Hasselblad X2Dの発売をきっかけに、中判のミラーレス機を富士フイルムからHasselbladへと移行したわけだが、それ以前には富士フイルムのGFXマウントのみならず、XマウントでもSpeedmasterを所有していた遍歴がある。
ちなみに、XマウントのSpeedmasterについてはLマウントに移行した今でも所有しているお気に入りの一本だ。
フォトグラファーとしてのキャリアで意図せず蓄積することになったSpeedmasterに対する経験値。Xマウントの35mm F0.95を愛用するがゆえに高まった期待値だが、GFXマウントの65mm F1.4には「あと一歩」と感じさせるポイントがあった。それが今回の80mm F1.6でどれほど解消されているか、大きな期待を込めて試してみた。
35mm F0.95(Xマウント)
ポートレートではAPS-Cマウントとは思えないほどのボケ味に加え、個性的で強烈なフレアを演出した。
65mm F1.4(GFXマウント)
中判らしい立体感を出す描写性能は見事だが、開放でのボケのクセや撮影中もう一歩踏み込みたい時に「寄れない」と感じる場面が度々あり惜しみつつも手放すことになった。
ファーストインプレッション
Speedmaster 80mm F1.6を手にした時にまず感じたのは重厚感だ。手元のレンズを第二世代の軽量化されたXCDレンズに買い替えたこともあってか、金属製の外観からも伝わる量感は、筐体の中でファーストライトを待ち続けているであろうレンズ群への期待を高めた。
レンズのパッケージも、これまで同様に必要以上と感じるほど豪勢な仕様になっている。
早速ボディにマウントしてみると、とてもよい。非常によい。両手でホールドしつつ、小刻みに握り込んでみる。とにかく描写性能重視で設計されたのだろうか、明らかにフロントヘビーな重量バランスではあるが期待がさらに高まった。
フォーカスリングの適度な重みと滑らかさは、マニュアルフォーカスに慣れたユーザーには心地よいことだろう。ボディとの見た目の相性も抜群。
ねじ込み式の金属製のフードはよくあるような反対向きにつけることができない仕様なのでかさばるのが残念だが、所有欲を満たすには十分と言える。
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実写
言葉よりも先にHasselbladとの掛け合わせから生まれる描写力を、まずみていただきたい。
1枚目のスナップでもうすっかりこのレンズの描写力の虜になった。GFXでSpeedmaster 65mm F1.4を使用した時の描写を彷彿とさせつつも、開放にもかかわらずピントピークのキレも良くはっきりと確認できる。そこへ、80mmならではの奥行きが加わり実に味わい深い描写だ。
2枚目は色づく前のイチョウの大樹だが、細かい葉が幾重にも重なり合う姿を緻密に描きつつ、しっかりと奥行きも感じられる。立体的に迫る姿に威厳すら感じるだろう。
3枚目、4枚目は少し絞った上でモノトーンにすることでシルエットやディテールに重きを置いてみた。これまでのSpeedmasterではレンズを向けることのなかった被写体と構図であり、ボケ重視のポートレートやスナップ以外の用途にもしっかりと対応してくれるレンズに仕上がっていることがわかった。
さらに近接撮影が0.5mからになったことで、テーブルフォトにも柔軟に対応してくれる。