ホンダ・レーシング(HRC)は2025年から、IMSAスポーツカー選手権の最高峰クラスGTPにメイヤー・シャンク・レーシングが投入する2台のLMDh車両ARX-06のうち、93号車をセミワークス化。HRCのアメリカ拠点HRC US(旧HPD)の技術者が、ストラテジーやドライバーとの無線交信をはじめとしたレース運営を行なっていくこととなった。
この93号車のドライバーとしては、今年のスーパーフォーミュラでも活躍した太田格之進が2025年に、デイトナ24時間レースを含むIMSAの3戦にスポット参戦することも決まった。
12月11日(水)に行なわれた四輪モータースポーツ体制発表会でHRCの渡辺康治社長は、IMSAでのセミワークス活動について「将来のワークス活動の拡大にも活かせると考えています」と口にした。つまり、HRCとして将来的なワークス参戦を検討している四輪カテゴリーがあるのか……? HRCの展望について渡辺社長に尋ねてみると、HRCの四輪部門が今後、二輪部門のようにチームも運営にもっと携わっていくべきとの考えを示した。
「我々はレース会社ですから、レース全体をやる必要があると思っています。クルマだけ開発するのではなく、運営しドライバーやライダーを選び、スポンサーを取ってくる。それがレース会社です」
渡辺社長はmotorsport.comに対してそう語った。
「二輪はやっているんです。チームHRCを持ち、MotoGPも世界スーパーバイク選手権もトライアルもモトクロスも、全部自前のチームです。全部やるかどうかという問題はありますが、セミワークス活動のように、四輪ももう少し運営側に入っていくべきだろうと思っています」
「そのためには、徐々に勉強していく必要があるということです」
HRCの四輪部門における実質的なワークスチームは、スーパー耐久シリーズに参戦するTeam HRCのみであり、F1やインディカー、スーパーGT、スーパーフォーミュラなどといったカテゴリーではプロダクトをチームに供給する立場……二輪部門のワークス活動とは大きく異なる。
「小さなところですと、S耐は人員を総動員しているわけではありませんが、あれはHRCのワークス活動になります」と渡辺社長は続けた。
「そうやって色々と経験しながら、レース全体を知ることがレース会社には必要だと思います」
例えばスーパーフォーミュラを例に取ると、チームが用意したダラーラ製のSFマシンにHRCがエンジンを供給。ドライバー選択も基本的にはチームマターであり、渡辺社長も「良い機械を作って渡す」ことがHRCの仕事だと語った。
しかし、HRCが自らチームを運営し、四輪カテゴリーでのセミワークス/ワークス活動を発展させていくことで、チームを相手に仕事を行なうスーパーフォーミュラの現場でも「本当に同じレース屋としての会話ができるようになる」と渡辺社長は説明した。
また、HRCがチーム運営に関わっていくというのは四輪モータースポーツ全般に関することか? もしかしてF1にチームとして参戦する可能性もあるのか? 渡辺社長は次のように答えた。
「F1でそれができるかどうかは別として……F1はちょっと難易度が高すぎますね。ただ、あるレースプログラムで自分たちが勉強をすることで、エントラントの気持ちも分かるようになります」
そして、渡辺社長の話を隣で聞いていたHRC専務取締役の武石伊久雄は「F1だったら止めません」と笑いながら答え、追加参戦の計画があれば、順序立てて物事を進めていくと続けた。
「F1でもそうしたいとは思いましたよ。しかし物には順序があって、チームの難しさとかを経験した上で、上位カテゴリーか下位カテゴリーか、広がる何かが出てくると思います」
「それは経験しないとできないと思っています。渡辺さんもS耐に触れましたが、自分たちでやってみると意外と難しい部分があります。異なる視点で色々な課題が出てきます」
「じゃあIMSAだとどうなるのか? もっと知ってみたいし、その先に何かがあると思っています。それは人も技術もそうです。全てやってみないと次に何があるか分かりません。やるということが重要だと思っています」
そして武石専務取締役は、こう続けた。
「やりたいという意志はあっても、今は何も決まっていないので……ただ、そのための準備は、少なくともしておかなきゃいけないということではないでしょうか」