日本でも社会現象となりメガヒットを記録した『アナと雪の女王』に対し、続編の『アナ雪2』の興行収入はほぼ半減となりました。そこには、「日本特有の理由」があったと考えられるのです。
アニメ映画『アナと雪の女王2』ビジュアル (C)2019 Disney. All Rights Reserved.
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日本でも出だしは前作越えだったが
2024年12月6日の「金曜ロードショー」で『アナと雪の女王2』が放送されます。言わずと知れた前作『アナ雪』は全世界で12.85億ドルの興行収入を達成し、『アナ雪2』はそれを上回る14.5億ドルを記録して、現在はアニメ映画史上第3位の興行収入となっています。
一方、日本では前作『アナ雪』は社会現象となり最終興行収入254.7億円のメガヒットを遂げ、『アナ雪2』は初週末の土日2日間で前作比211.7%の成績でスタートしたものの、最終興行収入は前作の半分強の133.6億円となりました。
そもそも日本で海外のアニメ映画が250億円を超えることは、後にも先にもない異次元の記録であり、その続編での130億円超えももちろん大記録であることを前提として、なぜ「日本のみ」続編の興行収入がほぼ半減してしまったのでしょうか。主に3つのポイントから考えてみましょう。
1:さすがに1作目の楽曲のキャッチーさにはかなわない
前作『アナ雪』が日本で(もちろん世界中でも)メガヒットとなった最大の理由は、「レット・イット・ゴー ~ありのままで~」を筆頭とする楽曲のクオリティーにあると断言します。その「レット・イット・ゴー」の歌唱シーンがフルコーラスで流れる予告編にも、絶大なインパクトがありました。
さらには「雪だるまつくろう」「生まれてはじめて」も、一度聴けば忘れられないキャッチーさであり、本編での楽曲と物語の相乗効果、さらにはBGMやエンドロールで「リプライズ」として流れることも含めて、楽曲の「強さ」があったのです。
もちろん、『アナ雪2』でも、「イントゥ・ジ・アンノウン」や「ずっとかわらないもの」などエモーショナルかつメロディアスな楽曲が複数用意され、物語との相乗効果やリプライズの演出も受け継がれており、もちろん世界最高峰のクオリティーです。
しかし、その親しみやすさやインパクトは、楽曲そのものが社会現象となった「レット・イット・ゴー」に比べると、さすがに後退している印象があります(クリストフの歌う「恋の迷い子」は、「ボヘミアン・ラプソディ」のミュージックビデオのパロディもあり衝撃的ですが)。
さらに、『アナ雪2』の物語はエルサとアナのアイデンティや、ルーツに迫る内容かつ設定の説明が多くなった印象があり、過去のディズニー作品や元のアンデルセンの童話を相対化しつつもシンプルな作劇だった1作目に比べ、やや複雑で難解になった印象がありました。それも「分かりやすさ」を好む、日本の観客を少し遠ざけた理由になっていたのかもしれません。
『モアナと伝説の海2』ポスタービジュアル (C)2024 Disney. All Rights Reserved.
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久しぶりの続編だったから?
2:日本だと「久しぶりの続編」はやや厳しい?
続編映画は前作よりも興行収入が下がってしまうことが多く、日本では洋画(海外映画)は特に「流行りモノ」の強いイメージもあって、『アナ雪2』は前作から5年ぶりの「久しぶりの続編」であるために訴求力が減衰してしまったことも考えられます。
極端な例かもしれないですが、直近で話題になったのは、2022年末に公開された『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』です。日本以外の世界135の国と地域ではナンバーワン、アメリカで公開された週末はすべての興行収入の約88%を占め、最終的には『タイタニック』をも超えて歴代3位の興行収入になるほどの超大ヒットながら、日本の興行ではなんと「初登場3位」だったのです。
2009年公開の『アバター』1作目は日本で興行収入159億円を記録したのに対し、続編では最終43億円ほどと3分の1以下まで落ち込んでしまったのです。こちらは13年ぶりの続編というだけではなく、同時期に『すずめの戸締まり』と『THE FIRST SLAM DUNK』という国産のアニメ映画が社会現象級の大ヒットをしていたことも、大きく影響しているでしょう。
36年ぶりの続編ながら日本でも138.1億円を記録した、2022年の『トップガン マーヴェリック』という例外ももちろんあるのですが、年月のブランクを感じさせない、とてつもない高評価と話題性がないと、洋画離れが進んでいるといわれる日本で、前作を上回る興行成績は難しいのかもしれません。
3:2019年には他にもディズニー作品を含む大ヒット作が連続していた
さらに2019年は、日本の映画の興行収入が過去最高の2611.8億円となるほどの大盛況になったことも、『アナ雪2』の興行収入半減に影響していると思われます。『天気の子』が142.3億円の興行収入になったことに加え、ディズニー作品でも121.6億円の『アラジン』、100.9億円の『トイ・ストーリー4』と、他にも100億円を超える大ヒット作があったのです。
「KIQ REPORT」の調査によると、2022年に日本で1年に1回以上映画館で映画鑑賞をすると答えた人は47%で、1年に1、2回だけ映画館に足を運ぶ人は31%、2~3か月に1本以上は11%、月1本以上は5%という調査があります。ライト層も映画館にまで観に行く大ヒット作品が連続したため、11月の『アナ雪2』の公開前の時点で、「1年間で映画館で観る数本はもう消化しきっていた」ことも考えられるのかもしれません。
『モアナ2』はどうなる?
結論としては、日本で『アナ雪2』が前作より興行成績が半減したのは、そもそもが前作が2度とないほどの社会現象と化していたこと、楽曲のキャッチーさや物語の分かりやすさが前作よりも後退したこと、日本では世界的にヒットした久しぶりの続編はあまり伸びないこともあること、さらに2019年には他にも大ヒット作が複数あったことなど、多数の理由が考えられます。
ちなみに、11月27日にアメリカで公開された『モアナと伝説の海2』は感謝祭シーズンの公開から5日間での全米の興行収入は2.21億ドルとなり、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』や『アナ雪2』をも上回るという、超ロケットスタートを切っています。2016年公開の前作『モアナと伝説の海』のオープニング成績と比較すると5日間対比で269%となり、続編映画として歴史に残る大記録が期待できるでしょう。
その上で、日本で12月6日より公開された『モアナ2』が、その全米の成績にならうように大ヒットするかは、とても興味深いところです。
2015年公開の『インサイド・ヘッド』1作目が日本では40.4億円の興行収入に対し、世界的にはアニメ映画史上ナンバーワンの興行成績となった2024年公開の『インサイド・ヘッド2』は、日本でも50億円を上回る結果となりました。日本で51.6億を記録した『モアナ』も「前作超え」があり得ますし、筆者個人としても期待しています。