「人生100年時代」と言われる現代、長い人生を充実させるために「学び直し」の必要性が叫ばれています。その中でも注目されているのが「リカレント教育」や「リスキリング」です。本記事ではそれぞれの言葉の違いや、学び直しが重要視されている背景、そして大人の学びを継続させるためのポイントについて解説します。
人生100年時代を豊かに生きるためには?
近年「人生100年時代」という言葉をよく耳にします。人生100年時代の生き方について示したリンダ・グラットンの著書『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』は、世界中でさまざまな言語に翻訳されベストセラーとなっています。
現在、日本は健康寿命世界一の長寿社会です。海外の研究によると「2007年に生まれた日本の子どもの半数が107歳より長く生きる」とされています。
こうした「人生100年時代」を踏まえて、政府はすべての国民が元気に活躍し続けられる社会を目指す政策検討の場として「人生100年時代構想会議」を2017年9月に設置しました。若者から高齢者まですべての人が活躍するには、人材への投資が重要だとしており、その政策の一環として「幼児教育の無償化」「リカレント教育」「高齢者雇用の促進」などが推進されています。
また寿命の長さのみならず、社会そのものや私たち個人のライフスタイルも大きく変化しています。従来の「学校→就職→定年」という生き方のモデルは、変化の激しい時代に100年という長い時間を豊かに過ごすことに、対応しきれなくなりつつあります。
長い人生を質高く歩むには?
現代を生きる私たちが、100年もの長い人生の質を高め充実したものとするには、どのようなことを考える必要があるのでしょうか?
柔軟なキャリアの選択
従来の日本は「終身雇用」が一般的でしたが、現在は副業を解禁する企業も増えました。2018年1月には厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成し、国としても企業や労働者が安心して副業や兼業に取り組めるための環境整備を推進しています。
これは働き方が自由になっているという一方で、一つの企業に留まり続けることが難しくなっているとも言えるでしょう。今後は、複数のキャリアを同時進行する「パラレルキャリア」もより一般的になっていくと考えられます。従来の働き方にとらわれず、柔軟にキャリアを選択していく必要があるでしょう。
経済的な安定
長生きすることは、生きるためのお金がそれだけ必要になるということです。しかしいくら健康寿命が長くなっているとは言え、いつまでも若い頃と同じように頭や身体が動くわけではありません。
定年後もさらに続いていく生活を支えるためには、若い頃とずっと同じ仕事ではなく、他の職業や働き方も検討しなければならないでしょう。年老いてからも経済的な安定を確保する手段について今から考え、知識やスキルをアップデートする必要があります。
テクノロジーによる社会環境の変化
AIやIoTなどの技術革新は、私たちの働き方や生活様式を大きく変えるものです。自動化が進み、多くの仕事が機械に置き換えられる可能性が懸念される一方で、これまでなかった新たな職業が生まれたり、効率化が進むことによって別のことに注力できるリソースが生まれたりといった、ポジティブな面も多くあります。
またコロナ禍を経て、リモートワークのような新しい働き方も世の中に広がりました。テクノロジーの利用を経済的な安定につなげて行くには、柔軟な思考と学び続ける姿勢が求められます。
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リスキリングとリカレント教育との違い
人生100年時代を歩んで行くには、世の中そして自らの変化に対応するために、大人になっても学び続けることが重要な鍵となるでしょう。大人の学び直しについては、政府が推進している「リカレント教育」と関連して「リスキリング」という言葉もよく聞きます。この二つは何が違うのでしょうか。現状、法令で言葉の定義が決まっているわけではありませんが、一般的には以下のように区別することが多いようです。
リカレント教育
リカレント教育は、学校教育を離れた社会人が、仕事に求められる能力を磨くための学びをおもに指します。まったく新しいことを学ぶというより、現職に生かすためのスキルアップという意味合いが強いものです。
労働者の主体的な学びに加えて、職場における人材開発として企業と労働者がともに取り組むことも必要であると考えられており、厚生労働省では「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」を策定しています。
リスキリング
リスキリングは、新しい職業に就くため、もしくは現職におけるスキルの大幅な変化に適応するためといった「未来に違うことをやる」ために、新たなスキルを身につけることを目的とした学びを指す場合が多いです。
「経済産業省リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」では、雇用主の変更を伴う転職を目指している方が対象となっています。