忘れられない海賊盤、ウイングス『ROCHESTRA』
ジャケが斬新だった『ABBEY ROAD West Minster-1』
海賊盤の話になったついでに当時、レコード屋でよく見かけた海賊盤のレコードを思い出してみる。よく行っていたのは相変わらず西新宿のKENNIEだが、この頃から各所に海賊版を扱う店が増えてきて業界自体が盛り上がっていた気がする。学校の帰り道によく立ち寄った神保町の三省堂近くにも海賊盤専門店が出来ていて(店名は失念)、よく覗いていたものだ。
この時期の特徴は『アビー・ロード』まわりのものが充実していたことだろうか。正規盤のアウトテイク写真が使われた『Return To Abbey Road』『ABBEY ROAD West Minster-1』が目を引いたし、音源も珍しいものばかりだった。1曲目に「ハー・マジェスティ」のフルバージョンを置いたピクチャー盤『ABBEY ROAD SESSION』も魅力的。高価ゆえ買える枚数は限られていたが、中学校時代の友人Aくんが積極的に海賊盤を集めはじめており、たまに家に遊びに行ってはそれを聞かせてもらったりしていた。『アビー・ロード』関連以外では、浅井慎平の写真をジャケットにフィーチャーした『TOUR YEARS』、高層ビルの下に渋滞した車が映るシュールなジャケの『RENAISSANCE』などがこの頃の代表盤だろうか。正式発表の213曲を聴いたあとは貴重音源ばかりが気になっていた。
そしてこの年、に買った海賊盤の中で個人的に忘れられない一枚ある。タイトルは『ROCHESTRA』といって、ウイングスの79年のロンドン公演を収録したもの。例のカンボジア難民救済コンサートのウイングスのコンサートだけを抽出した内容への興味はもちろん、白いカラーレコードが特徴で、一瞬で心を奪われた。この美しいレコードが欲しい、と思ったものの確か5000円くらいしたので、即購入は出来ず、それを見つけた神保町のロックワークショップという中古屋に学校帰りに何度か足を運んで逡巡し、誰かに買われないよう願いながら無事まだあるという確認し、2ヶ月だか経ったあとにようやく購入をしたという思い出がある。
ジャケットはカッコいいが、音の方はオーディエンス録音であまり魅力的とはいえず、その後あまり聞かなくなってしまったが、今でも大事にレコード棚に置いてある思い出の海賊盤である。