『映画「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」』は子ども向けかと思いきや、実は大人に響いた!「『幸か不幸かは自分次第』という言葉が胸に刺さる」

2013年に刊行された同名児童書シリーズを実写映画化した『映画「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」』が12月13日(金)にいよいよ公開となる。「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」は、これまでにアニメ映画化やテレビアニメ化、さらに西武園ゆうえんちでアトラクション化されるなど、子どもたちを中心に高い人気を集めてきたが、今回、かねてより同シリーズの映画化を熱望していたという中田秀夫監督によって実写映画化が実現。

MOVIE WALKER PRESSでは、そんな本作の親子試写会を実施した。すると、鑑賞後のアンケートから「ストーリー性、アニメや本では味わえないドキドキがいい」(小学5年生・女子)、「映画は迫力があった」(小学6年生・男子)という児童書やアニメに触れてきた子どもたちからの満足の声だけでなく、「欲深い人、現状に常に満足できない人にすすめたい」(40代・女性)、「自分の行動で運命が変わるので考えさせられる」(40代・女性)と、意外にも親世代に刺さる要素がちりばめられている作品であることが見えてきた。本来子どもに向けて書かれている児童書が原作の映画が、どうして世代を超えて親世代にも響くのか?参加者のコメントからその理由をひも解いていきたい!

赴任先の小学校でふしぎな駄菓子屋の噂を生徒たちから聞いた、新米教師の小太郎(大橋和也)。「銭天堂」というその駄菓子屋では、店主の紅子(天海祐希)が客の願いにぴったりの駄菓子を選んでくれるという。最初は真剣に取り合わずにいた小太郎だったが、周囲で銭天堂の駄菓子を買ったと思われる人々の様子がおかしくなり、密かに想いを寄せる大学時代の後輩、陽子(伊原六花)にも異変が起きてしまう。銭天堂に疑念を抱く小太郎だったが、やがて謎の少女よどみ(上白石萌音)が店主を務める「たたりめ堂」という駄菓子屋の存在を知る。銭天堂と紅子を敵視し、人々を惑わせるよどみを止めるべく、小太郎は紅子と共によどみを追う。

■子どもたちから大人気!そもそも「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」の魅力って?


子どもだけでなく、大人も楽しめる?親子に聞いた映画『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』の推しポイントとは / [c]2024 映画「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」製作委員会
まずは、アニメ化もされている原作「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」について紹介していこう。2022年には第3回「小学生がえらぶ!“こどもの本”総選挙」で第1位に輝き、子どもたちの間で瞬く間に話題を呼んだベストセラー。この「銭天堂」シリーズの好きなところを子どもたちに聞くと、

「普通のお菓子に見えるけど、食べてみるといろいろなことが起きて好き」(小学3年生・女児)
「ユニークなお菓子が出てきて、人によっては使ったあとが異なっていくところが好きです」(中学1年生・女子)
「駄菓子を買った人が、幸運になるか、不幸になるかがおもしろい」(小学4年生・女子)

と、銭天堂で売っているふしぎな駄菓子の効果と、駄菓子を手にした人たちの顛末を描くストーリーのおもしろさが魅力だということがわかった。

■子どもたちのセレクトのほうがピュア?気になる駄菓子をチェック!

次に『映画「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」』の大きな魅力の一つである、完全再現されたふしぎな駄菓子について見ていこう。見た目も名前もユニークで、思わず手に取ってしまいたくなるような駄菓子たちは見ているだけでワクワクする。子どもと大人にそれぞれ気になる駄菓子を聞いてみたところ、どうやら選択した理由によって心の清らかさがわかる結果に…。


これがあればテストに出る問題がわかる!「ヤマ缶詰」 / [c]2024 映画「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」製作委員会
多くの子どもたちが挙げたのは、学校の授業で活躍しそうな「ヤマ缶詰」と「型ぬき人魚グミ」。食べるとヤマ勘能力が冴えわたり、テストに出る問題が光って見えるようになる「ヤマ缶詰」には、「テストで出る問題がわかれば、勉強もしやすい」(中学1年生・女子)、「勉強する時に、どこをやればいいかわかるから」(小学5年生・男子)、「もっと勉強できるようになりたい」(小学5年生・男子)と、駄菓子の力を借りつつも勉強を頑張りたいという意欲的な声が集まり、


