【思考をキレイにする旅の仕方(447)】カレーの旅とカレーの挑戦

彼が小学生の頃からのつきあいです。

友人の息子は、1日3食カレーでもいいと言うほど、カレーが好きでした。

大学卒業後、就職はせず、下北沢の老舗カレー店でアルバイトを始めます。

貯金ができた後、旅に出掛けていきました。

カレーを目的に。

インドはもちろんのこと、アジアの国々を周り、

カレーだけではなく、スパイスについても学び、

ワーキングホリデー制度を利用してカナダで1年間、働いてから帰国します。

旅の途中で出会った日本人女性と結婚し、

子どもにも恵まれ、京都に住み始めました。

「スパイスカレーではなく、欧風カレーを出したいんですよね」

自分のカレー店を持つため物件を探したのですが、なかなか借りられません。

カレーは店舗に匂いが染みつくため貸主が嫌がるらしい。

そこにコロナ禍が到来し、壁はさらに高くなりました。

それでも彼は、じっくりチャンスの時期を待ったのです。

欧風カレーを煮込むように。

すると、昨年、京都に老舗カレー店の分店を出す話が舞い込んできたのです。

こうして今年の春、彼のカレーの挑戦は始まりました。

ゆったりした空間に、レコードジャケットが飾られ、店内のBGMはレコードの柔らかい音が流れます。

「カレーの味はもちろんですが、接客やその店が持つ空気感も大切にしたいんです」

言葉数が少ない彼だからこそ説得力がありました。<text:イシコ>