1970年代にヘビーデューティーアイビー=“ヘビアイ”という言葉を用い、いち早くアウトドアスタイルを提案した小林泰彦さん。今や世界でも注目されるこの現象が、この冬“ヘビトラ”の名のもとに再び再燃しようとしている……!

「日本のアウトドアファッションのブームは小林泰彦さんの仕掛けだった」ーーW・デーヴィッド・マークス

「アイビーと『MEN’S CLUB』とジーンズとアウトドアと『POPEYE』は、すべて小林さんによって繋がるんです」。

日本の戦後メンズファッションに精通した『AMETORA』の著者W・デーヴィッド・マークスさんは、小林泰彦さんをこう表現する。

60年代から『MEN’S CLUB』などで活躍していた小林さんは、少年時代からの登山愛好家。アメリカ取材で目にしたアウトドア文化を「ヘビーデューティー」と定義し、当時のメンズファッションにおける一大ムーブメントだったアイビーと合体させた、「ヘビアイ」というスタイルを1975年に提唱した。

『POPEYE』やビームスの誕生に先駆けたこの提案は、のちのメンズファッションに絶大な影響をもたらすこととなった。

そんな小林さんがこの冬、なんと90歳にして新刊書籍を出版。タイトルは“ヘビーデューティートラッド”を略した『ヘビトラ大図鑑』! デーヴィッドさんとの対談はもちろん、盛りだくさんの描き下ろしイラストやアーカイブアイテムが掲載された一冊を、ぜひ書店で手に取ってもらいたい!

小林泰彦さん(右)|1934年東京生まれ。59年にイラストレーターデビューし『MEN’S CLUB』や『POPEYE』『山と渓谷』などの雑誌で活躍。兄は小説家の小林信彦さん

W.デーヴィッド・マークスさん(左)|1978年オクラホマ州生まれ。日本のファッションやアートについての執筆活動を続け、戦後の洋服文化を網羅した『AMETORA』で話題を集める

少年時代から山登りを愛好していた小林さんに、アウトドアグッズのディテールを語らせたら右に出るものはいない! 写真は小林さんが少年期に買ったドイツ製のリュックサック。デザイン的には評価の高いドイツ製リュックだが、構造的には色々と欠陥があるとのこと。

1960年代まで、一流の山道具といえばフランス製しかなかったと語る小林さん。アメリカに山登り文化が存在することを知ったのも、1970年代に入ってからだった。こちらはガリビエールのマウンテンブーツで、当時「スーパー・ガイド・モデル」と呼ばれていたそう。

小林さんが1977年に出版し、当時の若者から熱狂的に支持された『ヘビーデューティーの本』と、W.デーヴィッド・マークスさんがその功績に改めて脚光を当てた2015年の書籍『AMETORA』。そして2024年末、その歴史に新たな1ページを刻む『ヘビトラ大図鑑』が登場する!

こちらは木製のフレームに帆布製の袋を固定した「トラッパーネルソン」と呼ばれる伝統的な山道具で、小林さんが1973年にアラスカ州アンカレッジで発見したもの。1920年代にシアトルの漁師ネルソンがつくった、フレームパックの元祖とも呼べる歴史的なアウトドアギアだ。

『ヘビトラ大図鑑』2024年12月12日発売予定!

1934年生まれの小林さんが、数十点ものイラストや文章を描き下ろした入魂の一冊。『POPEYE』創刊メンバーだった粕谷誠一郎さんが編集した、トラッド好き必携のまさに“図鑑”だ。発行元/トゥーヴァージンズ

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(出典/「2nd 2025年1月号 Vol.210」)