泳ぎが苦手な人にぴったり?「型ぬき人魚グミ」 / [c]2024 映画「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」製作委員会
食べると泳ぎが上手になる「型ぬき人魚グミ」には、「泳ぐのが遅いから、型ぬき人魚グミを食べてうまく泳げるようになりたい」(中学1年生・女子)、「食べるとすぐに泳げるようになるのがすごいなと思った」(小学3年生・女子)、「泳ぐのが苦手だから」(小学4年生・男子)という切実な願いが込められていた。

さらに、白衣とメガネを身につけて薬ラムネを処方すると、病気やけがを治せるという「ドクターラムネキット」を選んで「病気になった人を助けてあげたい」(小学3年生・女子)、「人助けができるから」(中学2年生・女子)と理由を添えるなど、心洗われる回答も目立った。


大人に大人気!違う国の人と話すことができる「バイリンガール」 / [c]2024 映画「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」製作委員会
なお、大人たちに人気だったのは、「海外旅行に行きたい」(40代・女性)、「リスクがあまりなさそうに見えたが効果がすばらしい」(40代・男性)という理由から、身に着けると違う国の人と話せるようになる「バイリンガール」や、「子どもだけじゃなくて、大人でもいくつになってもモテたい(笑)」(40代・女性)と声が挙がった、食べるだけでモテモテになれる「もてもてもち」。さらに「仕事で迷った時の判断に食べたいです(笑)」(40代・男性)と「ヤマ缶詰」をセレクトするなど、人生の酸いも甘いも知りつくした大人だからこその慎重かつ大胆な願望も垣間見えるような回答に。いくつになっても、願いを叶える駄菓子があるなら頼ってみたい!が本心のようだ。

■悪意を吸い取る、欲望が爆発!…クセのあるキャラクターに「おもしろいけど怖い!」の声が続出

続いて、本作のキャラクターに触れておこう。天海祐希扮する駄菓子屋「銭天堂」の店主、紅子について、「紅子さんが人の悩みを聞いて、それにあったもの(駄菓子)を出して幸せにするところがいい」(小学3年生・女子)、「アニメで見たままの再現でビックリ」(40代・女性)、「さすが天海祐希さん、紅子を良く表現されていました」(50代・女性)と絶賛する声が挙がったが、その声に匹敵するほど「怖かった」というコメントが多かったのが、上白石萌音演じる、よどみだ。


【写真を見る】「怖い!」の声が続出?「たたりめ堂」店主のよどみになり切った上白石萌音の怪演がすごい…! / [c]2024 映画「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」製作委員会
よどみは紅子をライバル視する謎の駄菓子屋「たたりめ堂」の店主で、相手の心の隙につけこみ、よからぬことを企んで人々を惑わせる。客から悪意を吸い取り、エネルギーにするという癖のあるキャラクターだ。そんなよどみには、「とてもおもしろかったけど、よどみが怖かったです」(小学2年生・女子)、「上白石萌音さんが演じたよどみのシーンすべてドキドキします!」(小学6年生・女子)との声が続出。大人からも「よどみの他人の不幸は蜜の味というのが人間っぽくて好きです」(40代・男性)、「迫力の演技で怖さがものすごく伝わった」(40代・女性)と上白石の演技を高く評価する声が。


おしゃれになりたいと願う陽子だったが… / [c]2024 映画「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」製作委員会
さらに、そんなよどみの餌食となるのが、小太郎の後輩で、ファッション誌の編集者となり悪銭苦闘している、伊原六花演じる相田陽子という“いまどき”の女性だ。「周囲から認められたい」という承認欲求を体現した姿には「欲望のおそろしさを表現しているところは興味深い」(40代・女性)、「たたりめ堂のお菓子を食べて狂っていくシーンが恐ろしくて印象に残った」(30代・女性)、「誰でもこうなるのは紙一重だと思う」(40代・女性)というコメントが集まった。

