およそ兵器というものは、その弱点となる部分があれば、極力それを隠そうとするもののはずです。ところがその弱点を隠そうとしないばかりか、誇示するようなモビルスーツが見られます。



みぞおちのあたりがコックピット。「ここにパイロットいますよ」と言っているようなものでは? 「ROBOT魂〈SIDE MS〉RX-78-2 ガンダム ver. A.N.I.M.E. ~リアルマーキング~」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

【比較画像】コックピットハッチ周りの色に注目 こちらが「ジム」「ザクII」「ザクII改」です(4枚)

コックピットって急所ですよね?

 アニメ『機動戦士ガンダム』にて、主人公「アムロ・レイ」の駆った「RX-72-2 ガンダム」は、ご存じのように「コアブロックシステム」を採用しています。

 パイロットが乗り込む「コア・ファイター」部分は、「ガンダム」全体から見ると胴の部分にあたり、そしてコックピットはその中央、脇腹にあたる赤いカラーリングに挟まれた、青い部分になります。

 改めて冷静に眺めてみると、これは、モビルスーツ(MS)の急所たるコックピット部分を、わざわざ「ここですよ」と敵に教えているようなもの、という見方ができるのではないでしょうか。射撃などでも実に狙いやすいといえるでしょう。もっとも、「ザク・マシンガン」は弾かれるでしょうし、ジオン軍にビーム兵器が広く採用された物語終盤のころには、そんなところにビームをくらうようなアムロではなかったでしょうけれども。

 この「狙いやすいコックピット」問題は連邦軍の量産型MS「ジム」もしかりで、そのコックピットは、白い脇腹と下腹部に囲まれた赤に黒のハッチという配色でした。まるで狙って下さいと言わんばかりです。

 なぜそのように狙いやすいカラーリングなのでしょうか。メタなメカニックデザイン上のお話はさておき、物語のなかでの説明は、本稿執筆にあたっての調査では見つけられませんでした。

 そのように考えると、「動力パイプという弱点むき出し」で知られる「ザクII」も、コックピット部分たる胸の中央は黒で、周囲とは色違いではあります。ただ、周囲の色が緑暗色であるため、「ガンダム」や「ジム」ほどは目立たないといえるでしょう。「ザク」に「兵器っぽさ」をより感じるのは、このあたりに理由があるのかもしれません。

 ただし、OVA『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』に登場した「ザクII改」のコックピットハッチは、緑暗色のボディに対しとても目立つ赤でした。ジオンの技術者はどこで間違えたのでしょうか。

 ただ一方で、もしかするとそれは「ジオン軍人の気概」と考えられるかもしれません。

 ご存じのように、ジオン軍のエースパイロットたちは、搭乗機をとても目立つパーソナルカラーに染め上げていました。戦場において目立つカラーをまとう理由のひとつは、「俺を狙ってみろ」「俺はここにいるぞ」という、敵方へのメッセージです。コックピットハッチをわざわざ目立つ赤にするのが「ここを狙ってみろ」という挑発だとすれば、敗色濃厚となった一年戦争末期を戦う彼らジオンのパイロットは、そのように自らを奮い立たせていたのでしょう。

 日本の戦国時代に前田慶次(利益)が振るったという「皆朱槍」のようなもの、といえるかもしれません。「バーニィ」も、ああ見えて傾奇者だったのでしょうか。