芦田愛菜 × 阿部サダヲ インタビュー 人間パートだけでなく細胞パートも感動を呼び、心が動かされる『はたらく細胞』

体内の細胞を擬人化し、彼らの働きを描いた清水茜の漫画「はたらく細胞」。新たな視点と分かりやすく学べることから瞬く間に話題となり、アニメ化もされた人気シリーズを実写映画化。原作にはなかった人間側の視点を入れ、永野芽郁、佐藤健ほか豪華キャストで描かれる[体内の世界]と、芦田愛菜と阿部サダヲが演じる[人間の世界]をリンクさせて綴る新しい映像体験を味わえる『はたらく細胞』は12月13日(金)公開。今回は、本作で人間側を演じ久しぶりの親子役で再共演となった芦田愛菜さんと阿部サダヲさんお二人にお話を伺います。

――「マルモのおきてスペシャル 2014」(2014)以来、本作で久しぶりに共演されていかがでしたか。

芦田:やっぱり安心感が凄くありました。久しぶりにお会い出来て嬉しかったです。【娘:日胡ちゃん】と【お父さん:茂】の親子の絆みたいなもの、二人三脚でやって来たところもあるので、そういった意味でも重なるというか、安心感と共にお芝居をさせて頂くことが出来て、嬉しかったです。

阿部:僕も嬉しかったです。それに芦田愛菜ちゃんの相手役で日胡ちゃんが憧れる先輩【武田新】を演じるのが加藤清史郎君なんだけど、彼も立派になって‥‥(感慨深そうな目)。

――もはや親心ですね。

阿部:そうだね(笑)。芦田愛菜さんはずっと凄い役者なんですよ。あのドラマの共演前から話題になっていて、実際にお会いして“本当に凄い”と思いました。子役という存在が変わったような気がしていました。今の子どもの役者さんは愛菜ちゃんを目指してやっている人が多いんです。この間会った子も「愛菜ちゃんみたいになりたい」と言っていました。凄いですよね。

芦田:本当ですか?嬉しいです。今回もそうですがシリアスな場面もあれば、コミカルな場面もあって、笑いあり涙ありの作品です。その2つを演じ分けられる阿部さんは凄く素敵だと思っています。試写で拝見した際は、コミカルな場面ではスクリーンの前で涙が出るくらい笑っていました。またシリアスな場面で【日胡ちゃん】が作ったお弁当を泣きながら食べているシーンがあるのですが、娘を想うお父さんの気持ちがヒシヒシと伝わって来て、胸が苦しくなっていました。そんな2つの演技を両方演じることが出来る阿部さんは素敵だなと思います。

阿部:人ってそうやって褒めるんですよね(笑)。詳しくは言えませんが、あのシーンは本当にいいシーンで僕も泣きました。

――人間パートのシーンもドラマティックでしたよね。では出演していない細菌パートも含めた映画全体を観ての感想を教えて下さい。

阿部:映像が凄いです。なかなか観ることが出来ない映像でアクションも凄かったし、(佐藤)健くんだけでなく、仲(里依紗)さんとかも皆が頑張っていました。CG処理はそんなに多くなくってエキストラの方も含めて本当に人がやっている事にビックリしました。僕らの時は、日常のシーンはエキストラの方も数人ぐらいで少人数でやってたからね(笑)。

芦田:そうでしたね。加藤さんが居る3人か、阿部さんと2人か、1人というのもありました。私の役は思っていた以上に私の身体の中がハチャメチャなことになっていたので‥‥。でも細胞たちパートにもヒューマンドラマみたいなものもあったりするんです。だから人間世界とリンクしてくるとそれがまた感動を呼ぶし、心が動かされます。本当に素敵な映画だと思いました。

――確かにいろんな感情を味わう映画でした、現に芦田愛菜さん演じる【日胡】が恋をするシーンではアドレナリンが出て、身体の中では凄いことになりますしね。

阿部:DJ KOOさんが神経細胞として登場しますからね(笑)。

ーーあのシーンでの感情表現がとても可愛かったです。コメディ的な演技アプローチはいかがでしたか。

芦田:楽しかったです。外のシーンを演じる時にこの感情の時、細胞さんたちがどうなっているのかを想像して“身体の中がこうなら外はこんな感じかな?”というちょっと不思議なアプローチをしていました。皆さんがサンバで凄く楽しそうにしていたという話は伺っていたので、私も凄くウキウキしていないと駄目だと思って、そうやって想像しながらの演技は楽しかったです。ただDJ KOOさんが神経細胞役として参加しているという話は途中から知ったような気がします。でもサンバ隊を呼んで、たくさんのエキストラさん達と皆で踊ったという話は、武内英樹監督から伺いました。体内のワクワク感と一致していないといけないので、不思議な役作りでした。