このように、『映画「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」』では、駄菓子の力に溺れてしまい欲を出しすぎてしまった人たちがひどい目に合っていく様も描かれている。そんな人間の“願い”の暴走を描いている点が、子どもだけでなく、大人たちの関心を集めた一因と考えられる。


美術予備校に通う、小太郎の妹まどか / [c]2024 映画「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」製作委員会
一方で、本作には、「生徒を守る気持ちが強い」(小学4年生・女子)、「地道な努力が大事だと生徒に諭していたシーンにグッときた」(30代・女性)という声が集まった大橋和也扮する教師の小太郎や、美大受験に向けて奮闘する小太郎の妹、まどかといったまっすぐな志を持つキャラクターも登場。彼らの欲望との向き合い方には“願い”を暴走させないヒントが隠れているのかもしれない。彼らに寄り添いあと押しする紅子の姿にも注目だ。

■実は大人にこそ刺さる…“願い”との向き合い方を考えさせられる『映画「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」』のメッセージ

キャラクターたちを通じて、「正しい選択をしているつもりでも、欲にしつこく毒されてしまうのが人間…本当に怖い」(40代・女性)、「欲って怖いと思うし、深かったです」(40代・女性)、「人の欲は切りがなく、怖いと思いました」(30代・女性)と、欲への恐怖を抱く大人の意見も目立ったが、児童書シリーズの実写化である本作は、決して子ども向けではなく大人に刺さるセリフやシーンがたくさんちりばめられている。「〇〇のようになりたい」「〇〇がしたい」といった羨望や願望は、誰もが一度は抱くもので決して悪いものではない。子どもから大人になるなかで、上記のような感情との付き合い方や向き合い方を考える場面は多いはず。映画を観た大人たちからは、「考えさせられた」「子どもに伝えたい!」という意見が散見した。


妖しげな駄菓子を提供するよどみ / [c]2024 映画「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」製作委員会
「『幸か不幸かは自分次第』という言葉が胸に刺さりました」(40代・女性)
「ずるかったり、悪かったりするのが人間だけど、それも認めたうえで自分がどう行動すべきかを(子どもたちに)考えてほしいと思いました」(50代・女性)
「自分の気持ちだけじゃなくて、他人を思いやる気持ちを大切にしてほしい。どんなことでもルールを守らないと自分に返ってくるから、ひとつひとつをきちんと考えたうえで判断しなきゃいけない」(40代・女性)


小太郎は大学時代の後輩である陽子に密かに想いを寄せる / [c]2024 映画「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」製作委員会
そして、子どもたちからは「楽しかった」というストレートな感想が多かった。下記コメントからも、この冬休みに親子で楽しむにはピッタリな作品だということはおわかりいただけるだろう。

「実写版はどんなかな~って、わくわくしていたけど、予想以上におもしろかったです」(小学4年生・女子)
「原作もおもしろいけど本では味わえないスリリングな味わいがある!」(小学5年生・女子)
「子ども向け映画と思っていましたが、人間の悪意やずるさが描かれており、大人でも見ごたえがありました」(50代・女性)
「児童文学の映画化かと軽く見ていたところもありましたが、大人にこそ響く内容もあるすばらしい映画でした」(40代・男性)

さらに、「普段、自分の気持ちを言葉にするのが苦手な息子と観に行きました。帰りに感想を話しながら今日受け取った大切なメッセージを共に考え向き合っていきたいと思います」(30代・女性)と親子で本作のメッセージについて会話したいという意見や、「この映画の続きを観たい」(小学5年生・男子)、「続編も期待しています」(30代・女性)と早くも続編を待ち望む声もあった。

ふしぎで少し怖い駄菓子を巡る人々のドラマを描き、原作ファンの子どもたちだけでなく、大人たちも大満足の様子だった『映画「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」』。本やアニメから飛び出してきたかのような銭天堂を舞台に、個性あふれるキャラクターたちが織り成す物語を、映画館で楽しんでみてはどうだろうか。


「銭天堂」の前で向かい合う、紅子と小太郎 / [c]2024 映画「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」製作委員会
構成・文/サンクレイオ翼