「魔法使い」や「異世界系」のマンガには、やたらと長いタイトが多いですよね。20、30文字は当たり前です。これには理由があります。ちなみに、現在(2024年12月)「週刊少年ジャンプ」連載中のマンガタイトル平均は約7.5文字です。
『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました』13巻(KADOKAWA)
【画像】え…っ? 「ぱっと見すごっ!」「表紙のどこに文字収めてる?」こちらが「タイトル100文字越え」のマンガです
理由は「目立つから」?
「最近、とんでもなく長いタイトルのアニメ・マンガが多くないですか?」
こういった質問は、Yahoo!知恵袋などでも10年ほど前から言われていますが、意外と理由を知らない人も多いようです。そこで、誰でも分かる「最近のアニメ・マンガのタイトルが長い理由」をざっくり説明しましょう。
実は、理由は単純で「目立つから」です。問題は、「なぜ目立つ必要があるのか?」です。
「アニメやマンガ」と言いましたが、もともとの原作は「ライトノベル」の小説が多くあります。「ライトノベル(以下、ラノベ)」とは、weblio辞書実用日本語表現辞典によると「小説のジャンルの一種。定義は曖昧とされるが、一般的にアニメ風のイラストを多用した、アニメ作品にも通じるファンタジー性の高いストーリーなどをおおむね共通の特徴とする作品群の総称」とあります。
「小説家になろう」という、素人でも手軽に小説を投稿できるWebサイトをご存じの方も多いでしょう。同様のスタイルのサイトはたくさんあり、読者はスマホやPCなどで面白そうな作品を物色します。
投稿者は小説を更新し続け、人気が高まると書籍化されます。これがマンガ、アニメ、映画、ゲームなどと広くメディアミックス展開されると、まさに一攫千金となるでしょう。近年では、『薬屋のひとりごと』(2025年1月から第2期アニメ放送)が大きな成功例です。
その指とまれ!
「なぜタイトルが長いのか?」本題はここからです。小説投稿サイトには、毎日たくさんの新作がラインナップされます。しかし、訪れた読者が全部を読むわけがありません。だいたいが、スクロールしてスルーです。
投稿者は「なんとか自分の小説をタップして読んでほしい!」と祈っています。そして、読者の目に留まり指を止めるために生まれたのが、「長いタイトル」という作戦です。
「タイトルで概要を説明すると、読む前からイメージさせられる」というメリットがあります。読者も時間を無駄にしたくないですし、地雷は踏みたくないので、あらすじを読むようなタイトルは好都合なわけです。
最初の成功例が、2008年『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(16文字)だったとされており、15年ほど前から徐々に振り切った長さのタイトルが増えたことになります。
実際、10文字以内の短いタイトルよりも、20文字以上あるほうが読まれやすい分析結果もあるそうで、2023年の某投稿サイトから書籍化された作品タイトル平均文字数が約35だった、という記事もありました。特に新人作家にこの手法は効果的でしょう。ヒット作を出して固定ファンが付けば、その後の新作に長いタイトルを付けなくても良いはずです。
あらためてざっくり説明すると、「最近の、マンガ・アニメのタイトルが長い理由は、そもそもWebサイトのラノベ小説を読んでもらうための作戦で、目立つから」です。他にも、「タイトルが他と同じにならない」など、メリット要素はいくつも考えられます。深掘りしたい方はさらに調べてみてください。
もちろんデメリットもあります。たとえば「長くて覚えられない(略しにくい)」「書籍化(マンガ化)したとき背表紙に収めにくい」「アニメ化が難しい(ラテ欄に収まらない)」「単純にうざい」などがあるでしょう。
ちなみに、筆者の個人調べですが、書籍化されたラノベ小説のタイトルで最長文字数はこちらで101文字でした。
『無駄だと追放された【宮廷獣医】、獣の国に好待遇で招かれる~森で助けた神獣とケモ耳美少女達にめちゃくちゃ溺愛されながらスローライフを楽しんでる「動物が言うこと聞かなくなったから帰って来い?今更もう遅い」~』(著:茨木野)
このような、メインタイトルと「~」以降のサブタイトルが長い、というパターンの作品はとても多いです。
また、TVアニメ(単発を除く)で最長タイトルは、おそらくこちらで48文字です。
『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました2nd』(著:ざっぽん)
2024年に放送された同シリーズは、『真の仲間』の略称で人気です。
長いタイトルは読まれるために効果的なのかもしれませんが、逆に短いタイトルの作品は「筆者に自信があるのではないか」とも思います。
(※タイトルの文字数には、記号もカウントしています)