女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期障害進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まった老化現象についてありのままに綴ります。第9話は「求む、更年期バッジ」。
【日日更年期好日】
座らせてください、ほんの少し
(写真:iStock)
電車に乗っていたら、急に目眩と暑さ(のぼせ)に襲われたことがある。ただ顔が真っ青とか、具合の悪そうな雰囲気を醸し出しているわけではなく、見た目は元気そうなおばさんだ。
(うう~…ちょっと座りたいな…。座るだけでいいんだが)
目の前にヘッドフォンをつけて、スマホから流れる動画をガン見で座っている若い男性がいた。彼、この私に席を譲ってくれないか。でもいきなり話しかけて、
「すみません、更年期の症状が出ちゃって、足元が少しふらつくものですから座席を一瞬だけでも代わっていただけないでしょうか」
こんなことを言おうものなら、変質者と間違われる。もし車両内で座り込んだら、私みたいなお節介おばさんが「あなた、大丈夫?」と寄ってきて、要救護者となって、病院送りになって、実家の両親に連絡が飛ぶなんて、大人としての面目がなさすぎる。
そんなことを考えて目眩と格闘しているうちに、最寄駅に到着した。
駅に到着するとついさっきまでのしんどさが消えていた。自分でスポーツドリンクを買って、駅構内で小休憩。そして何事もなかったかのように帰路に着く。
更年期症状とは重病ではないけれど蓋然(がいぜん)性が高く、予測不可能なことが起きるのです。
【こちらもどうぞ】待ったなしの更年期、すこぶるつらい「おばさんの生理」どう乗り越える?
(広告の後にも続きます)
『更年期バッジ(仮)』の配布どうだろう?
『更年期バッジ(仮)』があるとしたら、こんなイラストだろうかと描いてみた(写真:著者、無断転載禁止)
電車での一幕を経て、ふと「更年期バッジが欲しい」とひらめいてしまった。
私の生涯に出番はなかったけれど、妊婦さんがつけている『マタニティマーク』に近いものを、40代から希望者に自治体で配るのはどうだろう。
『マタニティマーク』と違ってけしてハッピーオーラはないし、自らおばさん宣言をしているようなものなので、あくまでも任意。ずっと身につけているわけでもなく、症状が出てきたらバックからハンカチのようにそっと取り出して、ヘルプを出す。
「私ね~、更年期なのよ~、つらいからその席代わってくれない?」
そういった押し付けではない。どちらかというと、大騒ぎをしなくても大丈夫だというサインである。
「すみません、ほんの一瞬でいいので、座らせてもらったら、すぐに立ち直ります」
こんなふうに解釈をしてもらうためのサインである。他にもオフィスで更年期症状が勃発した際に使ってもらうのもどうだろう。先日、とある仕事相手の男性と更年期について雑談をしていたら、見た目が通常通りなので、女性のしんどさが分からないと言っていた。
映画『夜明けのすべて』では主人公の藤沢美紗(上白石萌音)が、月経前のPMS症状が出ると、職場の同僚に対しても怒りを爆発させていた。小さな職場なので皆がPMSのことを恒例行事のようにしてくれていた。でも現実的にすべてのオフィスで、社員の納得が得られるとは限らない。そんな時に提示する『更年期バッジ(仮)』である。