ダンジョンRPG「風来のシレン」シリーズ最新作『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録』のSteam版が、2024年12月12日にリリースされます。本稿では、本作の魅力やPC版の特徴の紹介に加え、本作の開発者インタビューもお届けします。
『風来のシレン6』開発者インタビュー
発売後も約1年にわたってアップデートやコンテンツの追加が行われた『風来のシレン6』。今回は本作の制作を担ったディレクターの櫻井啓介さん、プロジェクトマネージャーの篠崎秀行さんのおふたりにインタビューを実施しました。
――「風来のシレン」は、1作目となる『不思議のダンジョン2 風来のシレン』が1995年に発売されて以来、日本のローグライクゲームの金字塔として多くの人たちに親しまれてきた人気シリーズですが、今作『風来のシレン6』はどのようなコンセプトで開発されましたか。
篠崎秀行さん(以下、敬称略):原点回帰!という言葉を掲げ、スーパーファミコン版の『風来のシレン』、そしてNINTENDO64の『風来のシレン2』といったあたりを意識し開発しました。
『風来のシレン6』は「グラフィックスを3Dにする」ことを早期に決めましたが、3Dだからゲーム全体が重くもっさりしているなどと言われないためにも、設計段階から「快適に遊べる」ということを中心に考えました。
櫻井啓介さん(以下、敬称略):前作『不思議のダンジョン 風来のシレン5 フォーチュンタワーと運命のダイス』(以下、風来のシレン5)では、システムがかなり複雑になってしまいました。
今回は『風来のシレン6』から始める人にも受け入れられるように、初代のように一度シンプルにしたうえで、「しっかりとしたやりごたえのある3Dシレンとして作ろう!」と掲げて開発しました。
――国内累計出荷数が20万本突破し、シリーズファンだけではなく、初めて「風来のシレン」シリーズに触れたプレイヤーにも好評です。どのような点が新規層にも受け入れられたと感じていますか。
篠崎:「新規層に受け入れられたのか」といったところは正直にわかりませんが、まずはこれまで「風来のシレン」シリーズを楽しんできた方々が「これがシレンだよね!」と楽しんでもらえるもの。この考えを崩さずに制作できたことが、結果的に受け入れて頂けたのではないかと思っています。
櫻井:倒れたら最初のフロアからやり直しになるシステムはハードルを高く感じるのですが、しっかりと倒された経験が糧になり、「次はこれをこうして……」と考えて、実際に倒された階を突破した!という快感を新規層にも体感して頂けたと感じています。
――約30年続くシリーズ最新作『風来のシレン6』において、他者と同じダンジョンを攻略できる「パラレルプレイ」は画期的な仕組みだったと見受けられます。実装を決断した理由やユーザーからの反響について、改めて教えて下さい。
篠崎:「同じダンジョンを遊ぶことができないか」といったところがきっかけのひとつだったと思います。ユーザーの皆さまからは面白いといった意見、そして「公式から配信するパラレルプレイといったものを楽しく遊んで頂けている」という印象がありますね。
櫻井:「新しいコミュニティ方法として共有できるものはないか」と考えた時に、まずは風来救助のいち要素として、「救助依頼者がどんな冒険をしたのか」を追体験できないかと捉えました。そのうえで「同じフロア構成での並走」といった部分に着目し、シレンプレイヤー同士の交流になればと実装をしました。
実際に一部のプレイヤーですが、パラレルIDを受け継いでいくリレープレイや同じパラレルを早くクリアする大会など配信で見かけて、うまくいっていると感じています。他にも、絶体絶命になったプレイヤーがうまいプレイヤーに打開策を聞くときにも活用していただければと思います。
余談ですが、パラレルプレイを使用すると、その先のフロア構成を見ることができてしまい一部のプレイヤーには「ズルができてしまう」と感じる人もいましたが、昨今ではバックアップ等の他の方法でも同じことができてしまうため、結果的にそのままにしました。
――『風来のシレン6』では高難度ダンジョンの追加を含め、前後編にわたってDLCが配信されました。なかでもシリーズ人気キャラ「アスカ」の再参戦やシレンの相棒「コッパ」の初プレイアブル化は大きな注目を集めたと思われますが、この2キャラを実装するにあたって開発陣が意識したポイント等があれば教えて下さい。
篠崎:発売後、「アスカに見た目だけでも変えて遊びたい」という意見を多くのユーザーから頂きました。ただ、「見た目が変わるだけで遊びがそのまま変わらないのは面白くない」と思いましたので、各キャラで異なる遊びや体験が得られるように意識して制作しました。
櫻井:「コッパ」の場合、「攻撃は一切できない極限を求めるヘビーユーザー向けの挑戦状」として考えていたのですが、理不尽感が強くなってしまったため、逃げ能力を徐々に足して、「理不尽と高難易度の境目」を探って制作しました。
「アスカ」はシレンのように、「武器と盾が装備できないとアスカじゃない!でも全く同じだと面白くない」と思い、ユーザー間で盛り上がる「盾を強化するか武器を強化するか」というのを、アスカの場合は最適解をいろいろ考えられるように意識して調整しています。あまり知られていませんが、アスカは攻撃や投擲の命中率も少し変わっています。
――かつては「風来のシレン」シリーズをプレイしていたけどいまは離れてしまい、『風来のシレン6』でまた興味を持って「プレイしてみようかな」と思っている読者に対して、本作のアピールポイントを教えて頂けますでしょうか。
篠崎:ナンバリングとして『風来のシレン6』とはついておりますが、シナリオ的なつながりも知っていれば……ぐらいで、今作から遊んでもなんら問題ないように制作しています。また、今作は前作『風来のシレン5』よりも マイナス要素となるような道具も少なく、覚えなければいけない点も減っていたりもします。遊ぶ際の快適性といったところに非常に重点を置いていますので、気軽に遊んでいただけると幸いです。
櫻井:本作は過去シリーズ一番に親切な作りになっているので、怖がらずちょっとずつ経験して、攻略方法を見つけてもらえればと思います。Steam(PC)版では画面共有も手軽に行えるので、過去作をプレイしていた友達と画面を見せあいながら、過去の経験をちょっと教えてもらってプレイするのも楽しいと思います。
今作に限りませんが、「風来のシレン」シリーズはRPGと思わず、シューティングゲームやパズルゲームのような「ステージクリアするもの」「スコアのようにフロア数を徐々に伸ばすもの」と思ったほうが倒されたときのショックは少ないと思います。
――ナンバリングタイトルのみならず、派生作品を含めて長年紡がれてきた「風来のシレン」ですが、今後のシリーズ展開を考えるうえで開発サイドの展望や次回作以降の構想等があればうかがいたいです。
篠崎:いい意味で変わらず、いい意味で「こんな要素を入れてきたのか」と感じられる作品を作っていきたいと考えています。まだまだアイデアとしてありつつも、作品に入れられていない要素はたくさんありますので、それらをどう生かすか今後もしっかり考えていきたいと思います。
櫻井:昨今のローグライクやローグライトと呼ばれる新しい流れを取り組みながら、より本質的なシレンの面白みを倍増できる仕組みを考えて行きたいと思います。