旧ジャニーズ事務所 (C)週刊実話Web

視聴率の下落傾向に歯止めが掛からないNHK紅白歌合戦の起爆剤として期待されていた旧ジャニーズ事務所(現STARTO ENTERTAINMENT/以下、スタート社)所属タレントは昨年に引き続き出演しない。

状況的にスタート社側のボイコットとも取れる舞台裏。今後、NHKとの全面抗争に発展する可能性も秘めている。

【関連】「とても国民的アイドルには見えない」タトゥー姿の嵐・大野智にファンもドン引き!? など

NHKは、故・ジャニー喜多川氏による性加害問題を受け、出演を見送っていたスタート社所属タレントについて、紅白歌合戦への起用を判断するためのギリギリのタイミングとなる10月に出演依頼を再開することを発表した。

しかし、スタート社はこれを受け入れなかった。

スタート社に振られた形のNHKだが、背景に何があったのか。

まずは、紅白歌合戦と旧ジャニーズ事務所の歴史を振り返りたい。

初出場は、1965年のジャニーズで、その後、フォーリーブスや郷ひろみ、田原俊彦、近藤真彦、少年隊、光GENJI、男闘呼組などが続いた。

2000年代半ばまでは1〜3組の出場だったが、2009年になると4組(NYC boys、TOKIO、嵐、SMAP)が出場し、旧ジャニーズ事務所頼みが加速。2015年には7組(Sexy Zone、関ジャニ∞、TOKIO、嵐、V6、SMAP、近藤真彦)にも達した。

一方で、紅白歌合戦の視聴率の低迷は続いており、ビデオリサーチによると、スタート社所属タレントが出場しなかった昨年の紅白歌合戦の平均世帯視聴率(関東地区)は、第1部が29.0%と初めて30%割れ。第2部も31.9%と2部制となって以降、最低となった。

NHKでは、今年の紅白歌合戦の出演者交渉を進める中、スタート社所属タレントの取り扱いが焦点となっていった。

そして、10月にスタート社との契約再開を決断し、NHKの稲葉延雄会長は10月16日、定例記者会見で出演依頼の再開を表明した。

稲葉会長は再開の理由について、「補償業務を行っているSMILE-UP.と、タレントが移籍したスタート社と定期的に面談を実施し、取り組みの状況を継続的に確認してきました。その結果、被害者への補償と再発防止の取り組みに加え、両社の経営の分離も着実に進んでいることが確認できた」と述べた。

スタート社側としても、ジャニー喜多川氏の性加害問題の禊が済み、ようやくテレビ界に完全復帰できる、という意味で大きな出来事だった。

一転して「NHKは信用できない」

しかし、その4日後の10月20日に放映されたNHKスペシャル『ジャニー喜多川“アイドル帝国”の実像』により、雪解けムードは一変する。

ジャニー喜多川氏のアメリカ時代の知人や、旧ジャニーズ事務所の元社員、元所属タレント、テレビ局関係者などが出演し、旧ジャニーズ事務所の問題点を改めて深くえぐり出したのだ。

番組内では、旧ジャニーズ事務所のグループに所属し、性加害を告発したメンバー(故人)の姉がSMILE-UPの補償本部長とやり取りした際、本部長が「本を書かれて会社としては、すごくつらい目に遭った」「心の底からおわびができない」と発言した音声を紹介、SMILE-UP.は補償本部長の解任に踏み切らざるを得なかった。

スタート社の関係者からは、NHKが契約再開という事実上の問題終結宣言をする一方で、旧ジャニーズ事務所を徹底的に叩く番組を放映する行為に反発の声が上がった。

「いまだに反省していないとも取れる内容に、多くのマネジャーや所属タレントが一斉に反発した。右手で握手しながら、左手で殴りつけてくるような行為で、スタート社内には『NHKは信用できない』『NHKへの出演に不安を感じる』といった声が渦巻いていると聞いている」(芸能関係者)

スタート社経営陣は、現場の反発に抗しきれなかったとみられ、紅白歌合戦への所属タレント出演を見送ったようだ。

(広告の後にも続きます)

さらに衰退しそうな旧ジャニーズ帝国

もちろん、NHK側にも見解はある。

NHKスペシャルについては、旧ジャニーズ事務所問題の禊が済んだことを世間に受け入れてもらうための免罪符と捉えていたフシがある。

稲葉会長は11月20日の記者会見で「(紅白歌合戦の)出演交渉の詳細は必ずしも承知していませんが、結果的に応じていただけなかったことは残念なことだと思っています」と語った。

両社の間には、これらのほかにも不安材料がある。

SMILE-UP.は10月、NHKがスクープとして放映した男性の性加害証言に問題があるとして、男性を被告とした補償債務の不存在確認訴訟を提起した。

ただ、「問題があるのはNHKだけではない」と厳しい見方をしている別の芸能関係者もいる。

「ジャニー喜多川氏の性加害は決して許されるものではないが、タレントの才能を見出す能力と統率力は誰にもマネできない。今のスタート社を見回すと、そういった人物がいないため、今後は会社自体が衰退していく恐れがある」(同)

公共放送のNHKにもメンツはある。

「局のトップに『残念』と言わせたスタート社の振る舞いに対し、腸が煮えくり返っているNHK局員もいます。報復は予断を許しません」(業界関係者)

今年の紅白歌合戦には、スタート社所属タレントに加え、昨年好評を博したYOASOBI、Adoも出ない。

視聴率がどう転ぶか分からないが、何よりも今後のNHKとスタート社の行く末から目が離せない。

「週刊実話」12月19日号より