InRed世代に読んでほしい書籍をご紹介!今回は、『酒寄さんのぼる塾晴天!』(ヨシモトブックス)を出版した、お笑い芸人・ぼる塾の酒寄希望さん推薦の2冊です。
食をテーマに描かれる旅と友情のグルメエッセイ
料理家・高山なおみさんのエッセイはとても不思議です。穏やかに淡々と綴られているのに激しい情熱を感じられ、それでいて艶っぽいのです。『諸国空想料理店』は、高山さんがかつて吉祥寺にあった飲食店に勤めていた時のエッセイとレシピが収録されています。ペルーに行った時のお話は、気温、匂い、現地の人たちの表情までわかるほど臨場感があり、一緒に旅をしているようです。高山さんの文章を読むといつも布団の中で守られているような不思議な気持ちになります。
『胃が合うふたり』は胃袋のソウルメイトであるふたりが、ともにお店で食べた食事を各目線で描いているのですが、ただの友情エッセイでもグルメエッセイでもない、内側の部分まで描かれた一冊です。食という大きな共通点がありながらも、「なぜこのふたりは一緒にいるの?」と勝手に考察してしまうほど、関係性が複雑に思えるのです。まるで映画『テルマ&ルイーズ』を見ているような気持ちに。共通点を取り払った時、「それでもこの人でなくてはならない」という友情は、誰にだってあると思います。そして改めて〝胃袋のソウルメイト〟というピースをはめた時の無敵感。食べ物はとても美味しそうで、ふたりの関係性は苦しいほど切なく愛しい。読了後にこんなに満たされた本は初めてです。女の友情は素敵。
文=酒寄希望
『諸国空想料理店』
高山なおみ著/ちくま文庫
料理人・高山なおみによる初のエッセイ集。旅先で出合った料理を日本で作れば一気にその地へトリップ! 心身の疲れも切ない恋も、温かい料理がほぐしてくれる。文庫化にあたり近況を加筆。レシピも多数収録されている。
『胃が合うふたり』
千早 茜著、新井見枝香著/新潮社
同じ料理を食べながら「ふたり」はそれぞれ何を考えていたのか? 人気作家とカリスマ書店員がともにした11の食事を、それぞれの目線から見た景色や人生の味わいまでも鮮やかに描き出す、美味絶佳のWエッセイ集。
今回、おすすめ書籍を教えてくれたのは…
酒寄希望さん
1988年生まれ、東京都出身。2019年に田辺智加、きりやはるか、あんりの4人で結成したお笑いカルテット「ぼる塾」のリーダー。結成直後に育休に入り現在は舞台の他、コラムの執筆等も行う。
『酒寄さんのぼる塾晴天!』
¥1,595/ヨシモトブックス
ぼる塾が繰り広げる日常のちょっとした楽しい出来事を、著者の愛情詰まった文章で綴る。泣いて笑って癒やされる女同士の友情エッセイ第3弾。