――阿部さんのトラックのシーンは秀逸過ぎて、経験があるなぁと笑ってしまいました。

阿部:そうですね。「ノリノリでトラックに乗って下さい」と言われて、運転するんだけどアレ(トイレに行きたい現象)が来ちゃう(笑)。そこから「絶対負けない!」(歌:エイジアエンジニア)という曲を歌ってくださいと指示を受けて、全部言われた通りに演じただけです。

芦田:本当に面白かったです、涙が出ました(笑)。

阿部:トラックを運転しながらトイレを我慢しているシーンは、実際には高速道路ではなくスタジオ撮影でCGでやっているんです。意外と寂しいというか、何もないところでやっているので逆にテンションを上げているんです。「ウォ~」と言ってみたり、誰もいないのに挨拶してみたり、「自由に演じて下さい」と言われたので自由に動いていました。出来上がった作品を観て、高速道路を実際に走っているようにちゃんと見えると思いました。

芦田:そうだったんですね。全然気づきませんでした。

――お二人はドラマや映画にと多くの作品に出演していますが、これまでに仕事で挫折したことはありますか。

阿部:ないですね‥‥、うん、ない。「この仕事、自分に向いてる」と調子に乗ったこともないし、考えたことないです。

――この仕事を続けられた要因はなんですか。

阿部:“もっとこうすれば良かった。次はこうしよう”と思えるからだと思います。“このシーン、もう少しこうすれば良かった”と考えないことはないかもしれません。“次はこんなアプローチをしよう”といつも考えています。いつも同じような役ばかりを演じることもないですし、色々な役をやらせてもらっているので。今回のようにお互いに年を重ねたら、また違った親子関係を演じることも出来ますし。

芦田:自分の出演作品を観て“もう少しこうすれば良かった”と反省する部分は結構あります。その失敗を糧に“もう一度頑張ろう”と思う部分もあります。それでも、挫けそうになった時は「自分はお芝居が好きだ」「作品作りをすることが楽しい、好きなんだ」という原点みたいな気持ちを忘れないようにしようと思っています。その気持ちを思い出せばまた“頑張ろう”という気持ちになるので。

――お2人ともお芝居に対する探求心があるのですね。

阿部:お芝居は楽しいです。

芦田:皆で1つの作品を作り上げていくのは楽しいです。

阿部:ちなみにさ、愛菜ちゃんは脚本を書いたりしないの?

芦田:いやいや、それはもう。読む専門です。

阿部:最近の若い子は脚本を書いたり、監督したりするから、愛菜ちゃんもいずれはと思ったんだけど。

芦田:難しそうですよね。

阿部:僕は監督を絶対したくないんです。

芦田:そうなんですか‥‥?!私もいち俳優の方が向いていると思っています。

阿部:そうだよね。監督の話が来ても断ろう!

一同:(笑)

――また機会があれば、共演されるかもしれないですし楽しみですね。

芦田:もしかしたら阿部さんの気が変わって監督されているかもしれませんし(笑)。

その時は呼んで下さい。

阿部:いや、やらない。もし監督していたら「嘘つき」と言っていいよ(笑)。

今年は多くの作品でお会いしていた阿部サダヲさん。お忙しい中、映画館にはよく行くそうで最近、良かったのは『Cloud クラウド』(2024)と言っていました。「菅田くん主演で、(荒川)良々や赤堀(雅秋)さんも出ているしね、良かったなぁ」とのこと。そんな阿部さんと「マルモのおきて」以来の共演を果たした芦田愛菜さん。安定の圧巻の演技力で、私たち観客を深い感情の世界へと誘ってくれるのです。オールスターキャストにより、人間の世界と細菌の世界。このキャストでしか到達し得なかったアクションあり、笑あり、涙ありで、身体を大切に思う気持ちが膨らむ作品ですよ。

取材・文 / 伊藤さとり
撮影 / 岸 豊

作品情報

映画『はたらく細胞』

高校生・漆崎日胡は、父親の茂と2人暮らし。まじめな性格で健康的な生活習慣の日胡の体内の細胞たちは、いつも楽しくはたらいている。一方、不規則不摂生に日々を過ごす茂の体内では、ブラックな労働環境に疲れ果てた細胞たちがいつも文句を言っている。親子でも体の中はえらい違いだった。仲良し親子のにぎやかな日常。しかし、その体内への侵入を狙う病原体たちが動き始める。漆崎親子の未来をかけた、細胞たちの「体内史上最大の戦い」が幕を開ける。

監督:武内英樹

原作:清水茜「はたらく細胞」(講談社「月刊少年シリウス」所載)
原田重光・初嘉屋一生・清水茜「はたらく細胞BLACK」(講談社「モーニング」所載)

出演:永野芽郁、佐藤健、芦田愛菜、阿部サダヲ

配給:ワーナー・ブラザース映画

©清水茜/講談社 ©原田重光・初嘉屋一生・清水茜/講談社 ©2024映画「はたらく細胞」製作委員会

公開中

公式サイト saibou-movie