。その日、自分がプレーしていて、トップはこのくらいのスコアで、3アンダーだと20位以内かな?と思っていると、予想よりも1~2打上回ってくるんです。それも1人、2人ではなく大勢。4日間続くと、あっという間に5ストローク、10ストロークと置いていかれ。それが、1年続くとシード圏外にはじきだされてしまいます。日本でそのレベルを体感できることは、日本ツアーの選手たちにとって、とてもいい経験になります。来シーズンも、竹田選手をはじめ日本のトップ選手たちが、たくさんアメリカに渡ることになりそうです。移動距離の長さや芝質の違い、文化の違い、そして圧倒的なパワーの差やハイスコア続出の世界最高峰女子ツアーの厳しさに早くアジャストしてほしいですね。昔と違って、毎試合10人を超える日本人選手が参加するようになりました。これは、とても大きいことです。アウェー感がなくなりますから、本来の力を発揮しやすくなっています。2024-2025シーズンも日本人選手たちの優勝シーンがたくさん見れそうですね。
いかがでしたか? TOTOジャパンクラシックを経て世界へ飛び立つ日本人選手の勢いは止まりそうもありませんね、来シーズンの活躍が楽しみです!
有村 智恵
●ありむら・ちえ/1987年生まれ、熊本県出身。159cm。通算14勝(メジャー1勝)4月に双子の男の子を出産。
構成=岡田豪太
写真=田中宏幸
協力=エースゴルフ赤坂